IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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自惚れすぎだろ……


クラス代表

 教室に向かう途中、千冬は先ほどの会話で引っ掛かりを覚えたことを本音に聞いた。

 

「なぁ布仏――」

 

「本音で良いよ~」

 

「じゃあ本音。お前さっき一夏兄の事を『寮長代理』って言ったよな?」

 

「うん、言ったよ~」

 

「じゃあ、今この寮には寮長がいないのか?」

 

 

 千冬の質問に、箒も頷いているところを見ると、やはり二人は学園内の事には疎い事が分かる。逆に本音と簪は、二人の態度を見て驚いた。

 

「二人とも知らなかったんだ」

 

「何をだ?」

 

「今の寮長は山田先生なんだよ。だけど、あまりにも威厳が無くて、抑止力にならないからって、織斑先生が代理を務める事になったんだよ。だから、早朝とか夜遅くとかだと、注意するのは寮長である山田先生で、それ以外の時間は織斑先生が注意して来るんだよ」

 

「まややは怒っても怖くないからね~」

 

 

 簪の説明に本音が補足すると、千冬も箒も納得したという表情で頷く。

 

「確かにあの先生じゃ威厳に欠けるな……」

 

「注意されても反省する、という感じにはならないな……」

 

「でしょ~?」

 

「……ところで、何で本音と簪はそんなことを知ってるんだ? 同じ新入生のはずだろ?」

 

「おね~ちゃんに聞いたんだよ~。楯無様は生徒会長だし、おね~ちゃんは生徒会メンバーだから、そういった事情にも詳しいんだよ~」

 

「そういう事か」

 

 

 あっさりとネタバラシをした本音とは対照的に、簪は少し複雑な表情を浮かべている。千冬と箒は、簪は自分と似たような事を思っているのだろうと、勝手に納得して頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏の補習のお陰で、何とか授業について行けた二人は、午後も何とか頑張ろうと気合いを入れていた。だが今日の午後は授業ではなく、いろいろな事を決める時間だったのだ。

 

「――というわけで、クラス代表を決めたいと思います」

 

「クラス代表?」

 

「山田先生、それって何ですか?」

 

 

 千冬と箒が首を傾げながら問い掛ける。どうやら他のクラスメイトの中にも、それが何なのか理解していない人間が見受けられる。その中の一人は、もちろん本音だ。

 

「クラス代表とは、読んで字の如くクラスの代表だ。クラス間の集まりに参加したり、対抗戦の代表として戦ったりしてもらう。殆ど名誉職なので、成績などには反映されない」

 

 

 真耶がどう説明したものかと悩んでいたら、一夏が横から説明を始めた。その説明でクラスの全員が納得したようで、一夏は視線を真耶に向けて先に進むよう促した。

 

「織斑先生の説明の通りです。美味しい思いはありませんが、やりたい人はいますか? もしくは、やってもらいたい人はいませんか? 自薦他薦、どちらでも構いません」

 

 

 真耶がクラスを見渡すが、どうやら立候補者はいないようだった。

 

「何だ、誰もいないのか? 別に実力云々は構わん。どうせお前らにそれほど実力差があるわけではないからな」

 

 

 一夏の言葉に、教室の一番後ろからムッとした雰囲気が漂ってきたが、一夏は一切相手にしない。

 

「人気投票でも構わん。やらせたい奴はいないか?」

 

「えっと、じゃあ織斑さんが良いと思います」

 

「私は篠ノ之さん」

 

「確かに、IS界の重鎮の身内なら、それだけで注目されそうだしね」

 

 

 注目されることには慣れている二人は、特に反論はしなかった。これで「きっと強いはず」とか言われたら立ち上がって反論しただろうが、先に一夏が実力云々は気にしないと言っていたので、二人の気分は多少軽くなっていたのだ。

 

「織斑と篠ノ之だけか? 他に推薦したいヤツはいないのか?」

 

 

 一夏がクラスを見渡して、それ以外の候補者が上がらないのを確認して真耶に視線を向ける。

 

「では、織斑さんと篠ノ之さんのどちらをクラス代表にするか――」

 

「納得致しませんわ!」

 

「ひゃうっ!? お、オルコットさん……どうかしましたか?」

 

 

 真耶が先に進めようしたが、彼女のセリフに割り込みをかける生徒がいた。彼女は立ち上がり憤慨している様子だと、クラスメイトの全員が理解した。

 

「何故代表候補生の私ではなく、IS素人のそこのお二人なのですか!」

 

「オルコット。山田先生は『自薦他薦は問わない』と言ったはずだ。そんなに納得出来ないなら、何故自分で立候補しなかった」

 

「そ、それは……」

 

「立候補などせずとも、自分が推薦されると思っていたのか? 随分自惚れてるな、お前は」

 

「で、ですが! 実力を考えればこの私が――」

 

「先ほど『実力は問わない』と言ったはずだが? ただの名誉職だ、お前がやりたいならそれで構わない。織斑、篠ノ之、お前たちは代表を務めたいか?」

 

「「いえ、全く」」

 

「だそうだ。クラス代表はセシリア・オルコットで決定だな。異論があるものはいるか?」

 

 

 一夏が問うと、誰も何も言わなかった。

 

「な、納得出来ませんわ! こうなったら、実力で証明してみせますわ!」

 

「だから実力は関係ないと言っただろうが……まぁいい。織斑、篠ノ之、そういうわけだから少し付き合ってやれ」

 

 

 こうして、千冬と箒は、セシリア・オルコットとIS勝負しなければならなくなったのだった。




喧嘩は売らなかったけど、決闘決定……

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