IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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二ヵ月空けてたからなぁ


織斑家の掃除

 夏休み初日、箒と鈴は千冬と一緒に織斑家にやってきていた。昨日の成果は殆ど皆無に等しいが、それでも宿題に取り組もうとした気概だけは三人の中で評価に値すると感じていた。

 

「他の連中にも連絡したんだが、シャルロットが午後から来てくれるそうだ」

 

「シャルロットなら優秀だし、あたしたちのようにふざけ始める事もなさそうね」

 

「というわけで、午前中は部屋の掃除と、食材の買い出しに当てようと思うのだが」

 

「そうだな。五月に掃除して以来なんだろ? それだったら掃除をしなければ生活出来ないだろ」

 

「布団を干したりもしなければならないんだろうし、午前中は勉強なんてしてられないわね」

 

 

 何かにつけて宿題をしたくないだけのように聞こえるが、三人は真面目にそう考えているのだ。早速荷物を置いて千冬と箒は掃除、鈴は買い出しに出かけるのだった。

 

「私は先に布団を干してくるから、箒は台所の掃除を頼む」

 

「分かった。ところで、一夏さんも帰ってくるのか?」

 

「さぁ? 私は知らないな……一夏兄は夏休みだろうと忙しいだろうし、たまに顔を出すくらいじゃないか?」

 

「そうか。なら安心して散らかせるな。私たちじゃ、毎回片付けるなんて事はしないだろうし」

 

「胸を張っていう事ではないと思うが、私もそう思う」

 

 

 二人で苦笑いを浮かべてから、箒は台所の掃除に取り掛かった。いくら誰も生活していなかったからと言って、前の時にちゃんと掃除して帰ったから、それほど汚れてる感じもしないが、それでも埃を被ったりしている。

 

「空き家だったからな……千冬がここで生活していた時は、まだ人が生活してる匂いがしていたが、今は本当に誰も生活してないからな……」

 

 

 一夏がまだ普通に生活していた時は、三日に一回の感覚で掃除に来ていたし、千冬がここで生活していた時は、こまめにとは言えないが掃除をしていたのでここまで埃を被る事はなかった。だが今は数ヶ月単位で家を空ける事が当たり前になってきてしまっているので、所かしこに埃が被っているのだった。

 

「さて、シャルロットが来る前に掃除を終わらせておかないと、何時まで経っても宿題に取り掛かれないだろうしな」

 

「何だ、まだ掃除してなかったのか?」

 

「随分と早いな……」

 

「干すだけだからな。それじゃあ私はリビングを掃除するか。客間とかは後でいいだろ」

 

「そうだな。とりあえず台所とリビングを使えるようにしておかないと、シャルロットが来ても宿題をやろうとはならないだろうしな」

 

 

 とにかく勉強したくない二人は、何度も宿題という単語を口にして、忘れないようにしているのだ。それが憂鬱になっている原因でもあるのだが、片付けない事には何時まで経っても憂鬱な気分は晴れないので、仕方なく早めに片付ける事にしているのだ。

 

「それにしても、たまには掃除しに来たらどうなんだ?」

 

「学園から一歩出るだけでも大変なのに、掃除して疲れたくない」

 

「お前はそういうやつだったな……」

 

「お前だって、実家に顔を出してないんだからおあいこだろ? というか、お前は両親がいるんだから、尚更顔を出すべきなんじゃないか?」

 

「……この宿題合宿が終われば顔を出すつもりだ。神社の手伝いもあるしな」

 

「本当に嫌なんだな……てか、私は設営を手伝えばいいんだろ?」

 

「あぁ。お前に店番なんて頼めないからな」

 

「それは私に接客など出来ないと言っているのか?」

 

「出来るのか?」

 

「恐らく出来ないだろうな」

 

 

 自分が愛想を振りまくことが苦手だと自覚しているので、千冬は下手に強がらずあっさりと認めた。

 

「一夏さんが手伝ってくれれば、すさまじい集客率になるだろうが、あの人も忙しそうだしな……」

 

「一夏兄を客寄せパンダに使おうとするな! 売り上げの七割を貰うぞ」

 

「どんな基準だ……」

 

「さて、こっちはそろそろ片付くが、そっちはどうだ?」

 

「こっちももう終わる」

 

「なら次はトイレと風呂だな。どっちが良い?」

 

「そうだな……風呂掃除を任せてもらおう」

 

 

 箒は少し考えてからそう答えた。使ってる人間がいないからそれほど臭くはないだろうが、なんとなくトイレ掃除は避けたかったのだ。

 

「じゃあそっちは任せるぞ。掃除道具は脱衣所に置いてあるから」

 

「知ってる。というか、鈴は何時まで買い出しをしているんだ?」

 

「当面の分を纏めて買ってくるとか言ってたから、結構な量で重いとか思ってるんじゃないのか? アイツは後先考えずに行動する節が見られるからな」

 

「違いない」

 

 

 その光景を簡単に想像できた箒は、思わず吹き出してしまう。千冬も同じ光景を思い浮かべていたのか、箒につられて噴き出した。

 

「とりあえず私たちは掃除を終わらせることだけを考えよう。宿題とかは後で考えればいい」

 

「そうだな。シャルロットも泊まるのか?」

 

「さすがに毎日通ってもらうのは悪いだろ?」

 

「そうだな」

 

 

 終わるまで付き合わせること前提で考えているので、二人はシャルロットを逃がすつもりは無かったのだった。




大人しくしてれば、普通に優秀な部類な三人

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