IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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仲がいいな……


久しぶりの織斑家

 ゴールデンウィークは織斑家で生活すると一夏に報告し、その期間だけライフラインを復旧してもらうよう手続きをしてもらい、千冬たちは数日の間IS学園を離れる事になった。もちろん、外で生活していようがIS学園の生徒としての心得を忘れないように念を押されたため、騒ぎは起こさないだろうと一夏もとりあえずは信頼してくれた。

 

「ここに来るのも久しぶりだな」

 

「そうだったか? 合格祝いもここだったから、精々二,三ヵ月ぶりくらいだろ?」

 

「そんな最近じゃないだろ。もう五月だぞ」

 

 

 合格が決まったのが一月の中旬なので、三ヵ月以上は経っているが、千冬はそんな細かいことは気にしていない様子で、箒は盛大にため息を吐いた。

 

「あんたたちのやり取りは相変わらずね。とりあえず中に入りましょう」

 

「何でお前が仕切ってるのか分からないが、そうだな」

 

 

 鈴が仕切っているのが気に入らない様子だったが、千冬は家の鍵を取り出して中に入る。多少埃はたまっているが、それ以外は綺麗なリビングで二人は感心したように頷いた。

 

「もっと手の込んだ掃除が必要かと思っていたが、この程度ならすぐ終わるだろうな」

 

「そうね。それじゃあ、千冬とあたしで掃除をしておくから、箒は食材の買い出しをお願い。昼過ぎには弾と数馬も来るわけだし、それまでに終わらせちゃいましょう」

 

「だから何で人の家でお前が仕切るんだ」

 

「だって、あんたたちに任せてたら何時までも決まらないじゃない」

 

 

 数年来の付き合いなので、鈴も二人の性格は熟知している。即断即決が出来ないわけではないが、何故かこういう事を決める時だけはうだうだと考え込んでしまうので、鈴が横から割り込んで決めてきたのだ。

 

「ほら、掃除道具は?」

 

「……こっちだ」

 

 

 掃除機とはたき、そして雑巾を持ってきた二人は、リビングと廊下を掃除し始める。この家で生活していた頃は毎日していた事だが、久しぶりにやると面倒だなと、千冬は一夏に感謝しながら掃除していた。

 

「あんたがこの家で生活してたのって、本当に数年なんだよね?」

 

「そうだな……物心ついたころは篠ノ之家で生活していたし、私が中学に進学して漸く戻ってきたと一夏兄が言っていたからそうなんだろうな。一緒に生活できたのは、モンド・グロッソが始まるまでの数ヶ月だったが……」

 

「あの事件が無ければ、二人は一緒に生活してたのかもね」

 

「一夏兄が責任を感じて引退する必要はなかったと思うんだがな……」

 

「まぁ、一夏さんなりに考えて決めたことなんだろうし、あたしたちがとやかく言ってもしょうがないじゃない。ほら、さっさと掃除を終わらせるわよ」

 

「……そうだな」

 

 

 鈴に気を遣われた事くらい気づいている千冬は、必要以上に落ち込まないように気合いを入れた。最低限とはいえ家事が出来る事を鈴に知ってもらうためにも、しっかりと掃除をする必要があると思考を切り替えて掃除に集中する。

 

「なぁ鈴」

 

「なに?」

 

「買い出しなんだが、弾と数馬に買ってきてもらえば良かったんじゃないか?」

 

「あの二人じゃ何を買ってくるか分からないじゃない。その点箒ならとりあえずの目利きは出来るんだし、安心して任せられるじゃない」

 

「あの二人だってそれほどひどいわけじゃないと思うんだが……弾は蓮さんに鍛えられてるだろうし」

 

「余計なものを買ってくるかもしれないでしょ」

 

 

 鈴の言葉に一応納得した千冬は、それ以上無駄口を叩くことはせずに掃除を終わらせることにした。箒が帰ってきた頃には、リビングや廊下だけではなく、キッチンや風呂場の掃除もすっかり終わっていた。

 

「私も手伝うつもりでいたが、なかなか速かったな」

 

「だから言ってるだろ。最低限の家事は出来るって」

 

「半信半疑だったけど、これだったら確かに一夏さんに怒られることは無さそうね」

 

「……そういえば、ウチに泊まるのは構わないんだが、なにして遊ぶんだ?」

 

「弾にゲームを持ってきてもらうように言ってあるから、それを中心に考えてあるわよ」

 

「それならいいが」

 

 

 一夏があまりやらないため、この家にはゲームなどの娯楽は少ない。もちろん、千冬が買った物にとやかく言うような性格ではないので、皆無というわけではないが、長時間楽しめるものはない。

 

「後は昔のように外で遊べばいいでしょ。身体を動かす必要はあるんだしさ」

 

「そもそもお前はクラス対抗戦前だからな。グーたらして身体が鈍って負けたなんて言われたくないだろ」

 

「そんなにすぐ鈍るような鍛え方はしてないけど、油断大敵だもんね。何せセシリアだけじゃくて簪も警戒しなければいけないんだから」

 

「時間が出来たことにより、簪の専用機が完成するかもしれないからな」

 

「一夏兄がアドバイスしてるらしいし、かなり強敵だと思うぞ」

 

 

 学園の外にいても、やはり話題はISの事になってしまっていると気づいた三人は、顔を見合わせて苦笑いを浮かべたのだった。




箒を落ち着かせたらこんなに楽なのか……

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