IS学園・一夏先生   作:猫林13世

140 / 368
面倒事は全て一夏に……


海域封鎖の訳

 結局銀の福音の相手は一夏が務める事になり、専用機持ちは海域封鎖と撃墜した銀の福音の回収に周る事になった。

 

「それで、お前は何しにここに来たんだ?」

 

「いっくんに頼まれていた、アメリカ政府の不正記録と、大統領個人のスキャンダルを洗い出したから持ってきたんだよー! いっくんの為に、超特急で仕入れたんだから」

 

「どうせハッキングしただけだろ」

 

「まぁね~。そんな事より、今回の事件だけど、想像以上にきな臭いよ」

 

「お前がそういうという事は、相当なんだろうな」

 

 

 束から資料を手渡され、一夏は物凄いスピードで資料に目を通していく。次第に資料を握る手に力が込められていくのを、束は無表情で眺めていた。

 

「事故の原因をイスラエル側に押し付け、技術を奪い取る算段か……」

 

「賠償金なんていらないだろうしね~。金だけは潤沢にあるわけだし。いっそのこと経済テロでも仕掛けてやろうか」

 

「無関係なアメリカ国民まで巻き込む必要はないだろ。束、今回の計画の首謀者を突き止められるか」

 

「しようと思えば出来ると思うけど、何をするつもりなの?」

 

「個人的に罪を償ってもらうだけだ」

 

「いっくんは真面目だね~。アメリカって国全体で償わせればいいのに」

 

 

 楽しそうに提案する束に、一夏は一睨みするだけで何も答えなかった。

 

「それじゃあ、首謀者の突き止めはやっておくけど、追加報酬を要求するよ」

 

「何が狙いだ?」

 

「そりゃもちろん、いっくんの子種を――」

 

「今ここでお前の人生を終わらせても良いんだぞ?」

 

「じょ、冗談だから! だから殺気はしまってくれると嬉しいかな」

 

「で?」

 

「一晩一緒に寝てくれればいいよ。さっきの資料の褒美は一緒にお風呂、ということで」

 

「それくらいなら構わん。ただし、手を出してきた時点でお前の命は無いと思え」

 

「分かってるって。それじゃあいっくん、また後でね」

 

 

 束がいなくなったのを確認してから、一夏は部屋の前で控えていた真耶を中に招き入れた。

 

「悪いな。わざわざ外に出てもらって」

 

「いえ、篠ノ之博士は私がいると本当の事を言わなかったかもしれませんでしたし、からかわれるのは嫌ですから」

 

「それで、更識姉とは連絡取れたのか?」

 

「残念ながら……今回は更識さんの力は借りられそうにありません」

 

「それならそれでいい。報復は俺か束が行えば済むからな」

 

「一夏さん、怖いからその雰囲気は止めてください……泣きそうです」

 

「そうか」

 

 

 真耶が涙目で訴えると、一夏は素直に纏っていた殺気をしまい込んだ。それでもまだ怖いのだが、とりあえずは耐えられるレベルになったので、真耶は話を先に進める事にした。

 

「一夏さんが撃墜担当という事は、この場は私が担当するという事ですよね?」

 

「そうだろうな。他の先生方に頼むわけにはいかないし、お前に任せるしかないだろう」

 

「この程度なら任せてもらって構いませんよ。それで、銀の福音の操縦者は――」

 

「お前も会った事あるだろ。アメリカ軍所属、ナターシャ・ファイルス」

 

「何故彼女がいないことにされているのでしょうか? 先ほど一夏さんが怒りをあらわにしていたのと関係があるのですよね?」

 

 

 真耶の問いに、一夏はやれやれと肩を竦めてから答える。

 

「イスラエルの技術力を奪い取る為に、今回の事故――と一応言っておく。それが引き起こされ、ナターシャはただ巻き込まれただけだ」

 

「なら、救出してくれと頼めば、より心証が良くなるのではありませんか?」

 

「ナターシャはアメリカ軍の不正に勘付いているようだから、ついでに始末してしまおうとでも考えたんだろう。そもそも、事故を誘発させておいて、心証もクソも無いだろ」

 

 

 束から渡された資料を真耶に渡し、一夏は遠慮するつもりは無いといった感じでモニターを睨みつける。

 

「そろそろ準備しなければならないから、ここは真耶に任せる」

 

「分かりました。といっても、一夏さんが動けば、それで解決だと思いますけどね」

 

「気を抜かれては困る。今回の任務では、アメリカと共に密漁を行っている国に対する締め上げも計画しているのだから、そっちの指示はお前に任せる」

 

「だからあえて警備の薄い箇所を作ってるんですか? 海産物の密漁の証拠を掴むために」

 

「日本の領海に侵入し、当たり前のように海産物を盗んでいくような国だからな。危険を承知で忍び込んでくるだろう」

 

「ですがこれって、一夏さんが担当しなきゃいけない事なんでしょうか?」

 

「ついでだ。海保を動かしたんだから、土産くらい持たせてやらんと後で何を請求されるか分かったもんじゃない」

 

「アメリカに請求すれば良いじゃないですか」

 

「素直に払うわけ無いだろ」

 

 

 心底どうでも良いといった感じで答える一夏に、真耶はため息と同情を禁じ得ないのだった。とりあえず海保に対するお土産が出来れば、それだけ一夏の負担が減るという事かと考え、それ以上は気にしないことにしたのだった。




口だしするくせに手伝わない奴ら……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。