IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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これ以上の適任者はいないだろう…


アドバイスを求めて

 決闘まで残り二日だというのに、千冬も箒もろくにISの腕が上達していなかった。元々剣術の才能だけで試験官を倒したので、それ以外の動きを求められると、途端に酷くなる。

 

「どうにかならないものか……」

 

「私たちだけで特訓してても、どうにもならないだろうな……」

 

 

 幸いな事に、今日明日と休日なので、アリーナの使用許可は取りやすい。だが二人が結論付けたように、二人だけで特訓していてもどうにも成長が見込めないのだ。

 

「こういう時、誰に相談すればいいんだ?」

 

「こういう事に詳しそうな簪は、整備室に篭りっきりだしな」

 

「そういえば、一夏兄の部屋は学園の敷地内にあるんだよな?」

 

「探せばあるんじゃないか? だが、一夏さんの部屋なんか探してどうするつもりだ?」

 

 

 千冬の考えが理解出来なかった箒は、首を傾げながら尋ねる。逆に千冬は、何故箒が理解出来なかったのが分からないのか、呆れた視線を箒に向けていた。

 

「一夏兄はモンド・グロッソを連覇しているんだ」

 

「それは知っている」

 

「さらにはIS学園で教鞭を振るっている」

 

「だからどうしたというんだ」

 

「……だからお前はア箒なんだ」

 

「昔の仇名は止めろ!」

 

 

 中学に上がる前、束と箒の頭脳の差を皮肉ってつけられた仇名を言われ、箒は大声で怒鳴る。千冬も怒鳴られるのは分かっていたので、それほど驚いた様子は無かった。

 

「つまりだ、一夏兄に指導してもらえば、私たちでもそれなりに戦えるんじゃないかって事だ」

 

「だが、一夏さんが教えてくれると思うか? あの人は依怙贔屓とかを嫌う人だろ」

 

「勝ち目が薄い試合に挑む弱者に肩入れするのは、依怙贔屓では無いと思うが」

 

「……まぁ、私たちがここで討論しても意味はないか。とりあえず職員室にいる山田先生に相談してみるか」

 

「そうだな」

 

 

 白檀と八重桜を待機状態に戻し、二人はアリーナから職員室へ向かう。校舎に入るまでは全力疾走で、校舎内では早歩きという、昔一夏に叩き込まれた「廊下は走るな」を忠実に再現して、二人は職員室に到着した。

 

「失礼します。山田先生」

 

「織斑さんに篠ノ之さん? どうかしましたか?」

 

「一夏さん――いえ、織斑先生の部屋の場所を教えていただきたいのですが」

 

「織斑先生の部屋……ですか?」

 

 

 何故知りたいのかと視線で問われた二人は、嘘偽りなくその理由を告げる。

 

「オルコットとの決闘まであと二日ですが、どうにもまともな闘いが出来そうにないのです」

 

「ですから、織斑先生に特別指導をしていただきたいと考えました」

 

「なるほど……個人的に遊びに行きたいから、というわけではないのですね?」

 

「当たり前です。決闘前に遊んでいたなんてバレたら……」

 

 

 突如千冬と箒の身体が震えだしたのを見て、真耶は何らかのトラウマがあるのだろうと察した。

 

「そういう事なら構いませんよ。ただし、他言無用ですからね」

 

「それほどまでに秘密にしなければいけないのですか? 聞いた話では敷地内に部屋があると……」

 

「詳しい場所は教師の中でも限られた人間しか知らされていないんですよ。一夏さん、凄くモテますから」

 

 

 その言葉だけで、一夏の部屋が内緒にされている理由に納得した二人は、神妙な顔で頷いた。

 

「実はそれほど離れているわけでもないのですが、関係者以外立ち入り禁止区域になっていますので」

 

「IS学園の生徒は、その『関係者』にならないのですか?」

 

「経営者、と言い換えても良いですがね」

 

「なるほど」

 

 

 そういう事情なら、誰も近づけないし、一夏がその区域で生活していれば「万が一」も起こらないという事だろう。

 

「今の時間なら、一夏さんはその区域で作業していると思いますよ」

 

「作業、ですか?」

 

「一夏さんにしか出来ない仕事ですし、他に頼むと割高になってしまいますから」

 

「一夏さんに頼めば、給料内で抑える事が出来ると?」

 

「これも秘密ですからね」

 

 

 ちょっと悪い笑みを浮かべる真耶につられて、千冬と箒も笑みを浮かべる。

 

「それでは、織斑先生の部屋に行ってみます」

 

「山田先生、ありがとうございました」

 

「はーい。頑張ってくださいね」

 

 

 真耶の励ましに力を得たのか、二人は先ほどよりも早い速度で廊下を通り過ぎ、真耶に教えてもらった立ち入り禁止区域の前までやってきた。

 

「確かに、それほど離れているわけでもないな……」

 

「入ろうと思えば誰でも入れそうだが……」

 

「一夏兄の気配察知能力なら、関係者以外がこの場所に近づいただけでバレるだろうからな」

 

「だが、一夏さんが出てくる気配はないぞ?」

 

 

 一分も待っていないが、箒は一夏がここに来ないと断言する。千冬も同じように思っているのか、少し不思議そうに首を傾げたが、考えても仕方ないので先に進むことにした。

 

「行くぞ」

 

「ああ」

 

 

 下手をすれば退学になるのではないか、という不安を抱えながら、二人はついに立ち入り禁止区域に足を踏み入れたのだった。




公開されたら大変だろうな……

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