IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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何となく怖いな……


恐怖のマッサージ

 風呂上がりにまず自室に戻った千冬と箒は、一息つく間もなく鈴の部屋に向かう事にした。

 

「教師が巡回に来たら、私たちは鈴の部屋でマッサージをしていると素直に言ってくれ。たぶん昼間の勝負の事を知ってるだろうから」

 

「分かった。くれぐれも鈴を殺さないようにな」

 

「だから死なないと言ってるだろ」

 

「でも、死ぬほど痛いんでしょ?」

 

「あの姉さんが跳び上がるほど痛いらしいからな」

 

 

 束が跳び上がるほどだから、きっと痛いのだろうなと、千冬と箒は既に他人事のように話している。ラウラとシャルロットは鈴の無事を祈りつつ、二人を止めようとはしなかったのだった。

 

「さてと、確か鈴の部屋は……ん?」

 

「あれは本音たち? 何をしてるんだ?」

 

「あっ、おりむ~にシノノン。こんばんは~」

 

「挨拶はいらない。何をしてるんだ?」

 

「かんちゃんが湯あたりしちゃってね~。今夜風に当たりに行く許可を貰おうと山田先生の部屋を目指してるんだよ」

 

「何故一夏兄の部屋じゃないんだ?」

 

「だって、織斑先生の部屋って分からないんだもん」

 

 

 部屋割り表には真耶の部屋は載っていたが、一夏の部屋は載っていなかった。それは千冬も箒も確認しているので、すぐに本音が真耶の部屋を目指しているという事に納得出来たのだった。

 

「おりむ~たちは? 何処に行くの?」

 

「私たちはこれから鈴の部屋に行って、アイツにマッサージをするところだ」

 

「あ~、ビーチバレーやってたもんね~」

 

「それじゃあ、簪にお大事にと伝えておいてくれ」

 

「了解なのだ~」

 

 

 ダボダボの袖で敬礼する本音と別れて、二人は鈴の部屋に到着した。

 

「来てやったぞ」

 

「覚悟はできているわ。さぁ、早いところやってちょうだい」

 

「これって勝者が命令した事なんじゃなかった?」

 

 

 鈴の部屋にはティナもいて、彼女は何故か鈴が罰ゲームを受けているように感じていた。

 

「疲れた体にマッサージしてもらおうと思ったら、この二人のマッサージは死ぬほど痛いって後から言われたのよ」

 

「なるほど。死んでもちゃんと処理してあげるから、思う存分味わったら?」

 

「だから人を殺そうとするな!」

 

 

 ティナの他にも二人の女子がいるが、彼女たちはなるべく関わらないようにしようとしているのか、こちらの会話に加わろうとはしなかった。

 

「それじゃあ鈴。布団に寝転がれ」

 

「千冬は上から、私は下からマッサージしていくとするか」

 

「上とか下とか、どういう事よ」

 

「普通に私は脚から、千冬は腕から、という事だ」

 

「あ、あぁなるほどね……怖すぎてそんな事すら分からなくなってきたわよ……」

 

 

 いくら覚悟を決めているとはいえ、いざやられるとなると怖さが増してくるようで、鈴は小刻みに震えながら二人のマッサージが始まるのを待った。

 

「では始めるぞ」

 

「何だったら気絶してくれた方がやりやすいから、激痛のツボでも押すか?」

 

「本気で殺す気か! 我慢するからそんなツボ押さなくて良いわよ」

 

「そうか? 一夏兄のマッサージは、痛すぎて気絶するからどれだけ痛いのか私たちも知らないんだ」

 

「そ、そんなマッサージを私に施すつもりなわけ?」

 

「起きた時には全身が楽になってるから、効果ある事には間違いないぞ」

 

「全然フォローになってないから!」

 

「喋ってると舌噛むぞ?」

 

 

 手をわきわきとさせながら足を揉もうとしている箒の脅しに、鈴は押し黙るしか出来なかった。

 

「では、マッサージを開始する」

 

「絶対に悲鳴なんてあげないんだからね」

 

「それはフラグか?」

 

 

 千冬と箒が同時にマッサージを開始すると、鈴は速攻で大声を上げた。

 

「痛い、痛いっ! 少しは加減しなさいよね!」

 

「悲鳴をあげないんじゃなかったのか?」

 

「一瞬で騒いだな、お前」

 

「こんなの我慢出来る方がおかしいのよ!」

 

「というか、動かれるとやり難い。千冬、背中に乗って鈴を動けなくしろ」

 

「了解だ」

 

「えっ、ちょっ、まっ……」

 

 

 千冬が背中に乗ろうとしてるのを防ごうとしたが、箒に足を掴まれて動けなかった鈴は、抵抗虚しく千冬に抑えつけられた。

 

「安心しろ。終わった頃には私たちに感謝してるだろうから」

 

「こんな事されて感謝するわけないだろうが!」

 

「あんまり騒ぐと一夏さんがやってくるぞ?」

 

「うぐっ……」

 

 

 確かに騒がしいのは自分なのだから、一夏がやってきたら怒られるのは自分なのかもしれないと恐れた鈴は、大人しく二人にマッサージされることにした。時折悲鳴に似た何かが鈴の口から洩れはしたが、終わってみれば確かにすっきりとした気分になっていた。

 

「確かに身体中がすっきりしてるわね……痛くて死にそうだったけど」

 

「だから言っただろ? 我慢すればすっきり出来るんだと」

 

「まさかあんなに痛いとは思ってなかったわよ」

 

「だが、次もしてもらいたいだろ?」

 

「まっぴら御免よ!」

 

 

 鈴が慌てて返答したので、千冬と箒だけでなく、ティナも笑い出したのだった。




二回目は嫌だな……

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