IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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緊張さえしなければ実力者ですから


真耶の実力

 実際に真耶と対峙して、鈴は自分たちとは次元が違うという事を肌で感じていた。

 

「(この感覚……手加減してくれていたとはいえ、一夏さんと対峙した時と似ている……もちろん、感じるプレッシャーとかは全然弱いけど)」

 

 

 一夏と比べれば大したこと無いとはいえ、それでも他の候補生などと比べれは物凄いプレッシャーを放っている真耶に、鈴は今までの考えを捨て本気で立ち向かう事にした。

 

「セシリア! あんたも感じ取ってる?」

 

「えぇ……普段の山田先生からは考えられない程のプレッシャーですわ……こんなの、受けた事ありません」

 

「まぁ、普通ならこんなプレッシャーを浴びる事なんてないもんね……」

 

「あら? その口振りですと、鈴さんはもっと強いプレッシャーを浴びたことがあるように聞こえるのですが」

 

「あるわよ? 昔一夏さんを怒らせちゃってね……あの時は死を覚悟したわよ」

 

 

 思い出したくない過去を思い出して、鈴の顔はかなり渋いものになっている。

 

「とにかく、あたしが前でアンタが後ろ。しっかりと援護してよね」

 

「分かってますわ。鈴さんこそ、ヘマして射撃ルートを塞がないでくださいまし」

 

「分かってるっての」

 

 

 開始の合図とともに、鈴は真耶との距離を詰めようと突っ込むが、突っ込んだ先に真耶の姿は無かった。

 

「考えが顔に出てますよ、凰さん」

 

「上っ!?」

 

「させませんわ!」

 

 

 上空から鈴を狙い撃ちしようとしてた真耶にレーザーを放つが、一瞬前までいた位置から移動して、更にはそのコースに鈴を蹴り上げて同士討ちにする。

 

「あの先生、こんな動きが出来るのに何で候補生止まりだったのよ!?」

 

「織斑先生がいたからではありませんか? あの人がいる限り、代表の座は空かなかったわけですし」

 

「でも、一夏さんが引退するのと同時に引退でしょ? もう少し我慢してれば代表になれていたかもしれないじゃないの」

 

「お喋りなんて余裕ですね? そんなことしてると、三分もかからずに終わっちゃいますよ?」

 

「「っ!?」」

 

 

 十分距離を取っていたはずなのに、気が付いたらもう目の前に真耶が迫って来ていて、鈴とセシリアは慌てて臨戦態勢を取り直した。

 

「ちなみに、私が何故候補生止まりだったかというと、本番に非常に弱かったんですよね……他国との候補生との模擬戦とかでは、一回も勝った事なかったですし」

 

「今は本番じゃないっていうの?」

 

「これは授業ですから。一夏さんの目的は、貴女たち候補生に、自分の実力を過信しないよう釘を刺す事と、更なる努力をするようにと教える事ですから」

 

 

 そういいながら、真耶はセシリアの機体に体当たりをして、そのまま鈴と一緒にアリーナに落とす。もちろん二人は抵抗したが、落ちている最中にマシンガンで撃たれては回避しようがないし、二人とも逆方向に逃げようとして、互いに互いの邪魔をして結局三分かからず二人のSEはゼロになってしまった。

 

「そこまで!」

 

 

 二人が戦闘不能になったのを瞬時に確認した一夏が声を出し、真耶に攻撃を止めさせる。

 

「あ、あはは……これが今のあたしの実力か……」

 

「IS学園に来てから、まともに勝てたためしがありませんわね……」

 

「お二人はまだ連携訓練などを積んでいませんから、今回はそのお陰で私が勝っただけですよ。一対一なら分からないでしょうし」

 

 

 これは慰めでも謙遜でもなく、真耶の偽らざる本音である。一夏も同じように考えているので、真耶としてはこれからの二人の成長を期待しているという事を教えたかったのだ。

 

「というか、この人より強かった一夏さんの後釜として期待されてる簪って、どれだけ強いのよ……」

 

「ちょっと待ってくださいまし! 簪さんが自分より強いと仰っているお方が、ロシアの代表だったはずですわよね……」

 

「次のモンド・グロッソ、いったいどれだけの化け物が参加するのよ……」

 

「何時までくたばっているんだ! さっさと起き上がりSEの回復をして授業に復帰しろ」

 

「「は、はい!」」

 

 

 一夏に注意され、セシリアと鈴はすぐに起き上がりSEを回復させるためにピットに引っ込む。その二人を見送った真耶は、すかさず一夏の側に移動して今の闘いの感想を聞く。

 

「一夏さんから見て、オルコットさんと凰さんは如何でしたか?」

 

「凰はまだまだ粗削りな部分が目立ったな。オルコットは兎にも角にも偏向射撃が出来るようにならないと話にならない。視線が正直すぎるからな」

 

「相手の視線から攻撃箇所を見抜ける人なんて、そうそういないと思いますが」

 

「その『そうそういない連中』が集まるのがモンド・グロッソだからな。今のままでは候補生で一生を終える事になるだろうな」

 

「厳しいですね……」

 

 

 容赦のない一夏の評価に、真耶は二人がこのままで終わらないことを願いながら、他の生徒にグループを作るよう指示するのだった。




しっかりと観察する一夏さん……

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