IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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入学前に考えろよ


今更の考え

 さすがに七時になり、弾と数馬を叩き起こした三人は、誰が朝食を作るかを話し合う。

 

「昨日の晩御飯はあたしが作ったから、千冬か箒のどちらかが作るべきだと思う」

 

「そうだな。では今朝は私が作るとしよう」

 

「それじゃあ、千冬は昼食担当ね。買い出しはまた弾と数馬に任せればいいし」

 

「おいおい、俺たちは休日の父親か? 家から追い出す目的で買い出しを押し付けやがって」

 

「掃除とかしなければいけないんだ。ゴロゴロとゲームされていては邪魔だ」

 

「仕方ねぇか……現在の家主がこういうんだから、俺たちが何を言っても無駄だろ」

 

 

 諦めが早い数馬につられて、弾も諦めたようだった。この後の予定が決まったので、箒はさっそくキッチンで調理を開始する。

 

「洗濯するから、お前たちもさっさと着替えろ」

 

「一応言っておくけど、目の前で着替え始めたら股間蹴り上げるからね」

 

「相変わらず恐ろしい事を平然と言ってのける奴だな……」

 

 

 蹴り上げる仕草を見せた鈴に戦慄しながら、弾と数馬は着替える為に脱衣所に向かった。

 

「洗濯はあたしがするから、その間に千冬と箒は部屋の掃除ね」

 

「昨日したからそれほど汚れてはいないが、一応しておくか」

 

「一夏さんがいた時は、毎日していたんだからそれくらいやりなさいよ」

 

「だから、何でお前が仕切ってるんだ?」

 

「昔からでしょ? あたしが決めて、千冬と箒が文句を言いながらもそれに従って、弾と数馬は大人しくついてくる」

 

「まぁ、お前が一番出しゃばりだったしな」

 

「せめてリーダーシップがあるって言いなさいよ」

 

 

 千冬の身もふたもない言い方に、さすがに鈴は抗議したが、その表情は笑っている。容赦のない言い合いが出来る相手が少ないので、こうしてはっきりと言ってくれる相手がいる事が嬉しいのだろう。

 

「着替えてきたぞ」

 

「それじゃああたしは洗濯機を回してくるわね。当然、あんたたちのとあたしたちのやつは別々で洗うから」

 

「ますます父親のような扱いだな……というか、お前たちが脱いだ服を見たが、もう少しおしゃれとかしたらどうなんだ?」

 

「変態! 何見てるのよ!」

 

「見たくて見たわけじゃねぇよ! というか、脱ぎ散らかしておいてよくそんなことが言えるな!」

 

 

 弾と鈴が言い争っている横で、数馬が興味なさそうに二人を眺めている。現実の女には興味がないと豪語するだけあって、女子が脱ぎ散らかした服にも興味がなかったのだろう。

 

「だいたいお前のブラ、蘭のやつより小さいんじゃないか?」

 

「サイテー! そんなところまでじっくり見てたの!? これだからケダモノは!」

 

「見るか! ぱっと見だこの野郎!」

 

「……あんた、妹のブラを見たことがあるわけ?」

 

「あっ? 洗濯物として干してあるだろうが」

 

「ふーん……そう言う事にしておいてあげるわ」

 

「お前、なんか勘違いしてるだろ! 興味ねぇからな! 妹のブラなんて!」

 

「そう言えば一夏兄も、特に気にせずにいられるのだろうか?」

 

 

 昔は気にせずに一夏が洗っていたが、今も気にせずに洗ってくれるのだろうかと気になった千冬が、自分の胸に視線を落とす。そんな千冬の言葉に、鈴と弾は言葉を失った。

 

「ん?」

 

「あんた、まだ一夏さんに洗ってもらいたいとか思ってるの?」

 

「当然だろ? 一夏兄は私より手際が良く綺麗に洗って畳んでくれるんだ。一夏兄が家事をしてくれるなら、これ以上の幸せはないだろうが」

 

「まぁ知っていたが、相変わらずのブラコンなんだな……」

 

「妹が兄に甘えるのがそんなにいけない事か?」

 

「少なくとも、ウチの妹はそんなんじゃねぇよ……」

 

「まぁ、一夏さんとあんたが同列なわけないし、蘭の態度も当然だと思うけどね」

 

 

 鈴の手厳しい言葉に、弾は言い返そうとしたが言葉が見つからなかった。確かに自分と一夏とでは全然違うし、尊敬出来るかどうかと自分の成績や言動行動を思い返して絶句したのだった。

 

「馬鹿兄貴の事は置いておくにしても、あんたのその考え方はちょっとおかしいと思うわよ? いくら一夏さんが魅力的だからって、血のつながったあんたがそう言う感情を懐くのは、世間的に見て危ないわ」

 

「世間の目なんて気にしない。私と一夏兄はたった一人の兄妹であり家族なんだ。普通の関係よりちょっと依存が強くても仕方ないだろ」

 

「まぁ、一夏さんも特にあんたの考え方を矯正しようとはしなかったし、あたしがとやかく言ったところで変わるわけじゃないってのは分かってるんだけどさ……そろそろ自立しないと何時まで経っても一夏さんが自分の事に時間を使えないわよ?」

 

「それは困るな……一夏兄には、自分の事に集中してもらいたいし……しかし一夏兄と離れ離れになるのはもっと困る……どうすればいいんだ!」

 

「知らないわよ……さーて。あたしは洗濯してこよっと」

 

 

 この場から逃げた鈴を恨めしそうに睨む千冬。だが睨んでも意味がないと理解して、盛大にため息を吐いてから自分一人で考え込むのだった。




一夏はここでも主夫だからなぁ……

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