IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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原因はやっぱりこの人


逃げられた理由

 日付が変わる前に事後処理を終わらせた一夏は、モニターの前で転寝をしている真耶を叩き起こした。

 

「真耶、起きろ」

 

「うにゅ~……? 何で一夏さんが私の部屋に!?」

 

「寝ぼけてるのか、お前は……ここは緊急対策本部だ」

 

「へっ?」

 

 

 慌てて周りを確認して、真耶は自分が転寝していたことに気が付き、恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

「私、寝ちゃってました?」

 

「途中から気持ちよさそうにな。お陰でこんな時間まで作業しなければいけなくなったがな」

 

「ご、ゴメンなさい……」

 

 

 真耶がしっかりと起きて手伝っていれば、十時くらいには終わっていたはずだったのだが、途中で寝落ちしてしまった所為で一夏に迷惑をかけたと、真耶は慌てて頭を下げた。

 

「別に気にしてないから謝られてもな……というか、朝から忙しそうにしてたのは知ってるから、途中で寝てしまっても仕方ないと思ってる」

 

「そんなこと言って、ダーリンの方が忙しそうにしてたじゃないの。おまけに私に精気を吸わせた所為で、普段以上に疲れてるのに、後輩には甘いんだから」

 

「とりあえず真耶は部屋に戻れ。誰も来ないだろうとは思うが、ここで寝たなんてバレたら、後々面倒だろ」

 

「織斑さんや篠ノ之さんに訊問されそうですね……」

 

 

 何かにつけて真耶を疑っている千冬や、一夏に恋慕の情を懐いている箒などに責められそうだなと、真耶は慌てて部屋に戻ることにしたのだった。

 

「さて、真耶も帰った事だし、そろそろ出てきたらどうだ?」

 

「やっぱりバレてたか~。さすがいっくんだね~」

 

「あら、それじゃあ私は待機状態に戻るわね」

 

 

 束の事をなんとなく嫌っている飛縁魔は、束の姿を確認するや否や待機状態に戻ってしまった。

 

「お前、こいつに何をしたんだ?」

 

「別に何もしてないと思うだけどな~。なんでか分からないけど、飛縁魔には嫌われてるんだよね」

 

「まぁ、お前が誰かに迷惑をかけてる事なんて日常茶飯事だからな。それで、何の用で来た」

 

「酷いな~、いっくんは……まぁ、それが良いんだけどね」

 

 

 一夏が呆れた視線を自分に向けている事に気付き、束はとりあえず咳ばらいをして誤魔化した。

 

「いっくんが逃した相手だけど、束さんの方でも追跡は出来なかったよ」

 

「お前、別の発明品も奪われてるんじゃないのか?」

 

「うーん……あっ! 試作品だけど、気配を殺す薬が行方不明だったんだっけ。たぶんそれも盗まれてるかもしれないね~」

 

「結局最初から最後まで、お前が原因か」

 

「銀の福音の暴走は束さんの所為じゃないよ~! あれはアメリカがイスラエルに難癖をつけて技術を盗もうとしただけだよ」

 

「そもそも、お前がISなんて発表しなければ、こんなことにはならなかっただろうが」

 

「そこまでさかのぼるの!? というか、束さんが発表しなくても、遅かれ早かれ世界はこうなってたって」

 

 

 不毛な争いだと気づいたのか、一夏は一度だけ頭を振ってから束に向き直った。

 

「とりあえず、犯人の追跡はお前に任せる。どうせ暇を持て余してるんだろうし、それくらいなら出来るだろ」

 

「暇ってわけじゃないんだけどね~。まぁ、いっくんからのお願いだから全力でやるけど。あっ、ちゃんと約束は守ってもらうからね」

 

「約束?」

 

「アメリカの不祥事を超特急で調べたのと、今回の事件の黒幕を探す時に報酬を提示してもらったでしょ? 今度、一緒にお風呂に入って一緒のお布団で寝るんだからね」

 

「覚えてたか……大事な事はしょっちゅう忘れる癖に、どうでも良い事はほんとよく覚えてるな……」

 

「どうでもよくないよ~。せっかくいっくんと一緒にお風呂に入ったり、一緒のお布団で寝たりできるんだから」

 

「分かった分かった。とりあえず、引き続き捜索だけは続けてくれよ」

 

「分かってるって。束さんの発明品を盗むなんて万死に値するんだから」

 

 

 何処の基準で万死に値するのか分からなかったが、一夏はとりあえずスルーして束がいなくなった空間を見詰めていた。

 

「相変わらず偉そうな人ね」

 

「あいつは昔からあんな感じだからな」

 

「ダーリンと一緒にお風呂なんて、絶対に何かするに決まってるわね。あの人だけに有効な電撃でも開発しておこうかしら」

 

「勝手に技を増やすなよ? というか、風呂場で電撃なんてやられたら、俺にだって影響があるんじゃないか?」

 

「私がダーリンを傷つけるわけ無いじゃないの」

 

「どうだかな……人の姿になったんならちょうどいい。ナターシャの様子を見てきてくれ」

 

「ダーリンが直接行った方が良いと思うけどね。まぁ、ダーリンが気にしてるんなら仕方ないわね」

 

「良いからさっさと見てこい」

 

「はーい」

 

 

 一夏に命じられて嬉しいのか、飛縁魔はスキップでもしそうな雰囲気でナターシャが寝ている部屋に向かった。

 

「何がそんなに嬉しいんだかな……」

 

 

 そう呟いてから、一夏はもう一度束から貰った監視映像を眺めるのだった。




束は役に立ってるのか、いないのか……

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