IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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遠回しにしてたのに……


碧の依頼

 人に聞かれたらマズいという事で、一夏と碧は場所を改め、一夏の部屋に移動した。食堂からここまで、誰にも見られずに移動出来るのは、この二人を除けば学園に楯無くらいなものだろう――もちろん、束も出来るが、彼女はIS学園に関係しないので除外する。

 

「それで、深刻な相談なんだろ?」

 

「えぇ……更識の人間が殆ど楯無様を裏切って亡国機業に協力している事は織斑君も知ってるわよね?」

 

「あぁ」

 

 

 一応質問の形を取ってはいるが、碧は一夏が知っているものとして話を進めている。一夏も特に知らないフリをする必要もないので、短く頷いて先を促す。

 

「その裏切った連中が近々、楯無様と簪様をターゲットにした襲撃を企ててるみたいなの」

 

「楯無と簪を? 資金の殆どを盗み出し、人員も豊富にいる裏切者が二人を襲う理由があるのか?」

 

「あの屋敷を自分たちのものにしたいみたいよ。幾ら資金や人員があっても、活動場所は限られているもの。ましてや私たちに探られてるのは向こうにも分かるでしょうし、それだったら私たちを潰してあの屋敷を我が物に――って考えたんじゃない? 詳しい事は私にも分からないけど」

 

「そういう事か……それで、その話を俺にする意味は何だ?」

 

「二人が襲われるとしたら、IS学園の可能性が高いわけだし、織斑君にも警戒してもらえないかなって。楯無様と虚ちゃんは、織斑君も忙しいだろうからって遠慮してるけど、織斑君に警戒してもらえればこちらとしても助かるのよね。もちろん、無理に手を貸してほしいとは言わないけど」

 

「それは殆ど『手を貸せ』といっているのと同じだろうが……」

 

「分かる? お願いできない?」

 

 

 チロリと舌を出し、片目を瞑って手を合わせる碧に、一夏はため息を吐きながら頭を掻く。

 

「学園が襲撃されるとなれば、俺としても無関係とはいかなくなるだろうからな……ただし、俺が動けるのはその裏切者が学園の備品を破壊した場合のみだ。楯無と簪が攫われそうになった場合も手出し出来るかもしれんが、それ以外は更識の問題だ。俺が関わるべきではないだろう」

 

「別に関わってくれても良いのよ? 刀奈ちゃんも簪ちゃんも、織斑君の事が好きみたいだし」

 

「……体裁は何処に行ったんだ?」

 

「いいじゃない、そんなの。堅苦しいのは織斑君だって嫌でしょ?」

 

 

 主たちをちゃん付けで呼び始めたので、一夏は碧が「真面目な話は終わり」だと言いたいのを理解し、もう一度ため息を吐いた。

 

「あいつらは単純に、俺の事を兄だと思ってるんじゃないのか?」

 

「鈍感なフリはしなくていいわよ? 織斑君だってあの二人の情が兄に向けるソレだとは思って無いでしょ?」

 

「千冬と似ているとは思っているが?」

 

「それは…まぁ……あの子は例外的よね……」

 

 

 実の兄が恋愛対象になっている千冬の事を思い出して、碧が苦笑いを浮かべる。確かにそこに当てはめるとするなら、楯無や簪の情は、妹が兄に向けるソレと同じ、という事になってしまうからだ。

 

「兎に角、私も最大限の警戒はするけど、さすがに一人であれだけの人数を相手にするとなると、万が一が起こるかもしれないの。だから、織斑君も手伝ってくれないかしら?」

 

「さっきも言ったが、学園に被害が出たのなら、いくらでも理由を付けて参戦する事は可能だ。だからといって余り派手に壊されると困るがな」

 

「向こうの武器は爆薬や銃火器だから、かなりの被害が予想されるわね」

 

「随分と物騒なものを持ち出してるんだな」

 

「ISを常時身に着けている織斑君がそれを言うの? その気になれば国一つくらい簡単に潰せるんでしょ?」

 

「半日あれば余裕だろうな」

 

「あの人たちも、そんな兵器を持ち歩いてる織斑君に『物騒なものを持ち出した』だなんて言われたくないと思うけど」

 

「聞かれなければ問題ないだろ」

 

「何だか政治家みたいよ?」

 

 

 公にしなければ何を言っても問題ないと思ってる政治家がいる事は、一夏も知っているので、そんなのと同列に見られて不本意だと言いたげな視線を碧に向けるが、碧はその視線に取り合わなかった。

 

「それじゃあ、襲撃の件、くれぐれも忘れないでね?」

 

「一応気に掛けてはおくが、俺は教師としての仕事もあるから、基本的には小鳥遊が警戒するしかないぞ」

 

「それは分かってるわよ。だから刀奈ちゃんも虚ちゃんも織斑君にお願い出来なかったんだしね」

 

「主やその側付きが遠慮したのに、お前は遠慮しないのか?」

 

「同級生の好でって事で。報酬は後で楯無様に相談して決めますから」

 

「別にいらん。俺は更識の問題に首を突っ込むのではなく、学園を襲撃した賊を片付けるだけだからな」

 

「物は言いようね」

 

「ほっとけ」

 

 

 碧の冷やかしに肩を竦めて見せた一夏だったが、内心彼も同じような事を思っているので、その顔には苦笑いが浮かんでいたのだった。




最終的に直接的になった

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