IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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暴走気味……


我慢の限界

 立ち入り禁止区域に足を踏み入れて数分、二人は一夏の姿を発見した。

 

「織斑先生、少しお時間よろしいでしょうか?」

 

「真耶から聞いたのか?」

 

「は、はい」

 

 

 一夏は訓練機のメンテナンスと、IS学園に設置されている監視カメラのチェックを同時に行っていた。

 

「これは?」

 

「不審者のチェックだ。今年は特に多いからな」

 

「何故でしょうか……すでに国家代表として活躍している生徒会長が入学した去年の方が、話題性があると思うのですが」

 

「お前たちだ」

 

 

 訓練機のメンテナンスが終わったのか、一夏は視線の半分を機体から二人に移した。残りの半分は、しっかりとカメラ映像に向けられている。

 

「お前たちは話題性に富んでいるからな」

 

「……一夏兄と束さんの妹、だからですか?」

 

「そうだ。この間も特集記事を組みたいと頼み込んできていた記者が、学園内に侵入するという暴挙に出たくらいだからな」

 

「そんな事が……ですが、IS学園の警備システムは完璧だと聞いていますが」

 

「男に対しては完璧に作動するが、女相手だと意外と脆いものだ」

 

 

 元々IS学園は男に対しては厳しいが、女に関しては寛容だともっぱらの噂なのだ。もちろん、女装したくらいで誤魔化される程やわではないが、女が忍び込むのはそう難しくはないのだ。

 

「一応監視システムの強化をしたお陰で、無謀な女記者も減ってきたんだが……お前たち二人が入学したお陰で、またそういう輩が出てきたというわけだ」

 

「そうだったのですか……」

 

「それで、何をしにここに来た。世間話をしに来たわけではあるまい」

 

「織斑先生にお願いがあってきました」

 

「お願い? まぁ、ここじゃなんだし、部屋に移動するぞ」

 

 

 そう言って一夏は監視カメラの映像が映し出されているモニターの電源を切り、すたすたとこの場から移動する。二人は呆気にとられながらも、一夏の後に着いていく。

 

「あの……映像を見てなくて良いのですか?」

 

「あれはあくまで証拠固めの為だ。忍び込もうとするやつなど、気配で分かるからな」

 

「なるほど……」

 

 

 愚問だったと、箒はすぐに自分の質問が無意味だったと反省する。先ほど自分たちが思っていたように、一夏は気配で不審者を見つける事が出来るのだから、カメラ映像を見続ける必要はないのだと。

 

「少し待ってろ」

 

 

 部屋に通された二人は、居心地悪そうに正座をして待つ。お盆にお茶を乗せた一夏が戻ってきて、二人の背筋は今以上に伸びた。

 

「別にそんな緊張しなくてもいいだろ。身体に余計な力が篭っているぞ」

 

「緊張しますよ……」

 

「何故だ?」

 

「こうして織斑先生の部屋に入るなんて、思ってなかったからです」

 

「別に大したこと無いだろ」

 

 

 グルリと部屋の中を見回して、一夏はそう答える。だが千冬と箒にとっては「一夏の部屋」というだけで緊張するのだ。

 

「それから、ここは学校じゃないから、堅苦しい話し方をする必要もない」

 

「そうですか……」

 

 

 一夏が淹れてくれたお茶を一口啜って、漸く落ち着いたのか、千冬から出ていた緊張のオーラがあっという間に霧散した。

 

「それで、俺になにか相談があるんじゃないのか?」

 

「一夏兄、私たちの訓練を見てもらいたいんだけど」

 

「訓練を? 俺が見て何か変わるのか?」

 

「変わるよ! 一夏兄にアドバイスしてもらえれば、私も箒も今以上にISの事を知れるし、何より一夏兄に指導してもらえれば、あのオルコット相手でも多少なりともマシな闘いが出来ると思うの!」

 

「おい……千冬? 何だか随分一夏さんに甘えていないか?」

 

「数年分の愛おしさを考えれば、こんなの全然だろ」

 

「そ、そうか……」

 

 

 普段の凛々しい雰囲気が何処かに消えてしまったと思えるような変貌っぷりに、箒は呆気にとられた。甘えられている一夏も少し困惑気味だが、あの事件以降まともに構ってあげられなかったという自覚があるのか、千冬を引きはがそうとはしなかった。

 

「千冬たちは、オルコットの実力を知っているのか?」

 

「知らない。でも、一夏兄が『大したこと無い』って言ってるって事は、私たちにも勝ち目があるかもしれないって事だよね?」

 

「まぁ、アイツが油断したままなら、勝てないことも無いだろうとは思っているが」

 

 

 すっかり気に入ったのか、千冬は一夏の腕の中にすっぽりと納まって話しを進めていく。その光景を正面から見なければならない箒は、若干羨ましげに千冬を眺めていた。

 

「とりあえずアリーナでお前たちの実力を見てからだな。ほら千冬、アリーナに行くから立て」

 

「もうちょっとくらいいいじゃん」

 

「時間が無いんだろ? 決闘が終わって、時間がある時にまたここに来ればいいだろ」

 

「来ても良いの?」

 

「下校時間前なら構わん。ただし、俺がいるかどうかは別だがな」

 

「じゃあ、休みの日に遊びに来る」

 

「あの、私も来てもいいですか?」

 

「話し相手くらいにはなれると思うが、それでいいなら構わない」

 

 

 一夏から許可をもらった二人は、一夏の邪魔にならない程度に遊びに来ようと心に決めたのだった。




まだまだこんなものじゃないでしょうが、とりあえずはこのくらいで……

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