IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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原作では千冬に引っぱたかれましたが……


友人との再会

 クラス対抗戦も近づいてきたせいか、一年一組のクラスでもその話題が多く出てくるようになってきた。

 

「ウチのクラスは優勝候補筆頭だし、順当に行けば優勝できるよね」

 

「優勝賞品は学食のデザートの半年無料パスだし、放課後が楽しみになるよ~」

 

「専用機持ちはウチのクラスと四組の更識さんだけだし、どう考えてもウチのクラスが優勝するよね」

 

 

 クラスメイトが盛り上がっている箇所から少し離れた場所で、千冬と箒はセシリアと本音と固まっていた。

 

「あぁ言われているが、お前は勝つ自信があるのか?」

 

「当然ですわ! まぁ、相手を見下して痛い目を見たばかりなので、あまり自信過剰ではいけないのでしょうが、四組の更識さんの専用機はまだ完成していないのですわよね?」

 

「かんちゃんも頑張ってるけど、明日明後日じゃ完成しないかな~」

 

「それでしたら、専用機持ちである私が圧倒的有利ですわね。後は相手の事をしっかりと観察して攻めれば、こちらが負ける確率は限りなくゼロですわ」

 

「簪は訓練機でも半端ないと思うが、性能の差は埋められないか……」

 

「千冬さんはどちらを応援しているのですか?」

 

 

 まるで簪に勝ってほしいと言っているような千冬に、セシリアは抗議の目を向ける。特に深い意味は無かったので、千冬もすぐにセシリアの考えを否定した。

 

「友達としてどちらにも勝ってほしいが、クラスメイトであるセシリアを応援しているぞ」

 

「お友達でしたら仕方ないですわね……ですが、いざ更識さんと闘う事になった場合、しっかりと私を応援してくださいませ」

 

「もちろんだ。私たちもデザートパスは欲しいからな」

 

「正直セッシーとかんちゃんの一騎打ちだし、これはデザートパスが手に入るのも夢じゃないかもね~」

 

 

 本音がそんなのんきな事を呟いたのと同時に、扉が勢いよく開かれた。

 

「その情報、古いよ!」

 

「誰~?」

 

「「鈴!?」」

 

 

 小柄な少女を見て本音は首を傾げたが、旧知の仲である千冬と箒は驚いた表情で彼女を見詰めていた。

 

「二組の代表も専用機持ちになったんだから、そう簡単に勝たせはしないわよ」

 

「何? 鈴も専用機持ちなのか?」

 

「そうよ! これでも中国の代表候補生なんだから」

 

「あの鈴が代表候補生か……今度弾と数馬に教えてお祝いしなければな」

 

 

 盛り上がる三人を見詰めている視線に気付き、千冬と箒は鈴をセシリアと本音に紹介する事にした。

 

「コイツは凰鈴音。私たちの友人の一人だ」

 

「中学の時に中国に帰って行ったんだが、また会えるとは思わなかったな」

 

「あたしはあんたたちがIS学園にいる事の方が驚きだけどね。あれだけISに興味はないとか言ってたのに」

 

「私たちにだって事情があるんだ」

 

「まぁ、あれだけ一夏さんや篠ノ之博士と比べられれば、興味が失せるのも仕方ないと思ってたけど、何にせよ再会できてうれしいわ」

 

 

 両手を上げて喜びを表現した鈴の背後に、物凄いオーラを感じ慌てて振り返る。

 

「げっ、一夏さん!?」

 

「学校では織斑先生だ。それから、既にHR開始のチャイムは鳴っている。他クラスのヤツはさっさと教室から出ていけ」

 

「わ、分かりました! それじゃあ千冬、箒。後でまた会いましょうね」

 

 

 一夏に怒られた鈴は、すぐに教室から出ていき隣のクラスに飛び込んだ。そんな鈴を見ていた一夏が何かをメモしているのが千冬と箒は気になったが、下手に口を開いて制裁されるのを避けるために、二人は好奇心に蓋をした。

 

「クラス対抗戦も間近に迫ってきましたが、皆さんはしっかりと授業を受けて基礎を固めていきましょうね」

 

「山田先生、質問良いですか?」

 

「はい、どうぞ」

 

「ISとの相性って、そんなに大事なんですか?」

 

 

 女子生徒の質問に、真耶は少し考えてから答える。

 

「例えば、皆さんはブラジャーをしていますよね? 自分の大きさにあったものをしないと、形が崩れたり痛みを感じたりするのとおんなじで、ISとの相性も大きな怪我を避けたり、不振の原因になったりしますので、自分に合ったISを選ぶのが大切です」

 

「真耶ちゃん大胆だねー。織斑先生がいるのにブラジャーの話とか、普通出来ないよ~」

 

「へっ?」

 

 

 女子生徒に指摘されて漸く、真耶はこの場に一夏がいたことを思い出した。顔を真っ赤にして一夏に視線を向けた真耶だったが、一夏は表情一つ変える事無く真耶の話を聞いていた。

 

「お、織斑先生?」

 

「どうかしましたか? まだ説明は終わっていないのではありませんか?」

 

「そ、そうですね!」

 

 

 一夏が気にしていないのに自分が過剰に気にするのも恥ずかしいと感じたのか、真耶は再びISとの相性の大切さを説明する。だが既にクラスメイトの興味は別の事に向けられており、あまり真耶の説明を真剣に聞いている様子では無かった。

 

「――というわけです。分かってくれましたか?」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

 質問してきた生徒が納得してくれたことにホッとした真耶は、クラス中の視線が自分の胸に注がれている事に気付けなかったのだった。




一夏がこの程度で照れるわけがないだろ……

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