IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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色っぽい展開……ではないか


一夏の部屋で

 無事全クラスがホテルに到着したのを確認して、一夏は部屋に戻る。教師といえど一人部屋は難しいと思われていたが、さすがに一夏と同部屋を希望する教師はいなかったので、一夏は無事一人部屋を手に入れたのだった。

 

「それで、何故お前らがこの部屋にいるんだ?」

 

 

 一人部屋のはずなのに、室内から気配を感じ取っていた一夏は、ため息を吐きながら扉を開き、中にいる二人にツッコミを入れた。

 

「私は今のところ一夏に雇われているのと同義だから。報告のついでにちょっとお話しでもと思っただけよ」

 

「私は織斑君に報告に来ただけよ。ナターシャさんが部屋に忍び込もうとしてるのが見えたから、彼女が余計な事をしないように監視してただけ」

 

「あら? 貴女だって一夏のバッグに興味津々だったんじゃないの? 私を見てるふりして、その先の一夏の旅行鞄に視線が向けられてたのは明らかよ?」

 

「そんなことありませんよ。私は純粋に、織斑君の荷物を見張ってただけですから」

 

「どっちでもいい。早いところ報告を済ませて出ていってくれ……」

 

 

 別に長居されても困るわけではないのだが、言い争われるのは面倒なので、一夏は二人にさっさと報告しろと促す。ナターシャも碧も少し不服そうな表情を浮かべたが、とりあえずの報告を済ませる事にした。

 

「今のところ怪しい気配はないわね。簪ちゃんも普通に修学旅行を楽しんでるようだし、私の事を気にしてる様子も無かったわ」

 

「こちらもおおむねナターシャさんと同じですね。ただ時々簪ちゃんが辺りを気にする素振りを見せたのが気になりますが、どうやらナターシャさんの存在を探してるだけのようですし、今日のところはそれ程警戒する必要は無いと思われるわ」

 

「さっき束から聞いた話では、奴らが動くのは明日、電車で移動してる時が一番危ないとの事だ。二人とも最大限の警戒を頼む」

 

「もちろんよ。ところで、何で篠ノ之束が貴方に会いに来てるのかしら? あの人は今、監視作業で忙しいはずでしょ?」

 

「アイツが真面目にやるわけ無いだろうが……一応代理は立てたようだが、お仕置きはしておいたから気にするな」

 

「織斑君と篠ノ之さんの関係は相変わらずなんだね」

 

 

 学生時代から一夏と束の関係を知っている碧は、おかしそうに笑うが、ナターシャはそんな碧に嫉妬する。

 

「貴女と一夏の関係って何なの?」

 

「私は織斑君の同級生よ。学生時代に交流は無かったけど、彼が篠ノ之さんの所為で苦労してたのは知ってたから、話しかけたくても話しかけられなかったんだけどね」

 

「つまり、殆ど他人じゃないの。随分と親しそうに話してるから、てっきりガールフレンドかと思ったけど違うようね」

 

「そういう貴女こそ、随分と織斑君の事を意識してるようですけど、どのような関係なのですか?」

 

「私は前に数日、一夏と一緒に訓練した事があるのよ。その時に随分とお世話になったし、一夏のお陰で今、私が生きられていると言っても過言ではないくらいの恩があるのよ」

 

「銀の福音の暴走事件ですか……」

 

 

 さすがに知っているかと、ナターシャは碧の呟きを平静を装った表情で聞いた。あの事件は公表されていないし、どちらかといえば密漁船の捕縛が大々的にニュースとして世間に発表されたので、普通の人間では自分が関係した方の事件を知りようがないのだ。

 

「暗部組織の情報網も馬鹿に出来ないみたいね」

 

「そりゃ貴女を救った中の一人は、ウチのお嬢様――今貴女が護衛している簪ちゃんですから」

 

「そう言えばそうだったわね……一夏以外興味がなかったから忘れてたけど」

 

「ご自身を救ってくれた相手くらい覚えておいたらどうなんですか? それとも、アメリカの軍人は他国の人間に敬意を払わないのでしょうか?」

 

「それは聞き捨てならないわね。別にアメリカ軍がどう思われようが構わないけど、所属している人間まで否定されるのは許せないわ。そもそも私を助けてくれたのは、一夏の指示を受けた子たちでしょ? といっても、殆ど一夏が一人で片づけて、墜落する私を受け止めたのがその子たちってだけで、私が感謝を示す大半が一夏でもおかしくないじゃないの。それに簪ちゃんよりも一夏の妹や篠ノ之束の妹の方が目立ってたから、ちょっと忘れちゃっただけじゃないの」

 

「お前ら、人の部屋で言い争いを始めるな。用件が済んだならさっさと部屋から出ていけ。一応俺も男なんだから、あまり意識されてないのは虚しいんだがな」

 

 

 一応そんな風に言っているが、一夏の表情はちっともそんな風ではない。だがナターシャと碧に冷静さを取り戻させるには十分だったようで、二人はバツが悪そうに揃って苦笑いを浮かべた。

 

「ゴメンなさいね。でも、私が知る限り、一夏は最高の男よ」

 

「私も、織斑君は男らしいと思ってますよ」

 

「そうか」

 

 

 それだけ言って、一夏は二人を部屋から追い出したのだった。




恋愛に発展しそうにないな……

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