IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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一応旧知です


面会

 生徒会の仕事は何とか終わったので、楯無と虚はナターシャの見舞いに来ていた。一夏の許可がなければ立ち入ることが出来ないこの場所だが、一夏から許可書を貰っているので、問題なく時空の狭間に入ることが出来る。

 

「こんにちは、ナターシャさん」

 

「あら、楯無ちゃんじゃないの。貴女もこの学園にいたのね」

 

「だって、ISの事を学ぶには最高峰の学園ですもの」

 

「既に国家代表である貴女には必要無いように思えるんだけど?」

 

「だからといって、普通の高校に通える立場ではありませんし」

 

「まぁ、いろいろと大変な事になりそうよね」

 

 

 一通り楯無との挨拶を終えたナターシャは、虚に目礼で挨拶をする。虚の方も目礼で返して、視線を楯無の方へと向けさせた。

 

「それで、今日は何の用でここに来たのかしら? 見ての通り、快適な生活をしているから心配しなくても良いわよ」

 

「時間的余裕が出来たから、ちょっとお見舞いに来ただけよ。本当は簪ちゃんも連れて来ようと思ったんだけど、忙しそうだったから私たちだけで」

 

「一夏は来ないの?」

 

「一夏先輩は忙しいのよ。貴女の事もだけど、それ以外にも仕事を抱えてるんだから」

 

「何処にいても頼られるのには変わりないのね、あの人は」

 

「一夏先輩ほど頼れる人は他にいないからね。虚ちゃんすら頼っちゃうくらいだもの」

 

「それもそうね。私も昔、一夏にはかなりお世話になったもの」

 

 

 昔を懐かしむような仕草を見せてから、ナターシャは不意に自分の腕に視線を向けた。

 

「今回だって、一夏が助けてくれなかったら、この子と離れ離れにされてたかもしれないしね」

 

「アメリカからの攻撃が終われば、貴女の身柄は我が更識家が全力を以てお守りしますので、安心して」

 

「一応この空間は更識の領地という事になっているって一夏から聞いたんだけど?」

 

「名目上はそうなってるけど、ここはIS学園の敷地内で、この空間を作り出しているのは篠ノ之博士の発明品のお陰よ」

 

「随分とVIP待遇ね、そこだけ聞くと」

 

 

 自分の身柄を守る為に動いている人間を改めて確認したナターシャは、笑いながらそういった。

 

「それだけ貴女が――貴女とその子が世界にとって大きな衝撃を与えたという事よ。まさか世界の警察を名乗っていたアメリカが、自国の軍人を抹消しようとしたなんてね。今世界ではその事が大々的に報道されているのよ」

 

「アメリカが非を認めるとは思えないんだけど、何をしたらそんなニュースが大々的に報道されるのよ」

 

「篠ノ之博士を使って、一夏先輩がアメリカの不正の殆どを暴き出したの。それでも非を認めなかったから、その事を世界中に流したのよ」

 

「随分とえげつない事をするわね……」

 

「一夏先輩と篠ノ之博士だもの。それくらいしても驚きはしないわよ」

 

 

 表情を変えずに言い放つ楯無に、ナターシャは恐怖と共に納得してしまう。あの二人が動けば世界が変わるというのは、あながち大袈裟ではないのだ。

 

「これでまた世界情勢が大きく変わることになるのね」

 

「少なくとも、アメリカの政治中枢は代わるでしょうね。あれだけの不正を暴かれたんだし、大統領個人のスキャンダルもあったしね」

 

「アメリカという国はどうなるの? それだけの大ダメージを負えば、国としての再起も難しいんじゃないかしら」

 

「その辺りと一夏先輩が忙しそうにしているので、なんとなく想像が付くんじゃない? 一夏先輩がアメリカ再生にも手を貸してるのよ」

 

「一夏が……」

 

「篠ノ之博士もこき使われてるんだろうけど、それは私たちには知りようが無いもの」

 

「そうね。ところで、私は何時になったらこの空間から外に出られるようになるの? 快適とはいえ、何時までも引き篭もってるわけにもね」

 

「暫くは無理でしょうね。まだ黒幕との決着もついてないし」

 

「黒幕?」

 

 

 ナターシャはアメリカ政府が解体された時点で解決したと思っていたのだが、どうやら違うらしいと楯無の言葉で理解した。

 

「黒幕って、今回の件はアメリカの独断じゃなかったって事なの?」

 

「アメリカ政府を唆したやつらがいるみたいなのよね。篠ノ之博士の発明品を盗んで、一夏先輩の警戒を掻い潜って今回の件を起こしたやつらが」

 

「それって、かなり厄介な事になるんじゃないかしら? 一夏の警戒を掻い潜るなんて、並大抵の人間じゃ出来ないわよ」

 

「もしくは、人間ではないのかもしれないわね」

 

「……どういう事よ?」

 

「一夏先輩ですら気配を掴めなかったんだから、人ではない何かか、もしくは死兵」

 

「……そんな実験、何処の国でも行われていないはずよ」

 

「アメリカ政府から露呈したスキャンダルの一部に、そんな研究があったのよ」

 

「まさか……」

 

 

 さすがに衝撃的過ぎたのか、ナターシャは言葉を失い楯無をただ見つめる。楯無もあってほしくは無いと思いつつも、それを否定するだけの材料がないので、何も言えなかったのだった。




ある意味当たってるかも

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