IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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倉持技研? 何それ美味しいの?


大天災登場

 本人たちの意思とは関係なく組まれた決闘に、千冬も箒も納得いっていなかった。

 

「何で私たちがアイツの相手をしてやらなければいけないんだ」

 

「しかも相手は専用機を持ってるんだろ? 私たちに勝ち目などないだろうが」

 

「確かに、相手はあのセッシーだもんね~」

 

「何でそんな流れになったの?」

 

 

 放課後に一夏から課題を出された二人は、食堂で簪と本音に教わりながら――本音はいるだけだが――課題を進めていた。

 

「えっとね~、おりむーとシノノンが推薦されたのに、セッシーが推薦されなかったことに怒って、その後は何か流れで決闘が決まったんだよ~」

 

「相手が満足するならと、一夏兄が決闘を組んだんだ」

 

「織斑先生が? あの人ならそういう事は避けると思ったんだけど……」

 

「一夏さんの事だから、何か考えがあるんだろうが……」

 

 

 一夏の考えが読めない二人は、腕を組みながら首を傾げた。会話を聞いていないものには、課題が分からなくて首を傾げていたように見えただろう。

 

「よ、ようやく見つけました……」

 

「あっ、山ちゃんだ~」

 

「や、山ちゃん? 布仏さん、その呼び名はいったい……まぁいいです。お二人とも、課題がそんなに難しかったんですか?」

 

「まぁ、それもありますが、今悩んでいたのは一夏兄の考えについてです」

 

「その織斑先生がお呼びです。至急第一アリーナに来るように、と」

 

「第一アリーナ? 何故そんなところに」

 

 

 ますます一夏の考えが分からなくなった二人は、互いに顔を見合わせて両手を広げて肩をすくめる。

 

「詳しい事は分かりませんが、決闘に関係する事だと思いますよ」

 

「それって私たちも見に行って良いんですか~?」

 

「えっ……どうなんでしょう……」

 

「別に問題ないだろ。山田先生、わざわざありがとうございました。行くぞ、箒」

 

 

 目に見えぬ速さで課題を鞄の中に突っ込み、音もたてずに立ち上がる千冬。その動作に箒以外の三人が驚きの表情を浮かべたが、千冬は取り合わずにアリーナへと向かう。もちろん、廊下を走れば後で一夏に怒られるので、早歩きの範疇で急いだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪と本音を待ってアリーナに入った千冬と箒は、アリーナの中心で腕組みをしている一夏を見つけ駆け足で近づいた。

 

「何だ、更識妹と布仏妹も来たのか」

 

「駄目でしたか?」

 

「いや、別に構わない」

 

 

 「妹」という単語に簪がムッとしたのを見て、一夏は苦笑いを浮かべたが、何も言わずに話を進める。

 

「今回の件だが、どうもあの馬鹿ウサギがしゃしゃり出てきたようでな。入学祝だとか言ってたが、恐らくどこかで決闘の事を聞いていたんだろ」

 

「それって――」

 

 

 箒が物凄い勢いで辺りを見渡し始めたのを見て、千冬も嫌な予感がし始めていた。一夏のセリフで、あの人が関係している事は分かったが、彼の口ぶりから今側にいるような気がしたのだ。

 

「やっほー! ちーちゃん! 箒ちゃん! この揉みごたえ、堪りませんな~」

 

「「ひゃぁ!?」」

 

「……束、不純同性交友は認められないな」

 

「じゃあいっくん! 今すぐ束さんと子造りを……へばぁ!?」

 

 

 束と初対面の簪と本音は、一連の流れを見て口をポカンと開けて固まっていた。その二人を見て、一夏がため息交じりに紹介する。

 

「この馬鹿ウサギが、世界に悪名を轟かせている『大天災』篠ノ之束だ」

 

「いっくん、こいつら誰?」

 

「千冬と箒の友人、更識簪と布仏本音だ」

 

「ふーん、まぁいいや。それよりちーちゃんに箒ちゃん。この天才束さんが二人にプレゼントを持ってきてあげたよ~。コンテナ、カモン!」

 

 

 束が指をパチンと鳴らすと、空から二つのコンテナが降ってきた――アリーナの天井をぶち破って。

 

「後でお前が修理しろよ」

 

「えー! 何で束さんがそんなことしなきゃいけないのさ~」

 

「お前が壊したからだ」

 

「……わ、分かったから、その顔止めていっくん……」

 

 

 四人には見えなかったので、どんな表情をしていたのか気になったが、出来る事なら見たくないと四人はそれ以上気にしないことにした。

 

「じゃあ、気を取り直して」

 

「少しは反省しろ」

 

「分かってるって。後でちゃんと直すよ~」

 

 

 さすがに一夏相手では分が悪いと判断したのか、束も一応反省したポーズを見せる。

 

「こっちの白いコンテナがちーちゃんの、赤いコンテナが箒ちゃんのだからね~」

 

「いったい何だと言うのですか」

 

「まぁまぁ、ちーちゃんや箒ちゃんには必要なものだから」

 

「お前、また面倒事を俺に押し付ける気じゃないだろうな?」

 

「大丈夫だって。誰も文句言えないから。というか言わせないから」

 

「……そういって全世界のミサイルをハッキングして大事にしたのは何処の誰だ?」

 

「あはは……いっくん、まだ怒ってるの~?」

 

「あたりまえだ!」

 

 

 天下の大天災がこめかみをぐりぐりされている姿を見た簪と本音は、これは現実なのだろうかと自分の目を疑ったが、見慣れている千冬と箒は、気にした様子もなくコンテナの中に入ろうとしていたのだった。




変態全開で束が登場……一夏の苦労は続く

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