IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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とりあえず、大好きな一夏の側にはいられるかな……


綺麗なマドカ

 束の手によってマインドコントロールを解除されたマドカは、解除される前とは全く違った反応を見せていた。

 

「千冬姉様に失礼な事をしていたなんて……」

 

「まぁまぁマーちゃん。マーちゃんは操られてただけだから、そこまで着に病む必要は無いと思うよ。それに、ちーちゃんだってマーちゃんの事を小娘とか呼んでたから、どっちもどっちだって」

 

「ですが、一夏兄様の側にいられなかったというだけで、千冬姉様を殺そうとしていたんですよ? 血の繋がった、実の姉である千冬姉様を」

 

「うーん……」

 

 

 態度が一変したマドカに、束でさえもどう対応すればいいのか頭を悩ませてしまう。

 

「そうだ! いっくんが作っておいてくれた料理があるから、それを食べて落ち着こう」

 

「一夏兄様の料理、ですか?」

 

「本当は朝ごはんだったんだけど、マーちゃんのマインドコントロールが思いの外複雑でこんな時間まで食べる暇がなかったんだよ~。もちろん、マーちゃんの分もあるから」

 

「一夏兄様の料理……」

 

「おーい?」

 

 

 何かを考えているようだが、マドカが何を考えているのか束には分からなかった。だが目の前で隙だらけなマドカを見て、束が何もせずにいられるはずもなかった。

 

「な、何をっ!?」

 

「せっかくのチャンスだから、マーちゃんの身体検査を……胸はちーちゃんの方が大きいようだけど、去年のちーちゃんと比べると、あんまり差は無いようだね~。こりゃまーちゃんも将来有望かな~?」

 

「あの、束様」

 

「おっ? クーちゃんも触ってほしいのかい?」

 

「いえ、そうではなく……」

 

「じゃあ嫉妬かい? 大丈夫、束さんの娘はクーちゃんだけだから」

 

「いえ、ですから――」

 

「邪魔してるぞ」

 

「い、いっくん!?」

 

 

 クロエが言いにくそうにしているのを見かねたのか、一夏が姿を現わした。マドカに夢中だったとはいえ、一夏の来訪に気付けなかった束は、慌ててマドカから手を放して一夏から距離を取った。

 

「な、何の用かな?」

 

「お前の事だから、マインドコントロールが解けて混乱してるマドカに嘘を教え込むんじゃないかと思って見に来ただけだ。そうしたら、マドカに手を出してたお前がいたというわけだ」

 

「こ、これは姉妹のスキンシップだよ。いっくんの妹という事は、即ち束さんの妹と言っても過言ではないわけだし」

 

「どんな理屈だ」

 

「だって、いっくんだって箒ちゃんの事を妹として見てる訳でしょ?」

 

「それとこれとは別だと思うがな。まぁいい」

 

 

 束から視線を逸らし、一夏はマドカの目を覗き込む。

 

「あ、あの……?」

 

「確かに前のような殺意のこもった瞳はしてないようだな」

 

「いっくんは束さんの技術を信じてなかったの?」

 

「お前を信じてないだけだ」

 

「より酷いよ!? まぁ、いっくんたちの母親が仕掛けたマインドコントロールは完全に解除したから、ここからは『織斑家』の問題だよ。これ以上束さんを巻き込むなら、今すぐ婚姻を――」

 

「ご苦労だったな。もうお前の力は必要ないから、クロエと大人しくしてろ」

 

「少しくらい束さんの冗談に付き合ってくれてもいいじゃないか~」

 

 

 一夏に文句を言いたげな束を完全に無視して、一夏はマドカに視線を戻す。

 

「さて、これからどうしたい」

 

「どうしたいと言われまして……私が使っているサイレント・ゼフィルスはイギリスから強奪した物です。イギリスに返還したとしても、私の罪が消えるわけではないでしょうから、暫くは監獄での生活が待っているのではないのですか?」

 

「イギリスを襲撃したのは事実だが、お前は操られていたからな。情状酌量の余地はあるだろう。それでも、罰は逃れられないだろうがな」

 

「そんなの、いっくんと束さんが『お願い』すれば無罪放免に決まってるじゃないか~。いっくんはマーちゃんの事を助けたいんじゃないの?」

 

「罪は清算しておいた方が良いだろ。そもそも、お前のはお願いではなく脅しというんだ」

 

「まぁまぁ、いっくんのお願いだって十分脅迫だと思うけどね~。それで、マーちゃんにどんな罰を与えるつもりなんだい?」

 

「とりあえず亡国機業について、知っている事を全て話してもらう。それから、亡国機業殲滅に力を貸してもらい、その働き具合で決める事になるだろう。何処の国も、亡国機業の情報は欲しがっているようだからな」

 

「アイツらはいろいろとやりすぎてるみたいだからね~。特にEU圏で暴れまわってる様子だし」

 

「その辺り、マドカは何か知らないか?」

 

 

 一夏に問われ、マドカは少し考えてから口を開いた。

 

「オータムが言っていた限りでは、暴れまわるのにEUの方が都合がいいとか……どういう意味かは分かりませんが」

 

「あっちの国家の方が、表に出せない金が多いという事だろう。過去の亡国機業は、そういう金を貧民街に配っていたらしいからな」

 

「義賊って言えば聞こえがいいけど、やってる事は犯罪だよね~」

 

「あいつらも変態には言われたくないだろうがな」

 

「そうかな~?」

 

「褒めてないからな」

 

 

 何故か照れだした束にツッコミを入れ、一夏は何かを考え始めたのだった。




後の問題は親か……

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