IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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義務教育を受けてないから、その分は仕方ない


クロエとマドカの頭脳

 束が作り出した反省部屋に閉じ込められている千秋だが、意外と大人しくしているので監視している束は拍子抜けな気分を味わっていた。

 

「もうちょっと抵抗したりするかと思ってたけど、やっぱりいっくんの親だけあって、冷静な判断が出来るんだな」

 

「束様、母様の様子はどうでしょうか?」

 

「おやマーちゃん。大人しくしてるみたいだよ? 生体反応もあるから、舌を噛み切って死んでるわけでもないようだし」

 

「そもそも、一夏様からしっかりと見張るように言われているのですから、自殺なんてされたら束様が殺されるのでは?」

 

「……それは考えてなかったっ!?」

 

 

 千秋に死なれたら自分の命が危ないという事に、クロエに言われた事で気づいた束は、何とか千秋に自殺させないようにプログラムを組み始めた。

 

「これで、死にたいと思った瞬間に電撃が走って、一時的に麻痺させることが出来る」

 

「それって大丈夫なのですか?」

 

「命には関わらないし、麻痺してる間に猿轡を噛ませて手足を拘束すれば、自殺なんて出来ないだろうし。ところで、二人ともお勉強はもういいのかい? 幾らISの技術が優先されるとはいえ、ある程度勉強が出来ないと入学してもちーちゃんや箒ちゃんのように苦労する事になるんだよ?」

 

「一夏様が作ってくださった問題集と、その解説のお陰で、義務教育分の知識はある程度吸収できました」

 

「一夏兄様の名に泥を塗らないよう、頑張って勉強しました」

 

「うんうん、クーちゃんもマーちゃんもいい子だね~。その調子なら、入学試験もトップで合格出来るかもね~」

 

「一夏様のお話しでは、千冬様と箒様のご友人の妹君が受験するそうですし、そちらのかたがトップ入学するのではないかと仰られておりました」

 

「あぁ、簡易適性検査でA判定だったとか言ってたね。でも、実際にISを動かした事があるクーちゃんとマーちゃんが、技術で負けるとは思えないし、勉強だってある程度は出来る目途が立ってるなら、これはもしかするともしかするかもしれないじゃない?」

 

 

 娘と妹のように思っている二人に対して、束は過度の期待をしている。もちろん、そこを狙えるだけのポテンシャルは十分にあるのだが、目立つことをして一夏に迷惑を掛けるかもしれないという考えから、入学できる程度の学力があれば十分だと二人は考えているのだった。

 

「ちーちゃんや箒ちゃんは残念な頭の持ち主だけど、二人はちゃんと勉強出来るんだしさ。いっくんも出来ない子より出来る子の方が相手にしてくれるだろうし」

 

「くだらん事を言ってないで、引っ越しの準備とかは出来てるんだろうな? お前は三学期から試験的に雇われるんだから、今から用意してないと困るのはお前なんだろ?」

 

「げっ、いっくん!? いつの間に束さんのラボに」

 

「普通に入ってきたが? 気が付かなかったのか?」

 

 

 一夏の問いかけに、束だけでなくクロエとマドカも頷く。話に集中していたのもあるが、一夏の気配はクロエとマドカでは掴めず、束も特に警戒していなかったので気配に気づけなかったのだった。

 

「それで、いっくんは何の用事だったんだい?」

 

「このラボに郵便物は送れないから、二人の受験票やら諸々を持ってきただけだ。それから、お前の準備が進んでるかどうかの確認と、監視をしっかりしているかの確認もな」

 

「ちゃんとしてるってば。ちょっとでも不審な動きを見せたら電撃を喰らわせて拘束する準備もしてあるんだから」

 

「随分と過激だな。まぁ、あの人がしてきた事を考えれば、それくらいでちょうどいいのかもしれないが」

 

「でしょ? それから、二人とも勉強がある程度出来るようになったみたいだから、入試の結果が楽しみになってきたよ」

 

「元々この二人はそれ程心配はしていない。むしろ千冬と箒の結果の方が心配だからな」

 

「あの二人はいっくんと束さんの妹なのに、どうしてあんなにも残念な頭何だろうね~? もしかして、子供の頃に飲ませたあの薬が――」

 

「冗談も大概にしておけよ? クロエとマドカが本気にしてるからな」

 

「さすがにそんな事してたら、いっくんに殺されてただろうし、束さんだって人をおバカにする薬なんて作れないからね~」

 

「お前自体が大馬鹿者だがな」

 

「束さんがおバカなら、世界中の有象無象はカスだね。知性が無いと言っても過言ではない状況になっちゃうよ?」

 

「お前は勉強は出来ても、常識とかが欠如してるだろうが。人として欠陥を抱えているのは間違いないだろ」

 

 

 一夏の言葉に、クロエとマドカは頷いて同意する。束が人として欠陥を抱えているのは、一緒に暮らしている二人も十分に理解しているのだ。

 

「別に有象無象を認識出来なくても、いっくんたちを認識出来れば束さんは十分なんだけどね~」

 

 

 三人に冷めた目で見られても、束は一向に気にした様子もなく、また改善するつもりも無い態度に、一夏は盛大にため息を吐いたのだった。




束は……うん、しょうがないよ……

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