IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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ある意味いつも通り


登場の仕方

 七月七日の早朝、千冬は庭先で突っ立っている箒を見つけ、首を傾げながら彼女に近づいた。

 

「どうかしたのか?」

 

「何でもない」

 

「? おい、あの耳って」

 

「私には関係ない」

 

 

 一切興味を示さずこの場を去ってしまった箒を見送りながら、千冬は土から生えていると思われるウサ耳に近づいて、そして一気に引っこ抜こうとして――

 

「はっ?」

 

 

――あっさりと抜けたことで尻餅をついてしまった。

 

『引っ掛かったね、ちーちゃん!』

 

 

 上空から声がしたと思えば、物凄い勢いで女性が落ちてきた。

 

「うーん、映像で見てたけど、ちーちゃんも立派に成長してるね~」

 

「ちょっ!? 束さん! 離れてください!」

 

 

 束のウサ耳を掴んで力一杯放り投げた千冬だったが、束は少し離れたところで空中で体勢を整えて着地した。

 

「ちーちゃんの実力じゃ、束さんを放り投げるのはまだまだ早いよ~」

 

「仕方ないですね……一夏兄に報告するしかないですか」

 

「べ、別に束さんは悪さしに来たわけじゃないよ!? って、さっきまで箒ちゃんの気配がしてたけど、その箒ちゃんは?」

 

「関係ないと言って、向こうに行ってしまいましたが」

 

「箒ちゃんは相変わらずツンデレだな~。本心では束さんの事が大好きなはずなのに~」

 

「いや、それは無いと思いますが……」

 

「えぇ!?」

 

 

 千冬からすれば、箒が束を好きなどという事はあり得ないと思っていたのだが、どうやら束は違ったようで、千冬の言葉に本気で驚いている。

 

「というか、何処をどう見れば、箒が束さんの事を好き、という考えに至るのでしょうか?」

 

「だって、箒ちゃんは素直になれない性格だから、束さんに対するあの反応も、好意の裏返しなんでしょ?」

 

「……束さんに対しては、アイツは素直だと思いますけど。というか、一夏兄に対して好意を持ってるのバレバレなんですし、十分素直だと思いますけどね」

 

「そうなのかな~? 昔はあんなに一緒にお風呂に入ったのに」

 

「それが原因なのでは?」

 

 

 幼少期に束から受けたセクハラの数々が原因で、箒は束を避けだしたのではないかと千冬は思っている。実際千冬も束から数えきれないほどのセクハラを受けているので、出来る事なら束の相手はしたくないのだった。

 

「あれは束さんの愛情表現なのに~。ちゃんと成長したかどうかを調べるのも、姉の務めだから」

 

「そんなこと一夏兄に聞かれたら、絶対『変態駄ウサギ』って言われますよ?」

 

「もう言われてるから大丈夫だよ~」

 

「いや、大丈夫ではないと思うのですが……」

 

「まぁ、細かい事は気にしなくてもいいよ、ちーちゃん。それじゃあ束さんは、この『箒ちゃん探知機』で箒ちゃんを探すから、バイビー!」

 

「ちょっと、束さん!?」

 

 

 目に見えないスピードでいなくなった束を何とか捕まえようと手を伸ばしたが、やはり空振りだった。千冬はため息を吐きながら部屋に戻ることにした。

 

「というか、今日は箒の誕生日だったな……すっかり忘れてた」

 

 

 束が現れた理由に納得がいった千冬は、とりあえず部屋で箒に祝いの言葉をかけてやろうと決め、すたすたと廊下を歩く。途中でソファに腰掛けている箒を見つけ、千冬はその隣に腰を下ろした。

 

「姉さんは?」

 

「束さんなら『箒ちゃん探知機』なるものを取りだしてどこかに行ったぞ」

 

「また訳の分からないものを……」

 

「まぁ、妹の誕生日を祝いに来たんだろ?」

 

「あの人に祝われても嬉しくない。それはお前も知ってるだろ」

 

「まぁな……あの人のはちょっと遠慮したい……」

 

 

 過去に自分が祝われた時の事を思い出して、千冬は苦虫を噛み潰したような顔で頷く。

 

「そうだ。誕生日おめでとう」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「すっかり忘れていたから、向こうに帰ってからプレゼントは買いに行く」

 

「別に気を遣わなくてもいいぞ。私もお前の誕生日には、祝いの言葉だけで済ませるから」

 

 

 互いに遠慮がない対応を見せ、二人は顔を見合わせて笑い合う。

 

「こんな所で何をしていたんだ?」

 

「別に。ただまっすぐ部屋に戻ると姉さんに先回りされてる気がして、ここで時間を潰してただけだ」

 

「あの人の発明品、当てになるのか?」

 

「一夏さんが言うには、大抵はガラクタだそうだ」

 

「なら大丈夫なんじゃないか? IS以外の束さんの発明品は、確かにろくな結果にはなってなかった記憶があるし」

 

「そうだな。とりあえず着替えて、朝食にするか」

 

「まだ時間があるぞ? 軽く汗を流してからにしないか?」

 

「だが、風呂が使えないだろ? 汗を掻いたままは気分が悪いぞ」

 

「そうだな……なら、部屋で精神統一でもするか」

 

「そうするか」

 

 

 他に時間の潰し方が思いつかなかった二人は、とりあえず部屋に戻って朝食までの時間精神鍛錬をすることに決め、音もたてずに部屋までの廊下を急ぎ足で進んだのだった。




既に専用機は持ってますしね

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