IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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恋人にはならなそうだな……


友人紹介

 勝手に上がり込んだことに恐縮していた簪だったが、鈴と本音が楽しそうにしているのを見て、自分が馬鹿馬鹿しく感じ始めて輪の中に加わることにした。

 

「セシリアとラウラも明後日から?」

 

「えぇ。何処の国も大して変わらないと思いますわよ。候補生を集めて合宿をするのですから」

 

「その後は? 日本に戻ってくるの?」

 

「せっかくですので、私は実家の方でゆっくりしようと考えていますわ。幼馴染とも久しぶりに会いたいですし」

 

「私も、隊の皆とじっくり訓練する予定になっている」

 

「隊の人と言えば、ラウラの隊の副官の人って、アニメとか好きなの?」

 

「そうみたいだな。彼女曰く『日本のオタク文化は世界に誇れる物』らしいからな」

 

 

 ラウラが副官のモノマネをしたのだが、面識がない他のメンバーはポカンと口を開けるだけしか反応出来なかった。

 

「まぁ、あたしも中国で合宿した後は向こうでゆっくりするつもり。こっちにいてもする事ないからね。お父さんの様子でも見ておこうと思って」

 

「そうなると、日本に帰ってくるのはボクだけなんだ」

 

「シャルロットさんはご家族と――あっ!?」

 

「別に気にしなくて良いよ。挨拶だけして帰ってくるつもりだったから」

 

「かんちゃんも学園に帰ってくるんでしょ~?」

 

「だって、家にいたくないし……たぶん、お姉ちゃんも同じだと思う」

 

 

 更識家の内情が気になった鈴だったが、そのタイミングで千冬たちが帰ってきたので、その話はうやむやのまま終わった。

 

「おっ、弾と数馬も一緒だったのね。ゴールデンウィークぶりかしら?」

 

「そうだな。というか、随分な人口密度だな」

 

「この人たちは?」

 

「ほら、バカ二人は挨拶も出来ないわけ?」

 

「口で言えば分かる! 蹴る必要はねぇだろうが!」

 

 

 何時ものノリで話しかける鈴に、他のメンバーは少し呆気にとられたが、これが彼女たちの当たり前なのだろうと何とか受け入れたのだった。

 

「えっと、五反田弾です。千冬たちとは餓鬼の頃からの付き合いです」

 

「御手洗数馬、以下同文」

 

「相変わらず面白味の無い挨拶ね。余興くらい用意してないわけ?」

 

「そんなもんあるわけ無いだろうが!」

 

「面白い人たちだね」

 

 

 鈴とのやり取りを見ていたシャルロットが、口元を押さえて笑い、セシリアとラウラも頷いてみせたが、簪は何処か警戒しているような目をしており、本音も簪を庇う位置に移動している。

 

「あー、そんなに警戒しなくても大丈夫だぞ。こいつらは腑抜けだから、いざ二人きりになっても手を出すなんて事はしないから」

 

「というか、そんな動きを微塵でも見せれば、私たちに粛清されると分かってるからな。だから簪も本音も、そんなに睨まなくても大丈夫だ」

 

「というか、何かして一夏さんに知られたらと思うと……」

 

「そもそも俺は三次元に興味がないと言ってるだろうが」

 

「――とまぁ、こんな感じで面白いやつらだから、今日一日我慢してくれ」

 

「我慢って何だよ!」

 

 

 箒の言葉にすかさず弾がツッコミを入れると、海外組はそろって拍手を送った。

 

「これが夫婦漫才か」

 

「誰が夫婦だ!」

 

「違うのか?」

 

「ラウラ、ちょっと黙ってようか」

 

「な、何をするシャルロッ――うむ、このお菓子はなかなかだな」

 

 

 ラウラの口にお菓子を放り込んで黙らせたシャルロットは、自分たちが自己紹介をしていないことを思い出して立ち上がり頭を下げた。

 

「ボクはシャルロット・デュノアです。フランスの候補生ですが、その辺りは気にしなくて大丈夫です」

 

「セシリア・オルコットですわ。イギリスの代表候補生で、千冬さんたちとは仲良くさせていただいています」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「更識簪」

 

「布仏本音だよ~」

 

「ここにいる全員、一夏兄の教え子だからな。何かすれば、一夏兄に報告されるという事を忘れなければそれでいい」

 

 

 千冬が更に念を押してきたので、弾と数馬は辟易とした顔で頷いた。

 

「とりあえず弾、例の物は持ってきたんでしょうね?」

 

「一応な。というか、誰か買えよな」

 

「あんたが持ってるのにわざわざ買う必要なんてないでしょ」

 

「あれ? これってかんちゃんが持ってたような」

 

「昔ね。今は無いよ」

 

「そうだっけ? 確かこの間――」

 

「本音?」

 

 

 簪から醸し出される冷たい空気を感じ取り、本音は笑顔でそっぽを向いた。その空気を感じ取れなかった弾と数馬は不思議そうに首を傾げたが、他のメンバーは簪の底冷えする空気に戦慄を覚えた。

 

「簪も怒らせたらヤバそうだな」

 

「あぁ。良く研がれた刀のような空気だったな」

 

「まぁ仕切り直して、負けたら罰ゲームだからね」

 

「えっ、何それ?」

 

「気にしなくて良いわよ。どうせ負けるのは弾だから」

 

「今日こそは勝ってやるからな!」

 

「そう言って負けるのが弾のお約束だからな」

 

 

 初対面のメンバーも、弾の弄り方が分かったのか、この後散々弄り倒されることになるのだった。




哀れ弾……原作ではいいことあったから、ここでは良いだろ?

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