IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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気をつけないと一夏に怒られる……


注意事項

 教室で談笑していた千冬は、何かを感じ取ったように廊下に視線を向けた。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、不機嫌な一夏兄が近づいてくるような気がしてな……」

 

「不機嫌? 一夏さんが機嫌を損ねるなど、そんなことあるのか?」

 

「束さんが遊びに来たんじゃなければ、しつこいマスコミか偉そうにふんぞり返っている議員の相手をしなければいけなくなった時くらいだな」

 

「そういえば今日、政治家の人が沢山来るって言ってたよ~」

 

 

 千冬と箒の会話に割り込んできた本音からの情報で、一夏の機嫌が悪い理由が分かった千冬は、大人しく自分の席に戻る。八つ当たりなどする人ではないと分かっているが、必要以上に一夏を刺激する事を避けようと思っての行動だ。そんな千冬の行動につられるように、箒と本音も自分の席に戻った。

 チャイムと同時に教室に入ってきた一夏は、全員席に着いているのを見て小さく頷いた。

 

「チャイムの前から席に座っているとは感心だな」

 

 

 不機嫌なのを生徒に知られないように取り繕っているのだろうと千冬には感じられたが、他の生徒たちは一夏に褒められて嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「知っての通り、今日はクラス代表対抗戦だ。オルコット、必要以上に緊張するなよ」

 

「は、はいですわ!」

 

「連絡事項としては、議員が大勢きているので近づかないように。声をかけられても無視して構わない」

 

「それって問題にならないのですか?」

 

「むしろセクハラで訴えてやるつもりで構わない。こちらの情報をくれてやる義理は無いからな」

 

 

 過激な一夏の言葉に驚くクラスメイトたちを見て、千冬は苦笑いを浮かべる。箒も似たような表情を浮かべているのを見る限り、彼女にも一夏の本心は伝わっているようだった。

 

「織斑先生」

 

「なんだ、布仏妹」

 

「こちらから近づかなくても、向こうから近づいてきた場合は逃げて良いんですよね?」

 

「そもそも生徒に近づかせないようにまとめて閉じ込めておくが、中には不届き物がいるかもしれないからな。その時は全力で逃げようが、急所を蹴り上げようが好きにしろ。後始末は私がしておくから、問題になるかもなどという心配はしなくていい」

 

 

 他の教師が言っても効果はないだろうが、一夏が言えば絶大な効果がある。その一言だけで生徒の表情は明るくなり、何かあっても一夏が助けてくれると解釈した。

 

「それから織斑、篠ノ之」

 

「「はい」」

 

「お前たちは特に気をつけろよ。その専用機を狙って議員が連れてきた子飼いの技術者が襲ってくるかもしれないからな」

 

「その時は反撃してよろしいのでしょうか?」

 

「半殺しまでなら許可する」

 

「分かりました」

 

 

 物騒な会話ではあるが、千冬も箒も驚いたりはしない。自分たちが持っている専用機は、篠ノ之束が自分たちの為に一から造ったものなのだから、他の技術者が興味を示してくるのは当然であり、その技術を手に出来ればIS産業のトップに躍り出ることだって可能なのだ。そう考えれば襲ってくる方が当然であり、一夏が半殺しまで許可するのも当然なのだ。

 

「ではHRはここまでとする。くれぐれも議員たちがいる部屋に近づかないように」

 

 

 そう言い残して、一夏は教室から去っていった。一夏がいなくなったことで、教室中にあった緊張感は霧散し、全員が一斉に息を吐いた。

 

「凄かったね、織斑先生の威圧感」

 

「あれでもだいぶ抑えている方だぞ?」

 

「そうなの!? 私なんて緊張し過ぎて寝そうになっちゃったのに~」

 

「何でそうなるんだ?」

 

 

 どことなく抜けている本音の感想に、箒は本気で不思議そうな顔を見せたが、本音は答えなかった。

 

「織斑先生がいてくださるなら、私は対抗戦に集中できるというわけですわね」

 

「他国の候補生に手を出す程愚かでは無いと思うが、一夏兄が対処してくれるならセシリアは試合に集中すればいい」

 

「セッシーが勝ってくれれば、私たちはデザート食べ放題だもんね~。応援するよ~」

 

「デザートの為に応援されるのは複雑な気分ですが、期待されている以上頑張りますわよ」

 

「気合い入れすぎて空回りしないように気を付けろよ」

 

「分かってますわ」

 

 

 そう言ってセシリアは一人アリーナに向かう。千冬たちと別行動になったのは、参加者は先に注意説明があるからであり、廊下には二組の代表の鈴も見えた。

 

「そういえばおりむーとシノノンは、セッシーとリンリンのどっちを応援するの~?」

 

「どっちも応援する」

 

「クラスメイトとして考えればセシリアを応援するべきなのだろうが、鈴もセシリアも友達だからな。どっちも応援しても問題ないだろ。もちろん、簪の事も応援するぞ」

 

「だよね~。友達を応援するのは当たり前だよね~」

 

 

 自分の気持ちを代弁してもらえたような気分になった本音は、いつも以上に楽しそうに笑ってみせた。そんな笑顔を見て安心した千冬たちではあったが、一夏がまだ何かを懸念しているのではないかと、一抹の不安を懐いたのだった。




面倒事で頭が痛いんでしょう……

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