IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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先に片づけておいた方が良いですからね


遊ぶために

 一週間で何とか宿題を終わらせる目途が立った千冬たちは、今朝はゆっくりとした時間を過ごしていた。

 

「まさかあたしたちが一週間であの量を終わらせることが出来るなんてね」

 

「シャルロット様様だな」

 

「止めてよ、そんな言い方。ボクはただみんなが分からないところを教えただけで、頑張ったのは三人だしさ」

 

「そうかもしれないが、シャルロットがいなかったら終わらなかったのも事実なんだから、素直に感謝されろ」

 

「そうよ。あたしたちだけじゃ、分からなかったところが出てきた時点で諦めて遊び始めてたでしょうし」

 

「違いない」

 

 

 鈴の言葉に箒が応え、千冬も頷いて同意して、三人が同時に噴き出す。恐らくはその光景を想像したのだろう。

 

「こうやって俯瞰的に見ると、私たちはこんなにも駄目なのか」

 

「そんなこと分かり切った事じゃなかったの? 中学の頃だって、補習になるかの瀬戸際だって言われてたんだから」

 

「だが実際に補習になったのは弾一人だぞ?」

 

「あれは本物のバカだから仕方ないわよ」

 

 

 再び三人が笑い合うのを見て、シャルロットは少し寂しそうな表情を浮かべる。自分の出自から、親しい友人がいなかったのは仕方ないと割り切っている彼女ではあるが、このように昔の話題で盛り上がる光景を見て、仕方ないと割り切るには彼女もまだ若過ぎるのだ。

 

「そういえば、今日はセシリアとラウラも遊びに来るそうだ」

 

「そうなのか? だったら早いところ残りを終わらせておくか」

 

「そうね。って、シャルロット?」

 

「えっ、なに?」

 

「いや、なんだか寂しそうに見えたから」

 

「そう? 何でもないよ、何でも」

 

 

 慌てて両手を振って否定したため、少し怪しいかなとシャルロットは不安に感じたが、鈴も訝しんだが深くは追及してこなかった。

 

「あっ!」

 

「な、なんだいきなり」

 

「今日、一夏兄が帰ってくるかもしれないって言ってた」

 

「一夏さんが? 珍しい事もあるのね」

 

「まぁここが一夏兄の家であることは紛れもない事実だから、帰ってきてもおかしくはないんだが……」

 

「どうかしたの?」

 

 

 途中で言葉を止めた千冬に、シャルロットが首を傾げながら尋ねる。他の二人は気にしていない様子から察するに、付き合いが長い二人には千冬が何を言いたいか理解出来たのだろうと、シャルロットは再び疎外感を覚えていた。

 

「一夏兄が帰ってくることは嬉しいんだが、外の連中が騒ぎださないかと思ってな」

 

「外の……? あぁ、聖地巡礼にやってくる人たちの事?」

 

「あぁ。私たちだけではそこまで騒がしくはならないが、一夏さんがいたら話は別だろうな」

 

「聖地巡礼はその地域に住んでいる人に迷惑をかけないのがマナーのはずなのに、最近はそういうルールを守れない人たちも増えてるのよね」

 

「というか、人の家を勝手に聖地にするのは止めろとあれほど言ったんだがな……私では効果が無かったようだ」

 

「まぁ一夏さんが生活してた場所ってだけで、IS乗りを志す人たちからすれば聖地になるんでしょうよ……篠ノ之博士が生活してる場所は分からないから余計に」

 

「迷惑な話だ……」

 

「まぁ、一夏さんが帰ってくることは一端置いておいて、さっさと宿題を片付けないと遊べないぞ」

 

 

 箒が無理矢理話しを戻したお陰で、千冬の機嫌が本格的に下降する事は避けられた。

 

「午後からはセシリアとラウラを含めた五人で遊ぶのか。本格的に遊ぶのはこれが初めてじゃないか?」

 

「まぁ友達ではあるけど、立場的にはライバルだからね。あまり大っぴらに遊べる相手じゃないし」

 

「ライバル? あぁ、国家代表候補生だったな、お前たちは」

 

「忘れてたの? まぁ、ボクは名ばかりの候補生だから仕方ないけどさ」

 

「シャルロットが名ばかりだとしたら、あんたに負けそうになるあたしやセシリアの立場が無いじゃないのよ」

 

「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな……」

 

 

 鈴に睨まれて、シャルロットは居心地悪そうに身体を揺すらせる。彼女は本気で国家代表を目指しているわけではなく、専用機を所持するために父親が無理矢理その地位に押し上げたから「名ばかり」という表現を使っただけなのだ。実力云々は、彼女の言葉の中に含まれてはいなかった。

 

「鈴やセシリアが実力不足なのは私たちでも分かるぞ。シャルロットに八つ当たりする暇があるなら、実力を磨けば良いだろうが」

 

「あたしだって分かってるけど、抗議しないわけにはいかない言い草だったから」

 

「ゴメンね」

 

「いや、あんたにそんな意図が無かったことくらい、あたしにも分かってたわよ」

 

 

 シャルロットが頭を下げたために、鈴も居心地の悪い思いをして慌てて頭を下げる。その光景を見た二人は、これ以上この話題を引っ張ることは避けた方が良いとアイコンタクトで通じ合い、いそいそと宿題を用意するのだった。




自分はどうだったか覚えてないな……

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