IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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使い方ちょっと違うかもですが、お気になさらずに


類は友を呼ぶ

 一夏に出された課題に苦戦しながらも、睡眠時間はしっかりと取ったので、千冬も箒も寝過ごすという事は無く、実に平均的な時間に食堂に足を運んだ。

 

「一夏さんがギリギリ終わる量にしてくれて助かったな」

 

「一夏兄はそういうとこもちゃんと計算して課題とか試練とかを出すからな……」

 

「試練か……昔の剣道場での一件は苦労したぞ……」

 

「二人がかりでも、一歩も動かない一夏兄から一本も取れないかと思ったもんな……」

 

 

 昔の事を思い出しながら、千冬と箒はトレイに朝食を乗せて席を探す。

 

「あそこでいいか?」

 

「別に何処でもいいだろ。好き好んで私たちに近づいてくる輩もいないだろうし」

 

 

 昨日一夏に言われた通り、自分たちの扱いは難しいと自覚しているため、下手に交友関係を広げようとは思っていない二人。端の方の空いている席に腰を下ろし、ゆっくりと食事を始める。

 

「あー、ここ座ってもいいかな~?」

 

「別に構わないが」

 

 

 誰も隣にやってこないだろうと思っていたが、どうやら物好きがいたようだと、千冬は苦笑いを浮かべる。朝からこんな扱いに困る二人組に近づくなど、どんな物好きかと顔を見ると、相手は満面の笑みを浮かべた少女と、何処か眠そうな眼鏡をかけた少女の二人組だった。

 

「おりむーとシノノンだよね~?」

 

「お、おりむー?」

 

「シノノン?」

 

 

 聞きなれない呼び名で呼ばれ、千冬と箒は互いに顔を見合わせる。だが、相手の少女は気にした様子もなく話を進める。

 

「私、同じクラスの布仏本音、よろしくね~」

 

「ちょっと、本音。二人が困ってるよ」

 

「大丈夫だって、かんちゃん。すぐに慣れると思うから」

 

「呼び名を変えるって発想は無いんだ……」

 

 

 自己紹介を終えた少女――布仏本音の連れである少女は、千冬と箒の困惑を理解していたが、当の本音は理解していないどころか、二人がすぐに慣れると信じて疑わない様子だった。

 

「ところで、貴女は?」

 

「一年四組の更識簪です。本音とは幼馴染でルームメイト」

 

「本当は主従関係なんだけど、かんちゃんも気にしてないし、似た者同士仲良しさんなのだ~」

 

「「似た者同士?」」

 

 

 千冬も箒も、本音と簪の何処が似ているのかと首を傾げる。方や明るく社交的な本音に対して、簪は何処か内向的な印象を受ける。外見は言わずもがなだが、内面も似ているようには思えないのだ。

 

「この共通点は、おりむーやシノノンにも当てはまると思うけどね~」

 

「私たちにも? いったいどんな共通点だと言うんだ」

 

「かんちゃんのお姉ちゃんは、現ロシア代表の更識楯無様。優秀な姉と比べられてかんちゃんも困ってるんだよ」

 

「そうだったのか……」

 

「一方の私も、楯無様直属の部下にして、何でもコンスタントにやってのける優秀なおね~ちゃんと比べられて困ってるんだよ~」

 

「本音の場合は、貴女が出来なさすぎな感も否めないけどね」

 

 

 本音と簪の境遇に、千冬と箒は共感する。千冬も箒も、昔から周りの大人に上と比べられて勝手に期待され、そして勝手に失望されてきたからだ。

 

「何となくだが、お前らとは仲良くなれそうな感じがするな」

 

「私もかんちゃんも、おね~ちゃんの事嫌いなわけじゃないんだけどね~」

 

「それは私たちもだ。別に姉さんが悪いわけでも、一夏さんが悪いわけでもない……と、頭では分かってるんだがな」

 

「お前たち、何時まで食べてるつもりだ!」

 

 

 箒がしみじみと語りだそうとしたタイミングで、食堂の入口から大声が飛んできた。

 

「一夏兄!?」

 

「遅刻したものには、もれなくグラウンド二十周の罰が待っているからな」

 

「何で一夏兄がここに……?」

 

「教師なんだから、いてもおかしくないんじゃないのか?」

 

「バカ箒。ここは女子寮だぞ」

 

「あっ……」

 

 

 失念していたことを指摘されて、箒はムッとした表情から一転、驚きの表情に変わった。

 

「あれ、知らなかったの?」

 

「何がだ?」

 

「織斑先生、一年エリアの寮長代理も務めてるから、ここからすぐ側に住んでるんだよ」

 

「敷地内に専用の部屋があるって噂だよね~」

 

「そうだったのか……だからドイツから帰国しても、なかなかウチに帰ってこなかったのか」

 

「てか千冬、お前最低限の家事しか出来なかったはずだよな? 織斑家はゴミ屋敷になってたりするのか?」

 

 

 箒の質問に、千冬は少し怒りながら答える。

 

「最低限は出来るんだ! 掃除だってちゃんとしてたし、ゴミ出しだってちゃんとやってたのはお前だって知ってるだろうが! てか、この間遊びに来た時、現状を見てるだろうが!」

 

「あぁ、そうだったな。だが、一夏さんがやってたイメージが強すぎてな」

 

「……一夏兄、私より家事も優秀だからな」

 

 

 しょんぼりとしながらもしっかりと食事を済ませ、本音と簪を加えた四人で食堂から教室まで急いで移動したのだった。




さすがに女子寮に大人版一夏を住まわせるわけにはいかないので……

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