IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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実の兄妹よりほっこりする関係な気もしないでもない


一夏とラウラ

 ついつい暴走してしまったが、すぐに一夏の前だという事を思いだして、千冬とラウラはとりあえず真耶への制裁を中止し、お祝いモードに切り替えた。

 

「一夏兄はこういうの嫌いだって言うけど、私たちは純粋に一夏兄をお祝いしたいだけなの。だから、そういう顔をしないで欲しい」

 

「お前らの気持ちは分かってるんだが、年々派手になっていくのをどうにかしろと思ってしまうんだ。どうせ裏であの駄ウサギが絡んでいるんだろうから、後で制裁しておくが」

 

「姉さんが申し訳ございません……ですが、私では姉さんの暴走を止める事は出来ません……千冬一人でも手に余るんですから」

 

「あ、あの……もう着替えてきて良いですか?」

 

 

 一夏たちからの興味から外れた真耶だったが、やはりコスプレは恥ずかしいのか頬を赤らめて涙目で一夏に問いかける。並大抵の男ならこれだけで陥落しそうな衝撃だったが、一夏には効果は無く、むしろセシリアたちにダメージが大きかった。

 

「わ、私たちの精神衛生上、山田先生には普通の服に着替えてもらった方がよろしいのではありませんか?」

 

「そうだね……ボクも自信失くしそう……」

 

「あれで年上だって言うんだから、世の中不公平よね……」

 

「真耶、さっさと着替えてこい」

 

 

 少女たちが真耶に襲いかかりそうになったのを察知して、一夏が真耶に一時退出の許可を出す。その言葉に笑みを浮かべた真耶が、綺麗に一礼してから猛スピードでこの場から更衣室へ移動していった。

 

「この私が反応出来なかった、だと……」

 

「今の動き……一夏教官クラス!?」

 

「お前らはほんと楽しそうで羨ましいぞ……」

 

 

 千冬とラウラが真耶の動きに驚愕している横で、箒が高校生らしからぬコメントを漏らす。その箒の横では一夏が苦笑いを浮かべている。表情から察するに「お前も大差ない」と言いたげだ。

 

「ま、まぁ山田先生が戻ってくるまで、あたしたちも一夏さんとお喋りしましょうよ」

 

「そ、そうですわね。こういう機会でもなければ、私たちは気軽に織斑先生とお話し出来ませんし」

 

「何だ? 私は別に時間があればお前らの相手はするが」

 

「だって、織斑先生いつも忙しそうなんですもん。たまに時間がありそうな時だって、千冬が怖い目でボクたちを睨んでくるから、話しかけられないんですよ」

 

「ただでさえ一夏兄は忙しいからな。貴重な時間を私たちが潰すわけにはいかないだろ」

 

「お前が言うな……お前と姉さんが一夏さんを忙しくしてる原因の筆頭だろうが」

 

 

 箒のツッコミに、千冬以外が力強く頷く。

 

「なっ!? わ、私は一夏兄に迷惑を掛けてなど……いないとは言い切れないかもしれないが……そんなに酷くはないだろ!」

 

「妹だからという理由で許される範囲は超えてると思うぞ。ウチの姉が原因だからあまり強くは言えないが、一夏さんが入ってる風呂に突撃するのは、普通の妹ならありえない事だ」

 

「千冬貴様、そんなうらやまけしからん事までしたことがあるのか! 我々すら、一夏教官の風呂を覗こうと思っただけだというのに」

 

「ラウラ、それ大差ないよ……」

 

「そもそも殿方のお風呂を覗こうだなんて、淑女としてあるまじき行為ですわよ」

 

「私は女の前に軍人だからな! 淑女ではない」

 

「お前は軍人である前に少女だ。たまには年相応な反応を見せたらどうだ?」

 

「ですが、私の――」

 

 

 自分の出自を言いそうになったラウラに、一夏は鋭い視線を向ける。一瞬一夏の本気を感じ取った千冬と箒は、何事かと一夏に視線を向けたが、二人が見た時には既に何時も通りの雰囲気に戻っていた。

 

「ボーデヴィッヒ、お前は自分の事を悪く考え過ぎだ。あの件はお前が悪いわけではなく、大人が判断した事だ。子供のお前が気に病む事ではない」

 

「ですが……いえ、一夏教官の言う通りかもしれませんね。私は全て自分で背負えるつもりでしたが、私にはそんな覚悟も、器も無い事は分かっていました。これからは、もう少し気楽に考えてみます」

 

「どうしてお前はそう極端なんだ……背負うつもりにしても、もう少し周りを頼り、仲間を信じれば良いだろ。お前は一人では無いんだろ?」

 

「っ、はい!」

 

 

 一夏とラウラにしか分からない会話だったが、誰一人としてその間に入っていこうとはしなかった。千冬ですら、自分が踏み込んではいけない事だと思ったのだ。

 

「戻りました……あれ? 皆さん、どうしたんですか?」

 

「いや、何でもない。さて、真耶も戻ってきた事だし、さっさと先に進めてくれ」

 

「えっと……私、また何かやっちゃいましたか?」

 

「今だけは貴女のその鈍さが羨ましい」

 

「天然って最強だからな」

 

「な、何なんですかいったい?」

 

 

 一人この空気が理解出来ない真耶は、終始首を傾げていたのだった。そんな真耶の姿に癒されながら、ラウラはずっと笑顔だった。




真耶は仕方ない……

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