IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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来ちゃったは無いです


シャルロット、来訪

 とりあえず家の掃除を二人で終わらせたタイミングで、大量の食材を買ってきた鈴が帰ってきた。

 

「お、重い……ちょっと手伝ってよ」

 

「何でそんなに纏めて買ってくるんだお前は……」

 

「だって、毎日買い物に行くのが面倒だから」

 

「ものぐさだな……とりあえず冷蔵庫にしまうものはしまってしまおう。ほら箒、お前も手伝え」

 

「分かってる」

 

 

 鈴が買い込んできた食材を冷蔵庫にしまい、とりあえず一息吐くために千冬はお茶を淹れた。

 

「分かってると思うが、熱いぞ」

 

「何で夏場に熱いお茶を出すのよ」

 

「まだ麦茶が出来てないからだ」

 

「今朝帰ってきたからな……仕方ないと言えばそれまでだ」

 

 

 特に気にした様子もなく熱いお茶を啜る千冬と箒を見て、鈴も諦めて一口啜る。

 

「熱いわね……まぁ、飲めなくはないけど」

 

「文句を言うなら、鈴は水道水で良いな?」

 

「別に文句は言ってないでしょ」

 

 

 とりあえず一服した三人は、昼食の準備を誰がするかを決める為に話し合う。

 

「あたしは買い出しに行ったから、二人の内のどちらかがやれば良いんじゃない?」

 

「私と箒だって、家中掃除したからな。そういう点では鈴が調理すればいいんじゃないかという話になるが」

 

「公平にじゃんけんで良いんじゃないか? 誰が作っても大差ないんだし」

 

「確かにそうね……ただ、千冬には負けてないわよ、あたしは」

 

「私だって必要最低限は出来ると、ゴールデンウィークの時に理解しただろうが」

 

「まぁまぁ、それじゃあ行くわよ!」

 

 

 千冬の言葉を誤魔化すように鈴がじゃんけんの音頭を取る。イマイチ納得出来ない千冬ではあったが、ここでじゃんけんをしなければ強制的に昼食を作らされると考え、大人しく黙った。

 

「じゃんけんぽん!」

 

「鈴の負けだな」

 

「私の事を悪く言うから罰が当たったんだ」

 

「はいはい、そういう事にしておいてあげるわよ。それじゃあ、四人分作ればいいのよね?」

 

「そうだな。そろそろシャルロットも来るだろうし」

 

 

 ちょうどそのタイミングで、来客を告げるチャイムが鳴り響く。

 

「はい」

 

『IS学園のシャルロット・デュノアと申しますが、織斑千冬さんはご在宅でしょうか?』

 

「私だ。開いてるから勝手に入ってきてくれ」

 

『分かった』

 

 

 何故あんなにも丁寧な挨拶をシャルロットがしたのかは分からなかったが、千冬は特に気にすることなくシャルロットを招き入れた。

 

「お邪魔します」

 

「悪かったな。わざわざ宿題を手伝いに来てもらって」

 

「宿題はボクもやらなきゃいけない事だしね。ところで、三人だけ? 他にはいないの?」

 

「都合がついたのがシャルロットだけだからな。それに、両親なんて存在しないし、一夏兄は忙しそうだしな」

 

「そっか……それじゃあ、さっそく宿題を――」

 

「その前にお昼だな。もうすぐで鈴の料理が完成するから」

 

「ボクも食べていいの?」

 

「当然だろ? というか、何で遠慮してるんだ?」

 

「だって、なんとなく悪いじゃない?」

 

「そうか?」

 

 

 何が悪いのか理解出来なかった箒は、アイコンタクトで千冬に尋ねたが、千冬は肩を竦めてみせる。つまり、彼女にも分からないのだ。

 

「へい、お待ち! あたし特製の酢豚よ」

 

「お前は酢豚しか作れないのか?」

 

「この前も酢豚だっただろうが」

 

「作れるわよ! ただあたしが酢豚の気分だったのよ」

 

「美味しそうだね」

 

「あらシャルロット、いらっしゃい」

 

「お前の家じゃないだろ」

 

 

 箒のツッコミをさらりと流して、鈴は人数分の箸と取り皿を用意する。

 

「勝手知ったる何とやら、だな」

 

「小学生の頃にも来たことあるし、この前も分担して家事をしてたからね」

 

「本当に三人は昔から仲が良かったんだね。羨ましいよ」

 

「シャルロットにだって仲のいい友達くらい……あっ!」

 

 

 言いかけてシャルロットの境遇を思い出した鈴は、慌てて口を押えた。

 

「気にしなくても良いよ。今は皆とも仲良くなれたし、親がいるだけ千冬よりかはマシなのかもしれないしね」

 

「私は親がいなくても一夏兄がいてくれたから問題ないぞ。というか、いなくて良かったとすら思っている」

 

「相変わらず一夏さんにべったりなのね、あんた」

 

「たった一人の家族だからな」

 

「家族って言葉で片づけられる風ではないと思うんだけど」

 

「気にするな。それよりも腹が減ったから早く食べようじゃないか。出来立てが美味いんだろ?」

 

「あたしの酢豚は冷めても美味しいわよ! まぁ、出来立てがおいしいのは否定しないけどね」

 

「それじゃあさっそく――」

 

「「「いただきます!」」」

 

「い、いただきます」

 

 

 三人のテンポについて行けなかったシャルロットだが、しっかりと手を合わせてから一口食べる。

 

「うん、美味しい!」

 

「でしょ? さぁ、どんどん食べなさい!」

 

「食べ過ぎると眠くなって宿題どころじゃなくなっちゃうよ?」

 

「「「………」」」

 

「あ、あれ?」

 

 

 自分が何かいけないことを言ってしまったのかと思ったが、単純に宿題の事を頭の隅に追いやっていただけだと分かり、シャルロットは安堵の息を吐いたのだった。




この三人に合わせるのは無理だろう

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