IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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あんまり変わりはないが……


鈴の成績

 訓練相手に千冬か箒をと思って彼女たちを探していた鈴は、シャルロットとセシリアを見つけて声をかけた。

 

「ねぇ、千冬か箒見なかった?」

 

「あの二人なら、ラウラと一緒に山田先生に呼び出されてるよ」

 

「呼び出し? 何かやらかしたの?」

 

「次の定期試験で平均以上取らないと冬休みの殆どが補習になるらしいですわ」

 

「そんなに悪いの? あたしも人の事をどうこう言える成績ではないと思ってるけど、特に呼び出しとか無いけど」

 

「鈴さんは二組ですので、山田先生から呼び出されなくても不思議ではありませんわ。それに、今回の特別講義の提案者は織斑先生のようですし、あの三人だけなのは納得出来ますわ」

 

「来週からは別の人も参加させるらしいけど、今週はあの三人だけらしいね」

 

 

 セシリアとシャルロットの説明を聞いて、鈴は納得と不安が混ざった表情で頷く。

 

「あたしも勉強した方が良いのかしら?」

 

「学生の本分は勉強ですし、するに越した事は無いと思いますが?」

 

「ボクは所謂義務教育っていうのを受けてこなかったから、こうして知らない知識を吸収できる機会は嬉しいんだけど、鈴は違うの?」

 

「勉強が好きなんて、日本ではそんな人間稀なのよね」

 

「鈴さんは中国人ですわよね?」

 

「あたしは精神的には日本人に近いのかもね。千冬や箒、阿呆二人とずっとつるんでたから」

 

「そういえば、千冬たちに何の用だったの?」

 

 

 今更ながらに鈴の用事が気になったシャルロットが尋ねると、鈴は少し恥ずかしそうに頬を掻きながら答えた。

 

「訓練相手にって思ってたんだけど、ISの訓練より座学の勉強した方が良さそうなのよね……シャルロット、教えてくれない?」

 

「別にいいけど、何でボクなの? クラスメイトにでも教えてもらえば」

 

「アンタたち並みに仲がいいクラスメイトがいないのよね……ティナもあんまり成績良くなさそうだし」

 

 

 鈴の発言を受けて、シャルロットとセシリアが顔を近づけて小声で話し合う。

 

「(やはり鈴さんは二組で浮いているのでしょうか?)」

 

「(千冬や箒と普通に話せてる時点で、クラスメイトたちから敬遠されても不思議じゃないんだろうね……ボクたちはクラスメイトだからって事で何とかなってるけど、普通ならあの二人と接点を持つのが難しいんじゃないかな)」

 

「(ですが、簪さんはクラスで浮いているようではありませんけど?)」

 

「(簪はお姉さんが織斑先生の日本代表時代の後輩で、簪自身も織斑先生の跡を継ぐ逸材だって言われてるくらいだから、千冬や箒と接点があってもおかしくはないって思われてるんじゃないかな? 鈴は幼馴染だけど、その事を知らないクラスメイトがいても不思議ではないし……)」

 

 

 直接聞かれれば話せるのだろうけど、とシャルロットは言外に告げる。

 

「そんなところに突っ立って何をしているんだ」

 

「あっ、一夏さん」

 

「学校では織斑先生と呼べ」

 

 

 二人の内緒話を黙って見ていた鈴だったが、背後から声をかけられてそちらに振り返った。そして思わず名前で呼んでしまい、一夏に軽く注意されてしまう。

 

「千冬や箒の成績がヤバいって聞いて、あたしも勉強した方が良いのかなって思いまして。それでシャルロットに教えてもらおうと思ったんですが、何故か二人が内緒話を始めたので」

 

「凰の成績もそれほど良くはないと、二組の担任から聞いている。勉強するに越した事は無いだろう」

 

「ですよね……あたしもあの二人と殆ど差が無いって知ってますから」

 

「自覚があるなら、もう少しどうにかしたらどうなんだ? お前は代表候補生なのかもしれないが、その前に学生なのだからな」

 

「そうですよね……千冬や箒に負けたとなれば、あの二人にバカにされそうですし……誰にバカにされても気にしませんけど、あの二人にだけはされたくないわね」

 

 

 鈴が千冬と箒に負けたくないと思っているのは一夏も知っているので、鈴の言葉に苦笑いを浮かべる。

 

「子供の頃からお前たちが争ってるのは見てきたが、殆ど変わらなかったんじゃないのか? その相手をバカにするのか?」

 

「特別講義なんて受けたなら、それなりに点数を取るでしょうし、そうなると大幅に負けそうなんですよ……」

 

「しっかりと授業を聞いていれば分かる問題しか出していないはずなんだが?」

 

「そりゃい――織斑先生は頭がいいから出来るでしょうけども、あたしや千冬たちにはそんな芸当は出来ませんよ。ましてや授業中に別の事を考えてる事が多い千冬には」

 

「集中しろと子供の頃から言ってきたんだがな……とにかく、凰も試験勉強をした方が良いのは事実だから、デュノアにでもオルコットにでも教わるんだな」

 

 

 それだけ言い残して、一夏は職員室に戻っていく。鈴が一夏と話してるのを黙って見ていた二人は、鈴を少し羨まし気に眺めていた。

 

「どうしたの?」

 

「いや、織斑先生と普通に話せるのって、千冬や箒を除けば鈴くらいだなって」

 

「羨ましいですわ……」

 

 

 何故そんな事を想われたのか、鈴は分からずに首を傾げるのだった。




皆勉強頑張れ……

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