IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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一夏の天敵登場?


転校生は問題児?

 転入生の面談を任された一夏と真耶は、休日だというのにスーツ姿で学園に来ていた。

 

「これって振替の休みってもらえるんですか?」

 

「たぶんないだろうな……休日手当でもつけてもらわないと割に合わんが、どうやら二人ともウチのクラスに組み込まれるようだから仕方ないか」

 

 

 既に諦めの境地に至っている一夏は、不満そうな表情を浮かべている真耶にそういって気持ちを切り替えろと命じる。直接言われてはいないが、一夏と付き合いがそれなりに長い真耶もその事を正確に受け取り、嫌々ながらも気持ちを切り替えた。

 

「まずはラウラ・ボーデヴィッヒからか……」

 

「一夏さんが指導したドイツ軍の隊長なんですよね? この歳で隊長だなんて、きっと凄い人なんでしょうね」

 

「まぁ、ある意味最強かもしれないな……」

 

「最強?」

 

 

 一夏が何を以て最強と言ったのか気になった真耶ではあったが、一夏が説明するつもりがないことは分かっているので、とりあえず会ってから考えてみようと思ったのだった。

 

「一夏教官!」

 

「ボーデヴィッヒ……俺はもうお前の教官ではない」

 

「いえ、貴方は何時まで経っても私たちの教官であり、私たちの救いの神なのです」

 

「……また何を入れ知恵されたんだ、お前は」

 

 

 出会って早々頭を抑えた一夏を見て、真耶はこの子の何処が最強なのかがますます気になってしまった。

 

「一夏さん、この子が?」

 

「あぁ……一人目の転入生、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「教官、こちらの女性は?」

 

「始めまして。IS学園教師の山田真耶です。ボーデヴィッヒが編入するクラスの副担任を務めますので、よろしくお願いしますね」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒであります!」

 

 

 踵を鳴らして直立不動で敬礼をするラウラに、真耶は圧倒されてしまった。

 

「ボーデヴィッヒ……ここは軍ではない。敬礼は不要だ」

 

「失礼しました。ですが、上官には敬意を以て接するのが基本ですので」

 

「はぁ……もういい……」

 

「では、私はこれで」

 

「は、はい……お疲れさまでした」

 

 

 一夏が面談終了を言い渡すと、ラウラは綺麗な一礼をしてから教室から去っていった。たった数分で疲れ果てたような雰囲気を醸し出す一夏に、真耶は気になっている事を尋ねる。

 

「あの子が最強と言ったのは、純粋故ですか?」

 

「あぁ……どうも相性が悪い」

 

「なるほど……」

 

 

 薄汚い世界でなら一夏に敵う相手などいないだろうが、あそこまで純粋な心の持ち主だと逆にやり難いのかと、真耶は思わず納得してしまった。

 

「次、シャルロット・デュノア」

 

「はい、失礼します」

 

 

 気持ちを切り替えて次の転入生を呼んだ一夏だったが、またラウラとは違う意味で面倒な生徒になりそうだと直感していた。

 

「それで、何故このような時期に転入を希望したのですか?」

 

「ボクのIS適性値が高い事を知った父が、日本で勉強すればもっと強くなれると教えてくれたんです。それでこのIS学園に転校を決めました」

 

「ボク……?」

 

 

 転校理由ではなく、シャルロットが使った一人称が気になった真耶が思わず呟くと、シャルロットは不思議そうに首を傾げた。

 

「何処かおかしかったでしょうか? 父が言うには、日本では当たり前な一人称だと聞いているのですが」

 

「えぇ……男の子が使う分にはおかしくないのですが、シャルロットさんは女の子ですよね?」

 

「デュノア」

 

「はい?」

 

「こちらで調べた限り、デュノア家に『シャルロット』という名の娘は存在しなかったはずだ」

 

「そうれはそうですよ。ボクは妾の子で、最近デュノア家に迎え入れられたんですから」

 

「その割には、お父様との関係は良好なように思えますが」

 

「父は娘が欲しかったらしく、ボクの事はずっと前から認知すると言ってくれていたんです。でも正妻の人が頑なに拒否していたんですが、先日ご不幸があって……」

 

 

 重苦しい空気になりかけたので、一夏が強引に話題を変えることにした。

 

「お前の名前が無かったことには納得がいった。だが、何故その一人称なのだ」

 

「普通なのではないのですか? おかしいな……父が言うには、一クラスに一人以上は絶対にいると聞いていたんですが……」

 

 

 本気で不思議そうに首を傾げるシャルロットを見て、真耶は一つの可能性に思い至り、小声で一夏に話しかける。

 

「(ひょっとしてですけど、デュノアさんのお父様は所謂『ボクっ娘萌え』の方なのでしょうか?)」

 

「(なんだそれは?)」

 

「(ギャルゲーなどの世界では、割といるらしいですよ)」

 

「(……お前、どこでそんな知識を得たんだ? 男友達などいないだろうが)」

 

「(ね、ネットでそういう人がいるというのを見かけただけです)」

 

「あの?」

 

「いや、何でもない。まぁお前が気にしないならそのままでも構わないが、日本でもあまりいないからな、女でその一人称を使う人間は」

 

 

 一応間違えだけ訂正して、後は個人の判断に任せる事に決めた一夏は、何やら言い訳を続けている真耶を残し、教室から出ていったのだった。




ピュア過ぎて相性が悪いんでしょう……

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