IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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疲れた事無いな……


テスト後

 一夏に発破をかけられてから、それなりに勉強をしてきた千冬と箒は、試験終了のチャイムと共に机に倒れ込んだ。

 

「おりむ~とシノノンはお疲れモードだね~」

 

「今回のテストは易しかったと思いますけど?」

 

「そうだね。ボクも解いてる途中で楽しくなってきたし」

 

「セシリアとシャルロットと比べないでもらいたい……」

 

「私たちは勉強が嫌いなんだよ……頭を使うくらいなら動いてた方がよっぽど疲れない」

 

「一緒に特別講義を受けていたはずのラウラさんはピンピンしていますが?」

 

 

 根本的に勉強不足で補習候補だった二人とは違い、ラウラは単に知識不足だっただけなので、知識さえ与えられれば何とかなるくらいの頭脳は持ち合わせていた。なのでラウラは特別講義のお陰でメキメキと知識を蓄え、最後の方では千冬と箒に教える勢いまで見せていたのだ。だからこの程度のテストで倒れる程の疲労は感じていない。

 

「それで、補習は免れそう?」

 

「さすがに赤点ギリギリではないとは思うが、それでも最下位やその一個上程度でしかないとは思う」

 

「補習じゃなければ何でもいいが、一夏兄に呆れられそうだ……」

 

「まぁ、二人が補習じゃなければ、山田先生のボーナスも何とかなるんだし、二人だって冬休みがもらえるんだし、良かったんじゃないかな?」

 

「そう願いたいよ……」

 

 

 突っ伏したままの二人を見て、シャルロットとセシリアは苦笑いを浮かべ、そして同じように勉強嫌いの本音がピンピンしている事が気になった。

 

「そういえば本音さんも勉強が苦手だと認識しておりましたが、今回は大丈夫だったのですか?」

 

「いろいろと問題も片付いて、おね~ちゃんの本気のお説教を目の当たりにしたから、さすがに頑張ったよ~。まぁ、かんちゃんにいろいろと手伝ってもらって漸くって感じだけど」

 

「そういう事でしたの。ところで、その『いろいろ』というのは、試験開始前にあった集会で生徒会長が仰られていた事とかですか?」

 

「まぁね」

 

 

 テスト前最後の金曜日の午後、突如全校集会が開かれ、IS学園が襲撃された事が正式に発表された。既に薫子が掲載した校内新聞の内容を概ね認め、既に犯人は捕まえてあるという事を発表したのだ。もちろん、一部は既に処分してあるとか、一夏が三十分かからず殲滅させたなどは伏せられている。

 

「不安を抱えたまま試験に臨むのは精神的に良くないからって、楯無様は言ってたけど、逆に動揺しちゃうんじゃないかって不安だったんだよね~」

 

「黛先輩はなんだか死にそうな顔をしてましたが、何かあったのですか?」

 

「おね~ちゃんに思いっきり怒られてたんだよね~。楯無様がちゃんと片付けたはずの書類を盗み見て、勝手に新聞に掲載したから」

 

「そんな事が……ですが、あの新聞のお陰で、おかしな憶測が飛び交わずに済んだのではありませんこと?」

 

「だから、織斑先生と相談して、反省文を提出してもらうだけで今回は許したんだよ~。まぁ、反省文の内容によっては、もっと重い罰が課させたとは思うけど」

 

「本音って時々、物凄い黒い事を笑顔で言うよね……」

 

「そうかな~? というか、シャルルンだって『更識』がそういう家だって知ってるでしょ~? そこに長年仕えてきている家の娘なんだし、これくらいは普通だよ~」

 

「そうなんだろうけど、本音の普段を見てるボクたちにしたら、あんな黒い事を平然と言われると恐怖を懐くよ」

 

「別にそこまでじゃないと思うんだけどな~? おりむ~とシノノンはどう思う?」

 

 

 机に突っ伏したままの二人に尋ねる本音の雰囲気は、既に何時も通りのほほんとしたものに戻っている。

 

「まぁ、本音程度の黒さなら日常茶飯事だとは思うが」

 

「姉さんがいろいろと計画していた時と比べれば、本音の雰囲気など可愛いものだろ」

 

「あの時は束さんの雰囲気というか、それを全力で止めようとしていた一夏兄の方が怖かったぞ」

 

「まぁ、あんなことを実行に移されていたら、今以上に住みにくい世界になってだろうし、一夏さんが本気で止めようとしてたのも仕方なかっただろうが。それとも、お前は一夏さんがいなくなっても良かったのか?」

 

「そんなわけ無いだろ! というか、一夏兄が止められなかったら、もう誰も束さんを止められなかっただろうから、あの時は仕方ないと私だって思ってたぞ」

 

「その時の織斑先生の事を知らないからよく分からないけど、二人がそこまで言うって事は相当だったんだね」

 

「まぁ、視線で人を殺せるのではないかと思うくらいだったからな……」

 

「実際、一夏さんの殺気を浴びた門下生の数人が気を失っただろうが」

 

「あれは、稽古中にふざけだしたあいつらが悪いだろうが」

 

「まぁ、門下生の女をからかっていた男どもが悪いと私も思ってるがな」

 

 

 一夏を怒らせてはいけないと、セシリアとシャルロットは話を聞いてそう心に誓ったのだった。




視線で人を殺せるとか……さすがすぎる

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