IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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物騒なタイトルだが……


処分の話し合い

 裏切者たちへの訊問を済ませた楯無は、一夏の方の報告を受けて、彼らの処分について話し合いの場を設ける。参加者は楯無、虚、碧の三人と、冷静な判断を下すものとして一夏も参加してもらう事になっている。

 

「私としては、彼らは一人残らず粛正するべきだと思うのですが」

 

「ですが、あれだけの人数を粛正となると、誰がやっても今後の人生に影響が出ると思うのですが……少なくともお嬢様には無理でしょうね」

 

「そ、そんな事ないわよ! って言いたいところだけど、絶対に後から罪悪感に苛まれそうよね……幾ら裏切者とはいえ、あれだけの人数をってなると……」

 

「それならご心配なく。やるなら私がやりますので。楯無様はただ命じればいいだけです。実際に手を下す必要はありませんので」

 

「碧さん一人に背負わせる事なんて出来ないわよ。私が不甲斐ないからこんな反乱が起きたわけだし……」

 

「ですが、織斑君が訊き出した結果、彼らの中でも率先して反乱を企てた輩が、先代楯無様を毒殺した事が判明しましたし、その本人の口からもその事を訊き出しました。その連中は少なくとも粛正する必要があると思いますが」

 

 

 碧の言葉に、楯無が自分の身体を無意識に抱きしめる。父親を殺されたという事実を受け容れるには、まだ楯無も若過ぎるのだ。それは隣に立つ虚も同じで、楯無に何か声をかけてやりたいのだが、言葉が見つけられずにただ黙って楯無を見詰める事しか出来なかった。

 

「裏切者の始末なら、私がしましょうか? 一切の痕跡無く始末する事が出来るわよ?」

 

「お前は黙っていろ。これは更識の問題だ。俺はあくまでもオブザーバーだ」

 

「そんな事ないと思うけど? ダーリンが決めれば、あの女たちは従うと思うけど」

 

「兎に角、今は黙っていろ」

 

「キスしてくれれば黙っててあげるわよ?」

 

 

 飛縁魔としては冗談のつもりだったのだが、一夏は鋭い視線を飛縁魔に向け、そして自分の唇を飛縁魔に押し当てた。

 

「っ!? ちょっとダーリン?」

 

「大人しくしていろ。次はスクラップにしてやるからな」

 

「わ、分かったわよ……」

 

 

 一夏にキスをされ、骨抜きにされてしまった飛縁魔は、大人しく一夏の背後に控える。その飛縁魔の唇に向けられる三人の視線は、一様に鋭かった。

 

「ウチの専用機が邪魔をしたな」

 

「それは別に良いんですが……一夏先輩は恥ずかしく無いんですか?」

 

「何がだ?」

 

「何がって……人前でキスした事が、ですよ」

 

「飛縁魔は別に人じゃないからな。無機物に唇を押し当てたからといって、恥ずかしがる事は無いだろ」

 

「相変わらず達観してますね……見た目は完全に女性なんですから、見てる側としては相当恥ずかしかったんですけど」

 

「楯無や虚は兎も角として、何故小鳥遊まで顔を赤らめてるんだ?」

 

 

 二人は女子高生だから仕方ないかと思った一夏だったが、自分と同い年の碧までもが恥ずかしそうにしてるのが気になった。

 

「当たり前でしょ! したこと無いんだから……」

 

「そんなものか?」

 

「私に聞かれても分からないわよ。ダーリンが言ったように、私はあくまでも無機物なんだから」

 

 

 飛縁魔と二人で肩を竦め合った一夏だったが、すぐに話を元に戻す事にした。

 

「刀奈たちの父親の毒殺計画を進めたのは五人、実行犯はこいつだ」

 

「この人……前々から先代楯無様に意見していた人ですね……立場的には布仏家よりも上です」

 

「よく覚えてるわ……お父さんが『真正面からぶつかってくる貴重な人間』だって言ってたから」

 

「ご当主様に正面から物事を言える人として、ウチの父も感心していましたが……そうでしたか、この人が」

 

 

 一夏が指差した人物に、三人は似通った反応を見せる。それだけ思い入れがある人物なのだろうと、一夏は冷静に三人の反応からそう分析した。

 

「この事、簪様には報告した方がよろしいでしょうか?」

 

「簪ちゃんには教えられないわよ……あの子、私以上にお父さんに懐いてたから」

 

「お嬢様も大概だと思いますけどね。あれはファザコンと思われても仕方がないくらいでしたし」

 

「そんな事ないもん! って、あっ……」

 

 

 ついつい素が出てしまった楯無は、一夏が呆れた視線を向けている事に気が付き、咳ばらいをして誤魔化して話を戻した。

 

「この五人はどうしようもないわね。粛正する事は決定ね」

 

「かしこまりました」

 

「他の人間は少なからずこの五人に騙されたところもあるわけだし、一夏先輩に訊問されてもう逆らう意思も残ってないでしょうし……奉仕活動をさせて更識に復帰でいいかしら?」

 

「楯無様がそう判断なさるのでしたら」

 

「先輩はどう思います?」

 

「奉仕活動と減給で済ませるなら、それで構わないとは思うがな。暫く監視は必要だと思うが」

 

「分かってます。それじゃあ、この五人以外にはそれで」

 

 

 楯無の決定に、虚と碧は恭しく一礼し、一夏は軽く頷いて見せるのだった。




これで済むとは思えませんがね……

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