IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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この中でも、当然一番は一夏


織斑家集合

 冬休みの間も忙しそうにしていた一夏だったが、さすがに大晦日にまで仕事はしたくなかったのか、珍しく織斑家へ帰ってきた。

 

「一夏兄、お帰り――何故そいつが? そして、そちらの女性は?」

 

 

 一夏を出迎えた千冬だったが、一夏の背後にマドカと、もう一人女性がいたことで素直に歓迎できなくなってしまった。

 

「ちゃんと顔合わせしておいた方が良いと思ってな」

 

「ですが!」

 

「千冬姉様が私の事を警戒するのは当然ですが、一夏兄様に当たるのは間違っていると思います」

 

「それは……そうだが」

 

 

 マドカに指摘され、一夏に八つ当たりしていた自分を反省し、マドカの事を正面に見据えた。

 

「だいたいの事は聞いているが、洗脳されていたんだな?」

 

「そのようです。その所為で千冬姉様にまでご迷惑をおかけしまして……まことに申し訳ございませんでした」

 

「いや、そこまで畏まられると困るんだが……それで、そっちの人は?」

 

「見て分かるとは思うが、俺たちの母親だ」

 

「織斑千秋よ、久しぶり……といっても、千冬はまだ生まれて一年足らずだったから、私の事なんて覚えてないでしょうけど」

 

「今更母親と言われましても……私の家族はずっと一夏兄一人だけでしたから」

 

「私も今更家族になれるとは思って無いけど、一夏が今日と明日くらいはって誘ってくれたのよ」

 

「マドカは来年受験だし、母様も学長としてのイロハを覚えてもらわないと困りますので、のんびりできそうなのが今日と明日くらいなので。俺もまだいろいろと問題が片付いていませんし」

 

「一夏兄、この後箒たちが来るんですが」

 

「たち? 他にも誰かくるのか?」

 

「鈴や弾たちです」

 

「あぁ、何時ものメンバーか」

 

 

 一夏にとっては見知った面子だが、マドカと千秋は首を傾げて一夏に説明を求めた。

 

「千冬の幼馴染とも言える子たちですよ。箒と鈴は知ってるんじゃないですか?」

 

「箒ちゃんは見た事あるけど、鈴って子はモニター越しにチラッと見たか見てないかくらいかしらね……そもそも一夏と千冬にしか興味が無かったわけだし」

 

「私も覚えてません。箒さんは覚えてますが、鈴さんは会ってないと思いますし」

 

「兎に角、そこまで警戒しなくても危険性は無いし、何かすればすぐに始末するから心配するな」

 

「……まぁ、一夏兄がそういうなら」

 

 

 本音ではまだ千秋やマドカの事を疑っている千冬ではあるが、一夏がそこまで言うなら、とりあえず家に上げても問題無いと思えたので、とりあえず三人を家に招き入れる。

 

「この家も変わってないわね」

 

「変える必要も無かったですし、殆ど生活してませんでしたから」

 

「一夏兄様は何処で生活していたのでしょうか?」

 

「千冬が中学に上がるまでは篠ノ之道場に居候させてもらっていて、こっちに戻ってきて半年足らずであの誘拐事件が起こったからな。その後はドイツで一年間指導して、その後IS学園で教師として雇われたから、この家でまともに生活してたのは、千冬が生まれる前くらいまでだな」

 

「そうみたいね。千冬が生まれて、私がだんだんおかしくなって、マドカが生まれてすぐに私たちはこの家を出て行ったから、その後は一夏が言ったように篠ノ之道場でお世話になってたみたいだし」

 

「そう考えると、一夏兄様は幼少期から大変な思いをしてきたのですね。そして、今になってまた家族の事で忙しい思いを……」

 

 

 マドカが申し訳なさそうに項垂れると、一夏がその頭を少し乱暴に撫でる。

 

「な、なんですか!?」

 

「マドカが気にする事ではないし、多少大変だろうと後々の事を考えれば、纏めて片付けられたのは良かったのかもしれない。この苦労もいずれ報われるだろうから、そこまで反省しなくてもいい」

 

「は、はい」

 

「その代わり、ちゃんと合格してもらわないと、束の玩具にされる可能性があるから、そっちの心配はしておくように」

 

「が、頑張ってますよ!」

 

「私や一夏の血縁とは思えない程、千冬もマドカも勉強が出来ないのね……あの人に似たのかしら?」

 

「死者を引き合いに出すのは止めてあげてください」

 

「まぁ、千冬も補習じゃなかったみたいだし、とりあえずは小言は勘弁してあげるわよ」

 

「貴女に言われる筋合いは無いんですがね」

 

 

 未だに刺々しさが残る千冬を見て、千秋は複雑な気持ちを懐いたが、自分がしてきた事を考えれば当然だと思い直し、苦笑いだけで済ませた。

 

「ん? 学長のイロハってなんです?」

 

「今更か? 来年度から母様がIS学園の学長として、俺がその補佐として経営していくことになったんだ」

 

「一夏に一生こき使われるのが、私の罰みたいだしね」

 

「人聞きの悪い。面倒な事務手続きはこちらでしましたし、貴女は殆どお飾りですよ」

 

「お飾りでも、働かなければいけないのには変わりないでしょ?」

 

「当然です。更識の連中を唆して、入場ゲートを爆破した罪は、しっかりと償ってもらわないと」

 

 

 二人の会話に千冬の意識は付いていかず、ただただ呆然と立ち尽くしたのだった。




話について行ける女子高生がいるとも思えないが……

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