IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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あんまり変わらないな……


襲撃前夜

 襲撃予定が一夏に知られているのは、亡国機業の人間も気づいている。だが作戦の延期は発表されること無く前夜を迎えた。

 

「いよいよお兄ちゃんが私の物に――」

 

「お前の性癖はどうでもいいが、襲撃を知られてるのに真正面から行くなんて、上の連中は何を考えてるんだ?」

 

「一夏相手に小細工を弄したところで意味がないって分かってるんでしょ。下手に戦力を分散するよりも一点突破の方が勝率が高いって考えたんじゃないの?」

 

「そんなものか? 相手で警戒しなければいけないのって、その一夏って野郎だけなんだろ? だったら出来るだけ戦力を分散させて、その一夏って野郎の気を分散させた方が勝率が高くなるんじゃないのか?」

 

「脳筋のお前にしては考えてるようだが、お兄ちゃん相手にそんな小細工が通じるわけ無いだろうが! というか、戦力を分散したところで、お兄ちゃんにまとめて潰されるのがオチなんだから、一点突破の方がまだ理に適っているんだよ。あと、性癖に関してはお前らに言われたくない、レズめ!」

 

「オレはレズじゃねぇっての!」

 

「あらあら、相変わらず仲がいいわね」

 

 

 マドカとオータムとのやり取りを楽しそうに見ているスコールに、二人は揃って食って掛かる。

 

「私とこいつが仲良く見えるなんて、やっぱり改造された時に変な事されたんじゃないの?」

 

「テメェ、スコールをバカにするなんて言い度胸してるじゃねぇか! 仲良く見えるのはおかしいってのは同意だが、テメェだけは許せねぇな!」

 

「はいはい、大事な襲撃前日に味方同士で争って怪我したらどうするのよ。Mもオータムも落ち着きなさい」

 

「チッ! ところで、お前の親はどこ行ったんだ?」

 

「私が知るわけないだろ。というか、あんなのは親じゃないわよ」

 

「貴女がどれだけ否定しようと、あの女が貴女の生物学上親である事には変わりないのよ」

 

 

 スコールの言葉に、マドカは舌打ちを禁じ得なかった。どれだけ否定したくても、見た目がそっくりなので血縁は否定出来ないのだ。

 

「兎に角明日、私は千冬を殺してお兄ちゃんを手に入れる」

 

「貴女の目的の為に動くわけじゃないんだから、単独行動はなるべくなら控えてもらいのだけど?」

 

「私の目的はお兄ちゃんだけだ。それ以外に興味はない」

 

「私たちの目的だって一夏の奪取。彼が私たちの陣営に加われば、世界は一気に創り変えられるでしょうしね」

 

「オレたちが住みやすくなる世界になるのか」

 

「お兄ちゃんがそんな事に力を貸すわけ無いだろ。お兄ちゃんは私と一緒に暮らすだけで、お前たちの味方になるわけじゃない」

 

「その辺はいくらでもやりようがあるのよ。まぁ、骨は折れるでしょうけども」

 

「ふん」

 

 

 興味が失せたのか、マドカはそのまま自室へと向かう。一応上官であるスコールに対してこのような態度を取るのは問題なのだが、スコールもマドカもあまり気にしていないのだった。

 

「あの小娘……混乱に乗じて消してやりてぇ」

 

「あんなのでも一応戦力なんだから、消すのは止めなさい」

 

「でもよ! スコールにあんな態度を取るなんて、生意気だろ?」

 

「若いんだからあれくらい血気盛んの方が良いのよ。貴女だって、Mと同じ年代の頃は、あれくらい荒れてたんじゃないの?」

 

「さぁな。そんな昔の事は忘れたぜ」

 

「そんなに昔じゃないでしょ? 少なくとも、私なんかより」

 

「けッ! 今回は内部蜂起は期待出来ないんだろ?」

 

「そりゃあの子はこっちに来てないみたいだし、もう暫く平穏を楽しみたいって言ってたしね」

 

「随分と腑抜けた事ぬかすようになったな、アイツも」

 

「それだけ今の生活が楽しいんでしょうよ。たとえかりそめの平和だろうと、それになれると人間、そう簡単に抜け出せなくなるものよ」

 

「何だか深い事を言われたような気もしないでもないが……」

 

 

 腕を組みながらうなりを上げるオータムを、スコールは愛おしそうに見詰める。その視線に気が付き、オータムは照れたのを隠すように声を荒げた。

 

「何見てるんだよ!」

 

「貴女があんまりにも可愛らしい仕草を見せてくれたから、つい見惚れちゃったのよ」

 

「ば、馬鹿な事言ってるんじゃねぇ!」

 

「あら? 私は本気で貴女の事を可愛らしいと思ってるんだけど?」

 

「チッ」

 

 

 口では勝てないと理解し、オータムは舌打ちをして話題を打ち切ろうとしたが、スコールが更に追い打ちをかける。

 

「普段荒々しい態度の貴女も、ベッドの上では可愛らしいものだしね」

 

「へ、変な事言うんじゃねぇよ! だいたい何時オレが可愛らしい態度を取ったっていうんだよ!」

 

「自覚無いのかしら? それじゃあ、今からたっぷり教えてあげるわよ」

 

「お、おい……」

 

「嫌かしら?」

 

「……嫌じゃねぇよ」

 

「ふふ、素直な子は好きよ」

 

「う、ウルセェ!」

 

 

 口では必死に抵抗しながらも、オータムは差し出されたスコールの手を取り、そのままベッドへと連れていかれたのだった。




そして相変わらず同じ手で黙らされるオータム……

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