IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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さすが変態だ


成長記録

 控室で汗を拭き、巫女装束を脱いだタイミングで、千冬たちがやってきたので、箒は慌てて奥に引っ込み気配を殺した。

 

『あれ? 箒いないじゃない』

 

『トイレか?』

 

『まぁ待ってれば帰ってくるだろうし、ここで待たせてもらうとするか』

 

『……いや、出直した方が良さそうだな』

 

『どういう事ですの?』

 

 

 気配を殺していたお陰か、千冬以外には気づかれなかったが、やはり腐れ縁という事もあり千冬の気配探知を誤魔化せなかったようだ。だが彼女も箒の現状を察して、一度で直した方が良いと提案して控室から出ていってくれた。

 

「よくよく考えれば、何で隠れなければいけなかったんだ?」

 

 

 やってきた気配は五つ、弾と数馬がいない事は分かっていたはずなのに、箒は何故隠れたのかと自分で自分の行動に首を傾げた。

 

「とりあえずは着替えを済ませるとするか」

 

 

 退室したとはいえ、後でまた来ることは先ほどの会話を聞けば明白なので、箒は急いで着替えを済ませる事にした。

 

「というか、着替えるという事を考えたらもう少し遠慮するだろうが……ノックも無しに部屋に入ってくるとは、さすがは鈴、と言ったところか……」

 

 

 実際に入ってきた順番を見たわけではないので何とも言えないが、最初に聞こえてきた声は間違いなく鈴の物だったので、箒は率先して部屋に入ってきたのは鈴だと決めつけていた。

 

「千冬のヤツも、私の現状を察せるなら、控室に来る前に止めてほしかったものだ」

 

 

 とりあえず着替えを済ませ、巫女装束を片付け始めたタイミングで、もう一度この部屋に気配が近づいてきた。

 

「誰だ?」

 

 

 近づいてくる気配は一人分。千冬たちの物ではないので、箒は首を傾げながら片づけを続行する。神社の人間だろうと思っていたのだが、どうやらそれも違うと理解出来るくらいまで近づいてきたので、箒は何か武器になるようなものを探した。

 

「何も無い、か……徒手格闘はあまり得意じゃないんだが……」

 

 

 不審者と決めつけているのも問題だが、常に最悪を想定して動くという事は一夏から教わった事なので、箒がそれを疎かにするはずもないのだ。

 

「やっほー!」

 

「ね、姉さんっ!?」

 

「見事だったね~、箒ちゃんの神楽! いろんな角度から撮影したから、揺れる箒ちゃんの――」

 

「姉さん!」

 

「っと! 相変わらず攻撃が素直だね~。そんなんじゃいっくんに怒られちゃうよ~?」

 

「一夏さんに怒られるなんて事はないでしょうけども、これでも防がれますか……」

 

 

 箒としてはかなり成長したと思っていたのだが、あっさりと束に止められてしまい、自分の格闘センスの無さを実感していた。

 

「ん~、いっくんや束さん以外だったら確実にやられてただろうけど、箒ちゃんが攻撃するのって、束さんくらいだからね~。だから、どんなに頑張っても無駄だと思うよ~?」

 

「細胞レベルで人外の姉さん相手ですしね……ですが、もう少し頑張ってみようかと思ってます」

 

「うんうん……? それってどういう事かなっ!?」

 

 

 向上心があることに感心していた束だったが、自分が人外呼ばわりされて少し不服そうに抗議する――否、少ししか不服そうではない。

 

「まぁ、いっくんに見せるように撮影してただけだから、箒ちゃんのバインバインのおっぱいを他の人間に見せるつもりは無いよ」

 

「ですから、何処を撮ってるんですか、貴女はっ!」

 

「箒ちゃんやちーちゃんの成長記録を残すのは、姉としての束さんの務めだからね~」

 

「そんなのは残さなくて良いです!」

 

 

 束と言い争っていると、いつの間にか控室に様子を見に来た千冬が呆れた表情を浮かべていたことに、箒は漸く気が付き、少し恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「い、何時からいた?」

 

「束さんがお前のバインバインの――とか言い出した辺りから」

 

「ちーちゃんだって、箒ちゃんのおっぱいは羨ましいよね?」

 

「まぁ、羨ましくないと言えば嘘になりますが……」

 

「だよね~。束さんだって決して小さくないけど、箒ちゃんのアレを見るとね~」

 

「ところで箒、もう他の連中を入れてもいいか? 外で待たせてるんだが」

 

「別に構わないが、姉さんは――ん?」

 

 

 どうするのかと尋ねようとしたが、既に束の姿は控室に無かった。

 

「いつの間に……」

 

「束さんもだが、一夏兄も音もなく消えるからな……時々、本当に幽霊なんじゃないかと思う時がある」

 

「質量のある幽霊なんているのか? 一夏さんの拳骨は、幻痛ではなく本当に痛いぞ」

 

「あぁ。だから思うだけで信じてはいない」

 

「ちょっと、何時まで待たせるのよ!」

 

「合図するまで待てと言っただろうが。なんでそれくらい待てないんだ、お前は……」

 

 

 再び断りもなく入ってきた鈴に、千冬は呆れ、箒も苦笑いを浮かべるしか出来なかった。付き合いが長いから注意しても意味がないという意味での苦笑いなので、箒のそれは千冬に向けられたものだった。




束相手だと箒も未熟者扱い……

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