IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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一存で決定できるだけの力があるからな……


千秋たちの処分

 とりあえず更識の問題が片付いた一夏は、そのまま部屋には戻らずに束のラボにやってきた。今度は自分の問題を片付ける為だ。

 

「一夏様、お待ちしておりました」

 

「クロエか。あの人の様子はどうだ?」

 

「大人しいものです。目を覚まして暫くは舌を噛み切ろうという動きを見せていましたが、今は大人しくしております」

 

「舌を? 束に例の薬を造らせておいて正解だったようだな」

 

「一夏様は未来予知が出来るのですか?」

 

「常に最悪を避ける為に考えているだけだ。未来予知ではない」

 

 

 クロエの言葉に一夏はそれだけ答え、ラボの中へ入っていく。クロエも一夏の後に慌てて続き、一夏を先導すべく彼の前に立った。

 

「こちらになります」

 

「あぁ、すまないな」

 

「いえ」

 

 

 クロエに軽く謝辞を述べて、一夏は千秋が囚われている部屋に足を踏み入れる。

 

「気分は如何ですか?」

 

「最悪よ……どうして殺してくれなかったのかしら?」

 

「IS学園の敷地内で人を殺めるのは避けるべきだと考えただけです。あそこが別の場所ならば、もしかしたら手を下していたかもしれません」

 

「そう……なら襲撃する場所を間違えたって事なのかしらね……大人しく京都で一夏を襲って殺されておけば、こんな惨めな思いをせずに済んだのに」

 

「あの場所に貴女の気配はありませんでしたし、生徒の前で人を殺めるような事はしませんので」

 

「随分と先生が板についてるわね……昔から千冬たちの世話をしてきたせいかしらね?」

 

「どうでしょう。一時期生活の為に篠ノ之道場で師範代として教えていた事もあるのかもしれません」

 

 

 高校生で既に師範代の資格を取っていた一夏は、道場で千冬と箒以外にも稽古をつけていた事がある。居候の身だったのでもちろん賃金は貰っていないが、人に物事を教えるという事はその時からしていたので、教師が板についていても不思議ではないのだ。

 

「それで、私をどうするつもりなの? 私がしてきた事を考えれば、国際警察に突き出せばかなりの報酬が出るでしょうね」

 

「その国際警察はろくに機能してませんよ。束がいろいろとやらかしてますので」

 

「いっくんがやれって言ったんじゃないか~!」

 

「あそこまで派手にやれとは言って無いが?」

 

「……てへっ?」

 

「はぁ……まぁこの駄ウサギのお陰で、貴女がしてきた事に対処してる暇はありませんので、処分の決定権は俺に委ねられました」

 

「つまり、一夏が私の事を処分してくれるって事かしら? 貴方に殺されるなら、悪くない人生だったわ」

 

「誰がそんな事を言いました? 貴女一人の命で賄える程、貴女がしてきた事は軽くないんですよ?」

 

 

 思いもよらない事を言われ、千秋は何も言えずに一夏を見詰める。確かに自分の命にそこまでの価値があるとは思っていないが、だからといって処刑以外の罰が下されるとは思ってもみなかったのだから、仕方がないだろう。

 

「貴女には生き続けてもらいます。もちろん罰は必要でしょうし、あまり大っぴらに生活されては困りますので、IS学園の学長として、その命が尽きるまで働いてもらいます」

 

「学長って……今の人はそれで納得してるのかしら?」

 

「どうせいたところで働きもしない爺ですし、名誉学長の職を与えると言ったら喜んで認めてくれました。もちろん、給与は今と変わらない事を条件にして、ですがね」

 

「確かIS学園の経営って、殆どいっくんが担ってたんじゃなかったのかい?」

 

「一応学長の名はあの爺さんだったし、俺はあくまでも事務処理だけだ。まぁ、今回の件で実質的な経営権がもらえたわけだし、これ以上仕事を押し付けられる事も無くなるだろう」

 

「そんなことして、生徒たちに危害が及ぶとか考えないのかしら? まだスコールやオータムたちの処分が決まってないんだし」

 

「アイツらはIS学園の指導者として雇う事になっている。もちろん、生徒に危害を加えようとすればすぐに粛正するがな」

 

「性格は兎も角として、IS操縦士としての実力はかなりのものみたいだしね~。束さんが始終監視してるから、下手に動けばすぐにレーザーで打ち抜かれるって脅してあるから心配ないしね」

 

「お前の監視って言うのが、一番の不安だがな」

 

「何でさ~! 束さんだってこれからはIS学園の関係者として生活していくんだから、職場の安全はしっかりと確保するって」

 

 

 束の発言に千秋が目を見開いて驚きを示す。あの『篠ノ之束』が一ヵ所に留まると言ったのだから、驚いても無理は無いだろう。

 

「いっくんが担っていた仕事を束さんが引き継ぐ形になっただけだけどね~」

 

「今まで以上に忙しくなる以上、監視員を雇う必要があるからな。こいつならタダ働き同然でも問題は無いし」

 

「毎日いっくんの作ってくれたごはんが食べられるなら、これ以上ない幸せだよ~。クーちゃんとマーちゃんも来年からIS学園に通う事になったし」

 

 

 いろいろと自分の想像の範囲外の出来事過ぎて、千秋は笑う事しか出来なかったのだった。




最強タッグが経営する学校……

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