IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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まだまともな妹の方です


妹たちの心配

 楯無が何か企んでいると虚から知らされた簪は、部屋でその事について考えていた。

 

「どうしたの、かんちゃん?」

 

「またお姉ちゃんが何かを企んでるらしいんだけど、本音は何か知らない?」

 

「うーん……楯無様が何かを企んでるのなんて何時もの事だから、私は全然気が付かなかったな~。というか、最近はますますかんちゃんの側にいなきゃいけないから、楯無様の事まで見てる暇は無いよ~」

 

「私は別に大丈夫だって言ってるんだけどな……」

 

 

 文化祭以降、楯無の過保護性がますます強まった気がすると、簪は感じていた。あれほど自由にさせていた本音に対して厳しく指導してたり、サボりまくっていた生徒会業務に精を出すようにしたりと、自分に本音をつけさせるために必死になっているように思えるのだ。

 

「その分私は楽が出来て良いんだけどね~」

 

「護衛なんだから、しっかり周りに気を配ってよね……碧さんがいてくれるからって、どこかで安心してるんじゃないの?」

 

「う~ん……実際碧さんの気配って掴みにくいから、いるのかどうか分からないんだよね~。だからそれほど気を抜いてるわけじゃないよ~? でもまぁ。碧さんなら絶対に何処かで見てくれているって思ってるのはあるけどさ」

 

「それがダメなんじゃないの?」

 

 

 どこかで碧がフォローしてくれるだろうと思っているのが、楯無から怒られた原因なのではないかと簪に指摘され、本音は少し考え込む仕草を見せた。

 

「そうなのかな~……私としては、これでも一生懸命かんちゃんの護衛を務めてるつもりなんだけど、楯無様からしたら、これでも足りないみたいなんだよね~」

 

「本音の何処を見たら一生懸命なの? 一緒にいる私ですらそう思うんだから、お姉ちゃんからすればそりゃ不安にもなると思うんだけど……ましてや今度の修学旅行、お姉ちゃんや虚さんはいないわけだし、本音一人で何とかしなきゃいけないんでしょ? 今までそんな場面に直面した事がないから、お姉ちゃんとしても不安が増してるのかもしれないし」

 

「織斑せんせ~がいてくれるから何とかはなると思うけど、私だって自分一人だけになれば、それなりにやるんだから~!」

 

「それなりじゃ困るから、今になって厳しく指導されたんじゃないの?」

 

「厳しくされたって覚えないよ~。でもまぁ、かんちゃんがいなくなったら悲しいのは私も一緒だから、京都では何が何でもかんちゃんの事を守るよ」

 

 

 急に真面目な表情と口調になり、簪は一瞬反応出来なかったが、すぐに何時も通りの雰囲気に戻った本音を見て、今のは錯覚だったのだろうかと感じてしまった。

 

「その真面目モードが長続きすれば、お姉ちゃんや虚さんも安心出来るんだろうけどね」

 

「ずっとあれだと疲れちゃうでしょ~? 私だけじゃなくてかんちゃんも」

 

「私は別に……まぁ、違和感は拭えないけど」

 

「ほら~」

 

 

 自分が不真面目なのを棚に上げて、簪の為だと言い張る本音に、簪は一度虚や楯無を交えて本気で話し合った方が良いという考えに至った。

 

「公の場ではしっかり出来るんだから、普段からしっかりしてよね」

 

「公の場でだらけてたら、それこそお小遣いに響くからね~」

 

「……やっぱりお小遣いを減らしてもらうしかないのかな」

 

「それだけは絶対にやめて! お小遣いが減ると、やる気も減るから」

 

「やる気がないから減らされるって分からないの?」

 

「なんだかんだでかんちゃんもおね~ちゃんも優しいから、減らす前に注意してくれるかな~って」

 

「散々注意してるんだけど?」

 

 

 それでも改善が見られないから小遣いを減らすと言っているのに、どうやら本音には伝わっていないようだった。

 

「今のウチの状況を考えれば、本音にお小遣いをあげる余裕なんて無いんだから、しっかり働いて給金という体裁を保ってよ……このままじゃ本当に本音のお小遣いを無くすしかなくなるんだから」

 

「それを言われると困っちゃうよ……京都ではちゃんと働くから、今はその為の充電って事で」

 

「……過充電は電池の寿命を縮めるから、普段からちゃんと働いておいた方が良いんじゃない?」

 

「私は携帯の電池じゃないよー!」

 

「携帯の電池の方が働いてると思う」

 

「酷いっ!? って言い切れない自分が情けなく思えてきた……」

 

「そう思うなら、もう少し真面目に働いて」

 

 

 簪の容赦のない言葉に、さすがの本音も心に響いたようで、自分の行動を反省してくれた。これが長続きすればいいけどと思いながらも、きっとすぐに忘れるのだろうなと思いながら、簪は本音の事を見詰めていた。

 

「ところでかんちゃん。京都での部屋割りはどうなってるの?」

 

「普通にクラスメイトとだと思うけど、何で?」

 

「臨海学校の時もそうだったけど、かんちゃんってクラスで浮いてるじゃない? だからちょっと不安なんだよね」

 

「失礼な! ……あれ? クラスメイトで仲良くしてる子が思い出せない」

 

 

 自分の交友関係の狭さを再認識させられ、簪は本音以上に情けなさを感じたのだった。




交友関係は狭いんだなぁ……

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