IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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学校としては正当な審査だろうけども


最優秀出し物決定

 保健室を後にした一夏は、自室に戻るのではなく生徒会室へ向かっていた。襲撃があった所為で文化祭は中断し、結局生徒会の出し物は評価の対象にはならなかったが、とりあえずは最優秀賞は決められたのだった。

 

「それで、何故俺がここに呼ばれたんだ?」

 

「一夏先輩のアドバイスのお陰で、簪ちゃんのクラスが最優秀賞に選ばれたんですから。今日はそのお礼と、手伝ってもらったお礼を兼ねて私と虚ちゃんがご飯を用意します」

 

「刀奈は兎も角として、虚は料理が苦手だったのでは?」

 

「……手伝いくらいは出来ますので」

 

 

 消え入りそうな声で答えた虚の頭を、一夏は優しく叩く。所謂「ぽんぽん」という感じの撫で方に、楯無はつまらなそうに頬を膨らませた。

 

「一夏先輩、虚ちゃんには随分と優しいですよね?」

 

「そりゃ、お前みたいに迷惑を掛けてこないからな、虚は。その分優しくもなるだろう」

 

「私だってそれほど迷惑を掛けてないつもりですけど?」

 

「お家騒動に巻き込んでおいて、よくそんなことが言えるな。今回だって、裏切者の特定に一枚噛まされたんだがな」

 

「一夏先輩が聞きたい事を先に聞いていいって条件だったんですから、別に良いじゃないですか。本当なら捕らえたかったのを、あえて逃がしたんですから」

 

「その方が一網打尽に出来るだろうが。まぁ、束のヤツがちゃんと追跡出来るという条件付きでだが」

 

 

 既にその束からは敵のアジトを特定したと連絡が入っており、アジトを移動したとしても追跡出来るように手も打ってある。これでいつでも亡国機業のアジトに殴り込みは可能になった。

 

「簪ちゃんの怪我も大したこと無くて良かったわよ。全速力で向かったとはいえ、相手の実力が予想以上に高かったのが誤算よね……簪ちゃん、ISの事嫌いになってなければ良いけど」

 

「見た目だけなら生身で襲われただけだから問題ないだろ。特に恐怖心を懐いてる様子も無かったし、首の痕も数日で目立たなくなるだろう」

 

「そうですか……なら良いんですけど」

 

「お前も、随分と酷い事を言われたらしいな」

 

「何で一夏先輩がその事を知ってるんですかっ!? まさか虚ちゃん!」

 

「えぇ。私には報告義務がありましたので。録画録音した全ては織斑先生に提出しました」

 

「聞かれたくなかったのに……」

 

 

 酷い言われようだったので、出来る事なら聞かれたくなかったと、楯無は本気で落ち込んでしまう。そんな楯無の頭を、一夏は虚と同じように軽く叩いた。

 

「別に他人にどう思われようと、お前が実力でロシア代表を勝ち取った事は知っている。だから、あまり気にする必要は無いと思うぞ」

 

「一夏先輩……弱ってる女の子を慰めて、どうするつもりなんですか?」

 

「別にどうもしない。というか、そんな事をするように思われてるのか、俺は?」

 

 

 楯無の冗談に、一夏が割かし本気に見えるような表情で問い返してきたので、楯無は慌てて首を横に振った。

 

「そんなことあるわけ無いじゃないですか! 一夏先輩がそこらへんのヤツらと同じだと思ってません」

 

「いや、俺も冗談だったんだが……そこまで慌てて否定させるなんて思って無かったから……悪かった」

 

「いえ、元をたどればお嬢様の冗談が原因ですので、織斑先生は悪くないと思います」

 

「虚ちゃん!? さっきから酷くないかな?」

 

「お嬢様がもう少し頼り甲斐のある当主様であられたのであれば、このような事態にはなっていなかったのではありませんか?」

 

「どうだろうね~。私が楯無を継ぐ前から動いてたっぽいし、必ずしも私だけが原因ってわけじゃないんじゃないかな? 一夏先輩はどう思います?」

 

「これ以上お前らの家の問題に俺を巻き込むな、とだけ言っておく。こっちもそれどころではなくなりそうだからな」

 

「そう言えば、一夏先輩のご両親は、亡国機業にいるんでしたね……しかも、創設メンバーであり亡国機業の質を変えた原因……」

 

「犯罪の質が変わろうと、奴らが許されない組織であることには変わりないがな」

 

 

 少し遠くを見るような目で呟く一夏に、楯無と虚はかける声が見つからなかった。

 

「と、とにかく! 今日は私たちで一夏先輩の晩御飯を用意しますので、一夏先輩はゆっくりお風呂にでも入っててください」

 

「何処で調理するつもりなんだ?」

 

「それはもちろん、一夏先輩の部屋で、ですよ」

 

「私ではお嬢様を止められませんでした」

 

「いや、虚が気にする事ではないんだが……教師として遅い時間に異性の部屋を訪ねるのを黙認するのもどうかと思ってな」

 

「一夏先輩がそういう人じゃないって分かってるから、安心して部屋に行けるんですよ」

 

「お前ら姉妹は、俺の事を何だと思ってるんだ?」

 

「へっ、姉妹?」

 

 

 まさか簪も似たようなニュアンスの事を言っているなど知らない楯無は、何で姉妹と言われたのかと、しきりに首を傾げながら考えたのだった。




未来の後輩の為に働いた簪が選ばれましたとさ

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