IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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普通の会話、ではないな……


姉妹の会話

 箒が着替え終えたのを見て、千冬は笑い出しそうになったのを必死に堪える。袴なら割と見慣れていても、巫女装束となると珍しさが勝ってしまうのだろう。

 

「に、似合ってるぞ」

 

「笑いを堪えながら言われても嬉しくないし、そもそも似合っててほしくないものだからな」

 

「その恰好で人前に出れば、あっという間に人気者になれるだろう」

 

「そんな軟派者に好かれても嬉しくないと言っているだろうが」

 

「まぁ、どうせその肉塊につられた連中だろうからな」

 

「その表現はどうにかならないのか? というか、お前だって小さくないだろうが」

 

 

 自分ばかり責められている気がして、箒が何とか反撃を試みたが、千冬にはあまり効果が無かった。

 

「確かに、私だって平均以上はあると自負しているが、お前という比較対象が隣にいるからな。目立つものも目立たないんだ」

 

「そんなものなのか?」

 

「目立ちたいと思った事も無いが、お前が目立ってるせいで私が小さいとか思われたくないからな」

 

「誰もそんな事思って無いと思うが」

 

「お前に私の気持ちが分かるとは思えない」

 

「す、すまない……?」

 

 

 何故か謝らなければいけないような気になり、箒は頭を下げたが、よくよく考えれば何故自分が謝らなければいけないのかと首を傾げた。

 

「とりあえず、私は鈴たちと合流するが、お前は逃げ出すなよ」

 

「いい加減覚悟は決めた。だがまぁ、逃げられるなら逃げ出したいと今も思ってるがな」

 

「そんなに目立つのが嫌なのか?」

 

「こんな格好で目立ちたいと思うやつがいると思うか?」

 

「まぁ、ある意味コスプレだからな」

 

 

 箒が苦々し気に笑うのに対して、千冬は面白がっているのを隠そうともしない笑みで返し、箒の前から去っていく。

 

「どうせ姉さんが衛星を駆使して覗いてるんだろうし、一夏さんに頼んで拡散しないように釘を刺しておいてもらわなければな……」

 

 

 箒がそう呟いたタイミングで、携帯に着信が入る。滅多に鳴る携帯ではないので、箒は一瞬びくついてから携帯に手を伸ばし、表示されている名前を見てため息を吐いた。

 

「何の用ですか?」

 

『心配しなくても、箒ちゃんの着替えシーンなどは拡散しないから安心して良いよ~』

 

「何処から撮ってるんですか!?」

 

『何処ってそりゃ、箒ちゃんがお風呂に入ってるところから?』

 

「変態っ! 一夏さんに言い付けますよ!?」

 

『その時はいっくんのその映像を見せて許してもらうから大丈夫だよ~』

 

「……一夏さんなら、普通に姉さんに殴り掛かりそうですがね」

 

 

 自分に魅力がない、とかいう問題ではないと箒は分かっているが、一夏が自分の裸を見て興奮するとは思えなかった。そもそも自分は妹のように思われているので、万が一裸を見られても一夏が自分に襲いかかってくるはずはないと。

 

『箒ちゃんの裸を見ても興奮しないなんて、やっぱりいっくんは若くして枯れちゃったのかなぁ?』

 

「一夏さんの耳に入ったら、それだけで殺されそうなセリフですね」

 

『この間束さんと一緒にお風呂に入った時も、全然手を出しそうな感じがしなかったしな~……やっぱり――』

 

「ちょっと待ってください!」

 

 

 束のセリフをぶった切って大声を上げた箒に、束は電話越しでも分かるくらいの怪しい笑みを浮かべた。

 

『どうかしたのかな~?』

 

「一夏さんと一緒にお風呂に入ったとか聞こえましたが」

 

『その通りだよ~。この間報酬として、いっくんと二人っきりでお風呂に入ったんだから~! もちろん、お互い全裸だよ』

 

「よく一夏さんが許可しましたね」

 

『いっくんから提示してきた条件だからね~。それだけあのアメリカ軍人の事助けたかったんだろうけど、束さんからすれば、いっくんとお風呂に入れるから情報を集めただけで、あの軍人がどうなろうが関係なかったんだけど』

 

「一夏さんがそこまで姉さんの要望を呑むほど、あの人を助けたかったと?」

 

『単なる知り合いって感じじゃなさそうだったけど、いっくんが誰かと付き合ってたなら束さんが知らないわけないし、箒ちゃんが考えているような間柄じゃないと断言出来るよ』

 

 

 自分の考えが見透かされていたというのに、箒は全く驚いた様子が無い。どうせ今も盗撮されていて、姉なら自分の考えを読む事くらい当然だと彼女はそう考えているので、驚く必要が無かったのだ。

 

「姉さんは、一夏さんがもしナターシャさんに特別な感情を懐いているとしたら、どうしますか?」

 

『別にどうもしないよ』

 

「え?」

 

『いっくんにだって幸せになる権利はあるからね~。まぁ、邪魔はするかもしれないけど、本格的に排除する事はないかな』

 

「あっ、邪魔はするんですね……」

 

 

 それを聞いて少しホッとしてしまった自分に気が付き、箒は誰もいないのに咳払いをして誤魔化したのだった。彼女の中にも、一夏が誰かと付き合う事に抵抗があった証拠である。




箒もヤバいかもしれない

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