悪友たちと散々遊びつくし、連休最終日になりさすがに学園に戻らなくてはいけなくなり、千冬たちは弾と数馬と別れ学園に戻ってきた。織斑家のライフラインについては、一夏が各所に連絡しておいてくれるので、千冬が心配する事ではなかった。
「戻ったらまた勉強か……」
「楽しい時間って、あっという間だったな……」
「まぁ、そういいたくなる気持ちも分からなくはないけど、あんたらは一夏さんに出された課題がまだ終わってないんだから、少しは必死になりなさいよ」
織斑家ではまったく手につかなかった課題を片付けなければ、一夏に何を言われるか分からないと注意する鈴ではあるが、自分も二人に課題をさせなかった罪で同罪になるのではないかと内心ビクビクしているのだ。もちろん、一夏がそんなことで鈴まで怒ったりしないのだが、一夏を怒らせてはいけないと本能で理解しているため、二人には絶対に課題を終わらせてもらいたいのだ。
「部屋に戻ったら手伝ってあげるから、絶対に終わらせなさいよ!」
「分かってる。ところで、明後日にはクラス代表対抗戦だが、鈴は大丈夫なのか? クラスの期待を背負ってるんだろ?」
「別に負けたって問題ないでしょ。デザートパスなんて、そんなに使う機会ないでしょうし」
「本音に言わせると、ウチのクラスは本気で欲しがっているようなんだが、二組は違うのか」
「少なくともそこまで必死になって応援されてる、って感じはないわよ」
実は鈴が知らないだけで、二組もデザートパスが欲しいと思っているのだが、その事をこの三人が知ってる訳もなく、意外と景品に惹かれていないのかという考えで纏まり、その事に疑問を懐くことは無かった。
「クラス代表対抗戦が終われば、今度は学年トーナメントがあるとか聞いたが、そっちは参加自由なんだろ?」
「そうみたいだな。三年は卒業や就職がかかっているから本気らしいが、一年はお遊びみたいなものだと聞いた」
「そうなの? ところで、それ誰から聞いたの?」
「本音だが」
「あー、あの子ね……」
どことなく信用して良いのかと思った鈴ではあったが、嘘をついても本音に何の得も無いと思い直しその疑問を頭の中から追いやった。
「それが終われば臨海学校だって言ってたし、それまでには一夏兄に迷惑をかけない程度の知識は手に入れなければな」
「試験の結果が芳しくないといけないんじゃなかったっけ? そうなるとあたしたちは留守番になるのかしら?」
「現地で補習でもするんじゃないか? さすがに私たちだけを寮においていくことはしないだろ」
「そうだろうな。寮長である山田先生も臨海学校に行くわけだし、私たちだけを残していっても意味はないしな」
「そもそも成績が芳しくないことを前提に話しているのが情けなくないか?」
箒の尤もなツッコミに、千冬も鈴も頷いてみせたが、このままの生活を続ければ、学力面での不安が付き纏うという事を理解しているので、あまり力強く頷くことは出来なかった。
「ISの知識もさることながら、私たちは普通の勉強もついていくのがやっとだからな……」
「弾や数馬の成績を笑える立場ではないからな……」
「試験前になったら対策を考えましょ。あたしもそこまで成績良いわけじゃないし……」
三人寄っても大した知恵は出ないなと、自分たちの学力の無さに凹みながら、とりあえず鈴と別れて部屋に入る二人。一夏から出されていた課題に向き合いはしたが、遊び疲れていたのと分からないのとで強烈な眠気に襲われた。
「箒、私は眠い……」
「私もだ。だが、ここで寝ると明日一夏さんに怒られる……」
「さすがに真っ白じゃマズいよな……」
「ちゃんと課題をするという事を条件に外泊を許可してもらったんだから、怒られるだけで済むとは思えん……」
眠い目を必死にこすりながら課題を進めていると、約束通り鈴が課題を手伝いに来てくれた。
「ISの事なら何とかなるわよ」
そう意気込んで二人の課題を覗き込んだ鈴は、何故この程度が分からないのかという目を二人に向ける。
「私たちは候補生じゃないからな。ISの知識など殆ど持ち合わせていないんだ」
「威張っていう事じゃないと思うけど……まぁ、それだからこんな課題を出されてるんでしょうしね」
二人が落ちこぼれないようにと一夏が考えて課題を出しているのだと頭の中を切り替え、鈴は懇切丁寧に二人に説明していく。しかし、彼女の中の懇切丁寧なので、所々雑になっているように二人には感じられた。
「(何となく分かりにくい説明だな)」
「(文句を言える立場じゃないから黙っているが、鈴の説明は独特過ぎて分かりにくい)」
「何こそこそ話してるのよ?」
「いや、鈴のお陰で終わりそうだと」
「当然でしょ。ほら、さっさと残りも終わらせるわよ」
煽てて誤魔化した二人は、揃って苦笑いを浮かべながら残りの課題を片付けるべく気合いを入れるのだった。
原作でも酷い説明の仕方でしたし……