IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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ここも気を遣う関係じゃないですしね


容赦のない会話

 楯無を見送ってから、一夏は誰もいない草むらに声をかける。

 

「箒は今学園にいないぞ」

 

「そんなことは知ってるよ~。今日はいっくんに用があって来たんだから~」

 

「何処から忍び込んだのかは置いておくとして、毎回毎回あのセキュリティを潜り抜けてくるのは大したもんだ」

 

「いっくんに気取られないようにいろいろと開発してるんだよ~」

 

「その努力をどっかの国で発揮していれば、今頃お前は億万長者だっただろうに」

 

 

 ひょこと頭を出した束に、一夏は憐憫の視線を向ける。その視線を受けた束は、何処か幸せそうな表情を浮かべている。

 

「相変わらずの変態だな」

 

「こんな表情を見せるのはいっくんにだけだよ~」

 

「見たくもない……」

 

「あれ!? ここは照れるところだよ~!」

 

 

 バッサリと斬り捨てられ、束はびっくりした表情で一夏に詰め寄ったが、あっさりと退けられた。

 

「それで、何の用で忍び込んできた」

 

「いっくんが嫌ってる役人連中の情報を持ってきたんだよ~」

 

「役人の?」

 

「私がちーちゃんと箒ちゃんにISをプレゼントしたでしょ~? そのISのデータを欲しがってるらしいんだよね~。もしかしたらクラス代表をちーちゃんか箒ちゃんに代えろとか言ってくるかもよ~?」

 

「既に言って来ているが、相手にしなかったから諦めたようだ」

 

「それが諦めてないようなんだよね~。アメリカ政府も怪しい動きを見せているし、もしかしたら襲撃されるかもよ~?」

 

「それはお前だろうが。前々から製造していた無人機が完成したから、代表戦のタイミングで披露しようとか計画してるのか? それで千冬と箒にも出動させ、自分の造ったISを自慢しようとか」

 

「さすがいっくん。私の事は何でもお見通しだね~」

 

 

 あっさりと計画を認めた束に、一夏は拳を振り上げ――そのまま振り下ろさずにため息を吐いた。

 

「千冬と箒にとってもいい訓練になるかもしれないが、くれぐれも施設を壊したりするなよ」

 

「その辺りは大丈夫だって。壊してもちゃんと直すから」

 

「……壊すの前提で話を進めるな」

 

「いっくんは心配性だな~。多少壊れたからっていっくんの気配察知能力があれば、そうそう不審者なんて忍び込んでこないって」

 

「現在進行形で忍び込んでいる奴が言うな」

 

「束さんのは、忍び込みじゃなくていっくんに会いたい一心だから良いんだよ?」

 

「良くないだろうが……」

 

 

 まったく反省しようとしない束に、一夏は何度目かのため息を漏らした。

 

「いっくん、そんなにため息ばっか吐いてると幸せがなくなっちゃうよ~?」

 

「お前が余計な事をしなければ、これほどため息を吐くことも無いだろうがな」

 

「それじゃあ、束さんが責任を持っていっくんを幸せにするよ~」

 

「お前と一緒じゃ一生不幸にしかならないだろうが」

 

「そんなこと無いと思うんだけどな~? 愉快痛快な毎日を送れると思うよ~?」

 

「俺は平穏無事な毎日が良いんだ」

 

 

 同い年とは思えない程、束は子供っぽく一夏は疲れ果てている印象がある。

 

「いっくんは年の割に落ち着き過ぎだよ~。もっと若さを感じられるような生活をしないと~」

 

「お前はもう少し年相応な態度を身に着けたらどうだ? 今のままじゃ箒の方が姉のような雰囲気だぞ」

 

「箒ちゃんは剣道とか剣術をやってたから、落ちついた雰囲気を出すのが上手なだけで、すぐに激昂するあたりは子供っぽいと思うけどな~」

 

「どっちが姉でどっちが妹でも別に構わないが、とにかく! 余計な仕事を増やしてくれるなよ? ただでさえ面倒事を抱え込んでいるんだ。これ以上面倒事は御免だ」

 

「いっくん、最近ますますやつれてない? ちゃんと食べてる?」

 

「……新入生も一ヶ月経って漸く落ち着き始める頃なんだ。お前が余計な事をして騒がれたらますます忙しくなりかねん。その辺りをちゃんと考えてくれ」

 

「いっくんのお願いじゃしょうがないね。それじゃあ、送り込む無人機は一機だけにしてあげるよ~」

 

「何機送り付けるつもりだったんだ、お前は……」

 

 

 これが最大の譲歩だと言わんばかりの態度に、一夏はもう一度ため息を吐いた。これ以上は束も譲歩しないだろうということが分かるので、一夏は左右に頭を振って気合いを入れ直した。

 

「今度相応の報酬を要求するからな」

 

「束さんの全裸写真集でいいかな?」

 

「速攻で消し炭にしてやる」

 

「酷っ!? これでもちゃんと成長してるんだぞ~?」

 

「興味ない。さっさ帰れ、この不法侵入駄ウサギが」

 

「いっくんが結婚出来ない理由って、いっくんが女性に興味がないこともあるんじゃないかな~?」

 

「別に結婚する理由もないからな」

 

「いっくんの子供を産みたがってる雌は沢山いると思うけどね~」

 

 

 それだけ言い残して、束は音もなく消えていった。一夏はもう一度だけ――今日最大のため息を吐いてから部屋の中に戻ったのだった。




酷い会話と凄い会話が織り交ざる……

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