IS学園・一夏先生   作:猫林13世

349 / 368
大人組だけってのも珍しい……


一夏の部屋での話し合い

 とりあえず千秋たちの処分を決めた一夏と、来年から本格的にIS学園に住まいを移す束は、誰にも見つかることなく一夏の部屋までやってきた。

 

「来年からここがいっくんと束さんの愛の巣になるのか~」

 

「気色が悪い事を言うな。お前なんかウサギ小屋で十分だ」

 

「いい加減束さんと結婚しようよ~。いっくんと束さんの子供なら、世界制覇だって夢じゃないんだしさ~」

 

「何回も言っているが、お前と結婚するなら真耶と結婚した方が何千倍もマシだ」

 

「束さんじゃなかったら自殺するかもしれない事を平気で言うよね、いっくんって」

 

「お前にしか言わないからな」

 

「それって、束さんが特別って事だよね?」

 

「何処までも前向きな奴……」

 

 

 一夏が呆れかえっているのを無視して、束はモニターを弄り始める。

 

「これが学園外のカメラで、こっちが学園内のカメラだね~……およ? ちーちゃんと箒ちゃんが死にそうになってるけど、何かあったのかい?」

 

「そろそろ定期試験だから、それに向けての特別講義だろ。こいつらの進級と真耶のボーナスが懸かってるからな」

 

「いっくんと束さんの妹だというのに、ちーちゃんも箒ちゃんもおバカさんなんだよね~。いっくんが子供の頃に竹刀で叩きまくるから脳細胞が死滅しちゃったんじゃないの?」

 

「そんな事、あるわけ無いだろうが」

 

「わ、割れるっ!? いっくん、束さんの頭蓋骨から聞こえちゃいけない音が聞こえてきてるから!」

 

 

 アイアンクローで束の身体を持ち上げる一夏に、束は必死に許しを請う。ただでさえ自分が原因でストレスを与えているという自覚がちょっとだけある束としては、これ以上刺激して本気で殺されそうな雰囲気を感じ取ったのだ。

 

「アイタタタ……年々容赦がなくなってきてないかい?」

 

「誰の所為だと思ってるんだ」

 

「束さんの所為も少しはあるだろうけど、それ以外は知らないな~」

 

「八割程お前が原因だろうが!」

 

「まぁまぁいっくん。そんなに怒ったら血圧が上がっちゃうよ? 若いのに高血圧で病院の世話になるのは嫌でしょ?」

 

「胃痛で世話になりそうな勢いなんだが?」

 

「胃痛程度ならこの束さんが開発した新薬で――」

 

「お前が造った薬など飲むわけ無いだろう」

 

「ひど~いっ!? 束さんじゃなかったら本気で泣いちゃうよ~?」

 

「お前にしか言わないと言ってるだろうが」

 

「やっぱりいっくんにとって束さんは特別な存在なんだね~」

 

「もういい……」

 

 

 何を言っても無駄だという事を再確認して、一夏は不意に外に意識を向けた。

 

「何か用か?」

 

「ほい? なんだい、いっくん?」

 

「いや、お前じゃない」

 

「報告に来たんだけど、改めた方が良いかしら?」

 

「気にしなくていい。この馬鹿はすぐに追い払うから」

 

「私にも聞く権利があると思うんだけどな~? 今回は結構手伝ったんだけどな~?」

 

「その倍以上妨害しただろうが」

 

「まぁまぁ、織斑君も篠ノ之さんも落ち着いて」

 

 

 音も無く部屋に入ってきた碧に、一夏は一瞥しただけで済ませたが、束は首を傾げながらじっと見詰める。

 

「どこかで見た事があるんだけど、何処だっけ? その他大勢は区別がつかないから分からないや」

 

「一応同級生で、三年の時はクラスメイトだったんだけどな。まぁ、それ以降もちょくちょく見られてたとは思うけど、更識所属、諜報担当の小鳥遊碧です」

 

「おー、お前がいっくんのお嫁さん候補の」

 

「はい!?」

 

「何だその候補ってのは?」

 

 

 絶句してしまった碧に代わって、一夏が束にツッコミを入れるが、一夏のツッコミは少しズレていた。

 

「ちーちゃんと束さんが血涙を流しながら選んだ、こいつならいっくんを任せてもいい気がするってリストの中の一人だよ」

 

「何で俺の事をお前たちが決めようとしているんだ? 結婚相手くらい自分で選べる」

 

「でもいっくんはこの歳まで誰ともお付き合いしてないでしょ? だからちーちゃんと束さんで選んであげようと思ったんだよ~」

 

「誰が原因で付き合えなかったと思ってるんだ? ん?」

 

「こ、怖いから!? その笑顔は何回見ても怖いからねっ!?」

 

 

 満面の笑みを浮かべて迫ってくる一夏に、束は必死になって頭を下げる。何度かこの光景を見た事があった碧は、二人のやり取りを見て苦笑いを浮かべた。

 

「高校の時も何度かこんな光景を見た事があったけど、あの時からあんまり変わってないのね」

 

「コイツの変態性は生まれつきだからな」

 

「いや、織斑君も。あの時からこんな苦労してたんだなって」

 

「同情するな、泣きたくなるだろ」

 

「織斑君が泣くなら、ちょっと見てみたい気もするけど」

 

「止めた方が良いぞ。いっくんを泣かそうとしても、自分が泣かされるだけだから」

 

「あれはお前が悪いんだろ?」

 

「はい、その通りです」

 

 

 何を指しているのか碧には分からなかったが、束が震えだしたのを見て聞いてはいけない事なのだろうと勝手に納得したのだった。




いや、嫁候補ってなんだよ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。