IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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違和感が凄い……


真面目な本音

 セシリアと千冬の闘いが始まり、今回は距離を詰めるような動きがみられないので、本音は客席で退屈そうに足をプラプラと揺らしていた。

 

「退屈そうね」

 

「だって、さっきのシノノンとの闘いの方が見ていて楽しかったですし~」

 

 

 誰が話しかけてきたのかも見ずに答えた本音は、その声の主に気が付いてさすがに驚いた表情を浮かべた。

 

「楯無様? 今は授業中のはずですが」

 

「あまりにも退屈だったから抜け出してきちゃった。虚ちゃんには内緒だからね?」

 

「おね~ちゃんは兎も角、織斑先生にはバレていると思いますよ~?」

 

「一夏さんなら、私が抜け出して見学に来ることを見抜いていたでしょうし、先に注意しなかったんだから大丈夫よ」

 

 

 何が大丈夫なのか、本音には理解出来なかった。だが楯無が自信満々に言い切ったという事は、恐らく大丈夫なのだろうと、本音は楽観的にそう思っていた。

 

「それで、千冬ちゃんの様子はどうなの?」

 

「見ての通りですよ~。セッシー相手に遠距離戦を挑むには、まだまだ役不足ですね~」

 

「本音……役不足は褒め言葉よ。恐らく力不足といいたいんでしょうけど」

 

「細かいことは良いじゃないですか~」

 

 

 良くはないのだが、そこで脱線していたら話が進まないのは楯無も良く知っている。とりあえず言葉の間違いは置いておくことにして、楯無は本音に別の質問をすることにした。

 

「箒ちゃんは? 本音から見てどうだった?」

 

「ISの事をちゃんと理解して、自分の特性を完璧に生かす事が出来れば、かんちゃんのライバルになり得る存在だと思いますよ」

 

「代表候補生に選ばれる可能性がある、という事かしら?」

 

「あくまで可能性ですけどね。ただ、本人にやる気がないので、かんちゃんの邪魔にはならないと思います」

 

「そう、よかった……さすがに排除するのは難しい相手だものね」

 

「楯無様……かんちゃんとモンド・グロッソ決勝で戦う夢を叶える為に暗部の力を使おうとしないでください」

 

「……本音って時々虚ちゃんとそっくりよね」

 

 

 語尾を伸ばすことなく真面目な口調で話す本音を見て、楯無はそんなことを思っていた。

 

「姉妹ですから、所々似ているのは仕方ないと思いますけどね~。楯無様とかんちゃんだって、似ているところはあると思いますが」

 

「そりゃ姉妹だものね。っと、それは置いておくとして、千冬ちゃんはどう見る?」

 

「おりむ~はまだまだ粗削りな所が目立ちますね~。いきなり遠距離主体で戦えと言われたから仕方ないんでしょうけども」

 

「恐らく篠ノ之博士が、千冬ちゃんと箒ちゃんでペアを組めるようにしたんだと思うわ」

 

 

 楯無の見解に、本音も頷いて同意する。どう考えても千冬は近距離戦闘を得意にしているはずなのに、遠距離主体の機体を宛がわれたのは、それ以外の理由が思いつかないのだ。

 

「モンド・グロッソにペア戦はありませんが、そういう話が無いわけでもありません。実際ヨーロッパでは団体戦を行う国が少なからず出てきているわけですし」

 

「ISを軍隊に組み込んでいる国もあるからね。今のところ人命救助以外にISが使われることはないけど、その内協定を覆してISで戦争でもするつもりなのかしら」

 

「そんなことをすれば、篠ノ之束と織斑一夏を一度に相手しなければいけなくなりますから、さすがにそれは無いと思いますが」

 

「篠ノ之博士は兎も角、一夏さんを相手にするのは避けたいわよね……あの人を本気で怒らせると、第二回モンド・グロッソ決勝の瞬殺が再現されることになるでしょうし」

 

 

 楯無はあの試合を現地で見ていた。その時はあのような裏事情があるとは知らされていなかったので、ただただ一夏に恐怖したのだ。だが、妹が誘拐され、解放してほしければ試合を棄権しろと言われていたことを聞いてからは、一夏があそこまで激昂した理由が理解出来、更に一夏に親近感を懐いたのだった。

 

「妹の為なら何でもする、それは私も同じだから」

 

「だからと言って授業をサボっていい理由にはならないぞ、更識」

 

「えっ……」

 

 

 背後から聞き覚えがたっぷりある声が掛かり、楯無は思わず背筋を伸ばした。正面にいる本音は、既に我関せずの態度を取っており、視線はセシリア対千冬の試合に向けられている。

 

「お、織斑先生……」

 

「布仏妹の真面目な口調は珍しいと思ったが、お前がサボることに関しては珍しいとは思わなかった」

 

「み、見逃してくれませんか? 簪ちゃんの敵になるかどうか知りたかっただけなんです」

 

「千冬と箒は簪の友人だ。例え立ちはだかったとしても簪なら正々堂々戦う事を選ぶだろう。まぁ、これは俺が言わなくてもお前なら分かっているよな、刀奈?」

 

「……そうですね。私が過保護過ぎました」

 

「分かったのならさっさと教室に戻れ。どうせ何時もの理由で抜け出してるんだろうから、あまり長いと心配されるぞ」

 

「一夏さん、セクハラですよ」

 

 

 言葉では一夏を責めているようにも聞こえるが、楯無は笑っている。一夏に怒られたからには戻らないわけにはいかないので、楯無は一礼してアリーナから去って行ったのだった。




さすが暗部当主……

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