IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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精神的安寧の為にも、早くした方が良いと思う……


一夏の決意

 マドカの生活空間の用意が出来たので、一夏はとりあえず束の様子を見る為に研究室に戻ってきた。

 

「あっ、いっくん」

 

「何してるんだ、お前は」

 

「マーちゃんの部屋に仕掛けたカメラと盗聴器の感度を確認してるんだよ」

 

「今すぐ殺されるか、マドカに謝ってから殺されるの、どっちがいい」

 

「出来れば殺さないでくれると嬉しいかなーって」

 

 

 じりじりと詰め寄ってくる一夏の表情を見て、束は本気で命の危険を感じ取り、遠隔操作でカメラを破壊した。

 

「これでいいでしょ?」

 

「今後同じような事をすれば、すぐにでもお前を殺すからな」

 

「いっくんも大概過保護だよね」

 

「ある意味生まれたばかりのマドカを、お前の魔の手から救うには過保護くらいがちょうどいいだろうが」

 

「さすがにマーちゃんには何もしないって。束さんは同性愛者ではないからね~」

 

「……それで、マドカが抜けたことで、亡国機業はどうなってるんだ」

 

「特に何も起きてない感じかな。織斑千秋が少し癇癪を起したくらいで、後は何時も通り。襲撃の計画が少し遅れてるだけで、後は変わらぬ日常って感じかな」

 

「マドカの機体に仕掛けられていた発信機は」

 

「そんなもの、束さんの住処に来たと同時に壊したに決まってるじゃないか。何のためにクーちゃんを御遣いに出して、テレポートまで使ったと思ってるの」

 

「お前が外に出たくなかったからだと思っていたが、意外と考えているんだな」

 

 

 一夏も束がそれくらい考えているという事は分かっているが、皮肉を込めてそういったのだった。一夏の本心が分かっている束は、少しニヤニヤとしたが何も言わなかった。

 

「マーちゃんの事は束さんに任せてくれればいいから。いっくんはちーちゃんたちの指導を頑張ってね」

 

「マドカの事はクロエに頼んであるから、お前は一切手を出すな」

 

「どれだけ信用してないのさ~。束さんだって、やる時はやるんだから~」

 

「余計な事もするから、お前は出来る限り動かない方が俺が楽なんだよ! どれだけお前の後始末をさせられてきたと思ってるんだ」

 

「有象無象には束さんの凄さが分からなかっただけで、束さんは悪い事をしてたわけじゃないんだけどな~。まぁ、いっくんに迷惑を掛けていたのは自覚してるから、これで許してくれないかな?」

 

「何だこれは」

 

 

 束から渡されたアルバムを見て、一夏は束に視線を向けた。

 

「ちーちゃんと箒ちゃんの盗撮写真と、束さんのコスプレ写真集だよ~! あぁ!?」

 

 

 束の答えを聞くや否や、一夏は常人には出来ない方法でそのアルバムを燃やし尽くした。

 

「せめて開くとかしてくれないわけ~? 束さんだって恥ずかしいのを我慢して撮ったのにさ~」

 

「お前は人として既に恥ずかしい事をしているんだから、今更コスプレ程度で恥ずかしがるわけがないだろうが。というか、人の妹と実の妹を盗撮してるんじゃねぇよ」

 

「ちーちゃんと箒ちゃんの成長記録を付けるのも、束さんの大事な日課なのだよ。ちなみに、箒ちゃんは高校に入学してからまた一段と――」

 

「今すぐその口を開けなくしてやろうか?」

 

「はい、黙ります」

 

 

 再び容赦のない殺気を浴びせられて、さすがの束も大人しくなった。ちょうどそのタイミングで研究室に入ってきたマドカとクロエは、いったい何事かと首を傾げた。

 

「また束様が悪さをしたのですか?」

 

「ちょっとクーちゃん。どうして束さんが悪い事を前提に話しを進めるのかな~?」

 

「恐れながら、一夏様と束様、どちらが悪さをするかと問われれば、ほぼ全員が束様とお答えになると思いますが」

 

「まぁ、いっくんが悪さをするなんて思えないしね~。したとしても、公に出来ない事だから有象無象たちには知りようがないし」

 

「人が裏で悪事を働いているような感じで言うな」

 

「だって、いっくんなら証拠を残さずに悪い事をするなんて、簡単でしょ?」

 

「さてな。したことも無いから分からん」

 

 

 やろうとすれば出来るのかと、マドカとクロエはその事に戦慄を覚えたが、一夏が悪事を働くなんてありえないと信じているのか、すぐに現実に復帰した。

 

「それじゃあ俺は、そろそろ学園に戻るとするか」

 

「一夏兄様、もう行ってしまうのですか?」

 

「何時までも学園を空けておくのもな。ちょくちょく様子は見に来るから」

 

「はい……」

 

「なんなら、マーちゃんもIS学園に編入しちゃえばいいんだよ! まぁ、亡国機業の問題が片付くまでは無理かもしれないけど」

 

「一夏兄様、出来る限り早く、解決をお願いします。もちろん、私に出来る事は精一杯お手伝いしますので」

 

「微力ながら、私も手伝います」

 

「束さんも手伝っちゃうぞ~」

 

「……そうだな。出来るだけ早く終わらせた方が、精神的平穏を保てるかもしれないしな」

 

 

 既に平穏とは程遠い生活を送っている一夏だが、これ以上面倒事を増やされる前に済ませてしまおうと、この時決意したのだった。




もう手遅れかもしれないけど、これ以上は一夏でもキツイんだろうな……

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