IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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自分も結構正確


体内時計

 日付が変わる頃まで騒いでいたが、鈴とラウラが寝落ちし、セシリアとシャルロットも眠そうにしていたのでお開きにしたのだが、千冬と箒はいつも通りの時間に目を覚ましていた。

 

「こんな時、自分の体内時計が恨めしく思えるな……」

 

「何だ、お前もこの時間か……」

 

「何時に寝ようと、この時間には目が覚めてしまうんだ」

 

「私もだ……長年の経験から、こればっかりは仕方ないんだろうな」

 

「寝坊しようものなら冷水をぶっかけられて起こされたからな」

 

 

 一夏に師事してから、寝坊したら束に水をかけられて叩き起こされることが多々あったので、千冬も箒も勝手にこの時間に目が覚めるようになってしまったのだ。もちろん、二度寝など出来るはずもなく、二人は軽く身体を動かす事にしたのだった。

 

「ところで昨日、一夏さんは帰ってきたのか?」

 

「さぁな。少なくとも私は知らないし、今は一夏兄の気配もない」

 

「夜遅くに帰ってきて朝早くに出かけると言っていたからな……幾ら一夏さんでもぶっ倒れるんじゃないか?」

 

「一夏兄がその程度で倒れるとは思えないが、確かに一夏兄は働き過ぎだと私も思っている」

 

「政府の連中が無能なばっかりに、一夏さんが忙しい思いをしているかと思うと、アイツらの給料の何割かは一夏さんに差し出すべきじゃないかと思えてくるぞ」

 

「いっそのこと大半を馘にして、浮いた金で足りない部分を補えば良いんじゃないか? どうせ数ばっかいても役に立たないんだし」

 

 

 第三者が聞いていればかなり危ない事を言っているのだが、生憎その事を指摘できる第三者は誰もいなかった。

 

「そろそろ箒は篠ノ之神社に顔を出した方が良いんじゃないか? 神楽の練習だってあるだろうしな」

 

「……お前も売り子として働いてもらうからな」

 

「まぁそのくらいなら構わないぞ。どうせ弾と数馬も来るだろうしな」

 

「何で私があんなことをしなければならないのか……」

 

「愚痴っても仕方ないだろ。あっ、そういえば簪と本音も、お前の舞を見に来るってメールが着てたな」

 

「何でその二人にまで知られてるんだ」

 

「そりゃ、本音はあのバスに乗っていたし、本音から簪に情報が流れても不思議ではないだろ」

 

「面白半分で見られるのは困るんだがな……」

 

「大丈夫だろ。お前の本性を知ってる人間が見ても、何とも思わないだろうし」

 

「そういう事を言ってるんじゃないんだが」

 

 

 同性である本音たちが昔の弾や数馬のようになるとは箒も思っていない。彼女は純粋に、舞っているところを見られたくないだけなのだ。

 

「運が無かったと諦めろ」

 

「他人事だと思って楽しそうに言いやがって……」

 

「一夏兄に見てもらえるんだから、気合いが入るんじゃないのか? お前は確か、一夏兄の子供を産みたがっていただろ?」

 

「飛躍し過ぎだ! そりゃ昔は、一夏さんと結婚出来たらとか考えたことはあるが……」

 

 

 箒の語った夢は、子供の女の子が懐く普通の夢なのだが、千冬はそれでも許せなかった。だが今はこうしてからかうネタとして使えるくらいには割り切っているのだ。

 

「本当にお前が一夏兄と結婚しようとするなら、私は全力で邪魔してやるがな。もちろん、束さんも一緒になって邪魔してくれるだろうし」

 

「私と一夏さんとじゃ釣り合えないだろうが……自分で言って情けない限りだが、あの人と釣り合える人間など殆どいないさ」

 

「一夏兄は選ばれた人間だからな!」

 

「まぁ、一番の原因はお前のそのブラコン発言だと思うがな」

 

 

 千冬の事まで許容出来る人間となると、それこそいないのではないかとすら箒は思っているのだ。一夏の完璧具合に引け目を感じるのも確かにあるが、箒には千冬のこれを許容出来るだけの器量が無いので諦めたのだった。

 

「とりあえず今警戒しなければならないのは、山田先生とナターシャさん、それと会った事は無いが簪の姉さんの三人か」

 

「後輩二人と知人だろ? 何をそんなに警戒しなければいけないんだ?」

 

「虚数の彼方にしかない可能性だが、一夏兄とその三人の内の誰かが恋仲になるようなら、私は全力でそれを邪魔しなければいけないからな」

 

「素直に祝福出来ないのか、お前は……というか、一夏さんが選んだ相手なら、お前や姉さんがとやかく言う筋合いではないと思うんだが」

 

「そりゃ一夏兄がそこらへんの女に騙される筈もないが、万が一という可能性もあるだろうからな。私と束さんで目を覚まさせてあげるんだ」

 

「一夏さんに怒られて正座させられてる未来しか見えないんだが?」

 

「……ありえそうだな」

 

 

 自分たちが何か口を挿んだところで、一夏の考えが変わるとは千冬も束も本気では思っていないし、余計な事をするなと怒られるという事も理解している。それでも一夏に恋人が出来るという事を、二人は想像でも受け入れられないのだった。




休みの日くらいは正確じゃなくてもいいのにな

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