IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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まぁ妥当だな


部屋割り

 しばらくゲームで遊んでいたが、ふと弾が気になっていたことを口にした。

 

「泊まり込みで遊ぶのは良いんだが、俺と数馬は何処で寝ればいいんだ? 一応お前たちは女なわけだし、何かあって一夏さんに殺されるのだけは勘弁願いたいんだが」

 

「てか、俺や弾が襲いかかっても、こいつらなら返り討ちにするんじゃないか?」

 

「……男として情けないが、あり得そうだな」

 

 

 千冬と箒は武術の心得があるし、鈴も弾や数馬より強い。そもそも異性として見ていないので、弾と数馬が三人の寝込みを襲う可能性など考える必要はないのだ。

 

「安心しろ。お前たちはここで寝てもらうからな」

 

「ここって、ソファ?」

 

「後は来客用の布団を出せばいいだろ。箒と鈴は客間を使ってもらう」

 

「あたしは一夏さんの部屋でも良いけど」

 

「そんなこと許すわけないだろうが! それだったらお前を私の部屋に押し込んで、私が一夏兄のベッドで寝る」

 

「相変わらずのブラコンだな」

 

 

 数馬が呟いた言葉に、千冬以外の全員が頷いた。千冬本人は否定するのだが、誰がどう見てもブラコン、それも度を越したブラコンだと全員が思っているのだった。

 

「まぁ、弾と数馬がリビングで、私と鈴が客間なのは分かった。それで千冬は自分の部屋で寝るわけだな」

 

「当然だろ。万が一、一夏兄の部屋で寝たことが一夏兄にバレたら……」

 

「一夏さんの部屋ってあんまり見たこと無いんだが、そんなに見られたくないものが置かれているのか?」

 

「いや? 普通の部屋だが……何でそんなことを気にするんだ?」

 

「入ったくらいで怒るって事は、見られたくないものがあるって事じゃないのか?」

 

「あの時は束さんの計画を止めようと必死になっていたから、精神的余裕がなかったんだろ」

 

 

 その昔、一夏の部屋に入ろうとしてこっ酷く怒られた記憶が箒にはあった。一夏がピリピリしていた原因が自分の姉だったと知り、箒は今更ながらに怒られた理由に納得がいったのだった。

 

「お前たちの会話を聞いてると、篠ノ之博士って凄い人じゃないんじゃないかって思えてくるんだが」

 

「IS業界においては凄い人かもしれないが、あの人は社会不適合者だからな……他人を区別できないという欠点を抱えているから」

 

「あー、なんかそんなこと聞いたことあったな。識別できるのは箒の両親と一夏さん、後は千冬と箒だっけか?」

 

「そうだ」

 

 

 弾が確認の意味を込めて箒に尋ねると、箒も隠す事ではないので軽く答えた。

 

「そう考えると箒や千冬もIS業界では重要人物なんじゃないか? よく普通に生活してたよな」

 

「その辺りは一夏兄が何とかしてくれたんだ。そうじゃなかったら今頃私たちは『織斑千冬』でも『篠ノ之箒』でもない誰かとして生活させられていただろう」

 

「何だっけ? なんちゃらプログラムだよね」

 

「あぁ。重要人物保護プログラムだ」

 

「一夏さんの庇護下にある私たちをどうにかするのは得策ではないし、私の父も反対したからな」

 

「一夏さんに逆らおうとするやつらの末路は、第二回のモンド・グロッソ決勝で世界中に知れ渡ったしな」

 

「篠ノ之博士もお前たちを監視してるんだろ? 政府の人間が守るよりよっぽど安全じゃねぇか」

 

 

 弾と数馬の言葉が、政府の無能さを分かり易く証明していると、第三者的な立場で聞いていた鈴はそう感じた。

 

「やっぱりどこの国も役人っていうのは無能な連中が多いのね」

 

「そう言えば鈴がこんな時期に転校してきたのも、政府の人間の所為なんだってな」

 

「えぇそうよ。本当なら新学期と同時に通い始めるはずだったんだけどね」

 

「どっちにしろ俺たちとの再会はこの時期だっただろうな」

 

「そうね。別に再会したかったわけじゃないけど」

 

 

 口では憎まれ口を叩いているが、鈴の表情から冗談であることは読み取れる。その程度の事なら理解出来るほどの付き合いなので、弾も数馬も激昂したりはしなかった。

 

「そう言えば千冬と箒は、外泊するにあたって一夏さんから課題を出されてなかった?」

 

「まぁな……本来なら休みの間にしてくれるはずだった補習の範囲をまとめたプリントをたんまりと渡された」

 

「休み明けに提出しないと、今後の補習はしてくれないそうだ……」

 

「お前たちも苦労してるんだな……」

 

「そりゃ、試験のちょっと前までは興味すらなかったんだから仕方ないさ」

 

「てっきり俺たちとおんなじ高校に通うものだと思ってたから、あの時は驚いたぜ」

 

「何時までもだらだらしてられないからな。少しでも早く一夏兄にお返しする為には、IS学園に通うのが一番良かったんだ」

 

「だがまぁ、こんな大変だとは思ってなかったから、かなり後悔してる」

 

 

 千冬と箒の気持ちが篭った言葉に、弾と数馬、そして鈴も同情的な視線を二人に向ける。二人としては覚悟していたとはいえ、これほどまでに大変だったとはと、入学を決意した自分たちを恨んでいたのだった。




後悔先に立たず

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