IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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真面目に文化祭に取り組んだ覚えが無い


文化祭の出し物

 表向きは平和に始まった二学期だが、千冬と箒はそんな気分ではなかった。一夏が何か動いている事は明らかだし、楯無からも気をつけろと警告を受けているのだ。二人が認める実力者からの警告を無視する程、二人は考え無しでも自分なら大丈夫だと過信する事は無かったのだ。

 

「千冬さんに箒さん、先ほどからボーっとしていますが、何かあるのですか?」

 

「何も無い――と言い切れる程、私たちは情報を持ってないからな……何も無ければいいが、といった感じだ」

 

「はぁ……とりあえず、そろそろHRですので、あまりボーっとされていると、織斑先生から注意を受けますわよ」

 

「一夏さんの気配を見落とす程ボーっとしてるつもりは無いんだが、忠告感謝する」

 

 

 セシリアから注意を受けて、二人はとりあえず現実に思考を向けた。

 

「クラスメイト達は文化祭だ修学旅行だと盛り上がっているし、私たちもそれにあやかってみるか?」

 

「学校行事にまともに参加した事など無かっただろうが。弾や数馬たちと一緒に、どんなイタズラをするかしか考えてこなかった私たちが、今更文化祭の準備に加わったところで戦力になるとは思えないが」

 

「それはそうだが、盛り上がることくらいは出来るんじゃないか? 楽しみだとかなんとか言っておけば、何となく会話に参加出来てる感じだろ?」

 

「それはそれで悲しくないか? まぁ、難しい事は一夏兄たちに任せて、私たちは勉学に励むとするか」

 

「お前の口から『勉学』なんて言われても白々しい事この上ないぞ」

 

「そりゃ本気で言ってないからな」

 

 

 千冬の開き直りに、箒はため息を吐きそうになったが、自分も千冬の事を呆れられる程勉強に精を出しているわけではないと思い直し、苦笑いを浮かべるにとどめた。

 

「そう言えば最近、束さんの気配を感じないな」

 

「忙しいんじゃないのか? この間一夏さんにこっ酷く怒られたとか言ってたから」

 

「そんなの何時もの事じゃないか? それで今更束さんが反省するとは思えないんだが」

 

「それもそうだな……」

 

 

 姉の事だが、箒は束を庇う事はせず、千冬の言い分に同意した。それだけ束が問題児であると同時に、一夏が散々注意しても直してこなかったという実績があるのだ。

 

「とりあえずは、今出来る事を全力でするとするか」

 

「簪の稽古相手と、自分の成績向上の為に勉強だな」

 

「その殊勝な考えは買うが、いい加減黙ったらどうだ? とっくにHRは始まっているぞ」

 

「「げっ、一夏兄(さん)」」

 

「学校では織斑先生だ」

 

 

 一夏の出席簿アタックを喰らい、二人は涙目になりながら教壇に立つ真耶に視線を向けた。自分たちとは別の理由で涙目になっていた真耶を見て、二人は大いに反省したのだった。

 

「そ、それではHRを始めたいと思います。今日は文化祭でこのクラスが何をするのかを決めたいと思いますので、クラス代表のオルコットさん。後はお願いします」

 

「かしこまりましたわ」

 

 

 真耶に代わり教壇に立ったセシリアは、千冬と箒に「せっかく注意したのに」と言いたげな視線を向け、二人はその視線に対して頭を下げたのだった。

 

「先程山田先生が仰られたように、我がクラスは文化祭で何をするかを決めたいと思いますが、何か意見はございますか?」

 

 

 セシリアがそう問いかけると、クラスメイトたちは様々な意見を出し始める。

 

「やっぱりオーソドックスに喫茶店とか?」

 

「せっかく専用機持ちがいっぱいいるんだから、ISについて詳しく説明したり、実戦を見学してもらったりするのはどう? 在校生向けじゃなくて、来賓向けにさ」

 

「面倒だし、何かの展示とかは? そうすれば当日は遊んでられるでしょ?」

 

 

 クラスメイトたちが盛り上がりを見せる中、ラウラが困ったようにシャルロットに話しかける。

 

「文化祭とはいったい何だ?」

 

「学生がやるお祭りの事だよ。劇をしたりお店を出したりと、学生たちが知恵を絞って盛り上げる行事だよ」

 

「それは楽しそうだな。私は学校に通った事など無かったから、初めての文化祭だな」

 

「そうだね……」

 

「? シャルロット。何故泣きそうになってるんだ」

 

 

 言葉の端々に同情を誘う境遇が見え隠れするラウラに、シャルロットは思わず泣きそうになってしまったが、本人があまり気にしていないのを見て思い直す事にした。

 

「ラウラも何か意見を出してみたら?」

 

「だが、私には文化祭のノウハウが無いからな……何をすればいいのかが分からない」

 

「ラウラがやりたい事を言えば良いんだよ。それがダメだったらセシリアが却下するだろうし、言うだけなら自由だしね」

 

「そうか……」

 

 

 少し考え込んでから、ラウラは挙手をして立ち上がった。

 

「私は――」

 

 

 ラウラが何を言うのかクラスメイト全員が注目する中、ラウラは思いもよらない事を口にした。

 

「――メイド喫茶というやつをやってみたい」

 

 

 その発言に、一番驚いたのは一夏だったかもしれない。




ラウラが順調に毒されてる……

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