IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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意外と冷静なんですよね……


クラスメイトの反応

 教室に着くなり、千冬と箒はあっという間にクラスメイトに囲まれる。何時何処で知られたのかは分からないが、既に学園中が二人に専用機が与えられたことを知っているようだった。

 

「凄いね、織斑さんに篠ノ之さん! 普通専用機を貰えるなんてありえないんだよ!?」

 

「やっぱり篠ノ之束の身内っていうのは、大いにアドバンテージなんだね」

 

「羨ましいけど、二人なら納得するしかないよね」

 

 

 様々な感想を言うクラスメイトたちに、千冬と箒は困惑気味に視線を彷徨わせる。何処で知られたのかも気になるのだが、何故か自分たちが専用機を持つことが当たり前のように思われているのも、その原因の一つであった。

 

「お前たちは、私たちが専用機を持つことに不満はないのか?」

 

 

 考えても分からないことは聞く、これが千冬の性格だ。箒もその事を知っているので、特に千冬を止める事無く相手の返答を待つ。

 

「だって、国から貸し与えられる形じゃないんでしょ?」

 

「あ、あぁ……」

 

「だったら嫉妬するだけ無駄じゃない? あの篠ノ之博士が織斑さんと篠ノ之さんの為に用意したんだから、二人が持つのが当然じゃない」

 

「コネっていうのは羨ましいけど、コネは使ってこそ意味があるんだから」

 

「そう言うものか……」

 

 

 完全に納得は出来なかったが、とりあえず筋は通っている感じがしたので、千冬もとりあえずはクラスメイト達の反応を受け入れる事が出来た。その後は専用機についての質問攻めにあったのだが、それほど嫌な気分にはならないと、二人は不思議な思いを懐く。

 そんなクラスメイトたちで出来た人垣をかき分けて、ひときわ目立つクラスメイトが近づいてきた。

 

「どうやら専用機をお持ちになったようですけど、それだけでこの私に勝てると思っているのですか?」

 

「もちろん、そんなこと思っていない。元々私たちはクラス代表になど興味はないんだ。勝とうが負けようが関係ない」

 

「だが、貴様のその天狗のように伸びている鼻をへし折るには、多少なりとも善戦しないと意味は無さそうだな」

 

「貴女たちが私を相手に善戦出来ると? 私は入学試験で唯一試験官を倒しているのですよ?」

 

 

 自慢げに話すセシリアの言葉に、千冬と箒は違和感を懐いた。

 

「唯一試験官を?」

 

「私と箒も倒したんだが」

 

「な、なんですって!?」

 

 

 セシリアが盛大に驚いたタイミングで、三人の頭部に鋭い痛みが走る。よく見ると周りにいたクラスメイト達は自分たちの席に着いている事から、恐らくは時間が相当経っていたのだろう。

 

「既にHRの時間だ。何時までもくだらないことをしゃべっていないでオルコットはとっとと席に着け。織斑と篠ノ之も黙れ」

 

「お、織斑先生! くだらないことではありませんわ! これは私のプライドに関わる問題ですもの!」

 

「そんなくだらないものの為に、HRを遅らせると思うか? それとも、もう一発叩かれないと分からないか?」

 

「……分かりましたわ」

 

 

 さすがのセシリアも、一夏相手に強気に出る事が出来ないようで、トボトボと自分の席に戻っていく。それを見た真耶が、漸くHRを始められると安堵の息を吐いた。

 

「皆さん知っての通り、織斑さんと篠ノ之さんに専用機が与えられました。これは国からの貸し出しではなく、篠ノ之束博士個人からの贈り物ですので、国が保有するコアの数に影響はありません」

 

「……とまあ、言ってはいるが、実際各国からクレームが続出しているのが現状だ。だがそんなことを小娘共が気にする必要はない。大人の世界の問題は、大人が片づける。だから気にせず決闘に集中するように」

 

 

 一夏のセリフは、明らかに千冬と箒に向けられてのものだが、クラスメイト全員が頷く。この敷地内は名目上何処の国にも属していないので、そもそも各国が介入してくる方が問題だと全員が理解しているからである。

 

「それから織斑、篠ノ之」

 

「「はい」」

 

「例の書類の提出期限は明日までだ。まだ目を通していないのなら、急ぎ目を通すように」

 

 

 一夏の言葉に、千冬と箒は鞄から紙の束を取り出す。それが書類であることは一夏も理解しているので、すぐに二人から受け取り、署名されている事を確認して脇に置く。

 

「一応忠告しておくが、アリーナを使用したければ許可を取るように。まぁ、こんな時期から特訓をしたがる新入生など、お前たちくらいだろうがな」

 

「その許可は誰に貰えば良いのですか?」

 

「原則は職員室で申請すれば訓練機と共に許可がもらえるのだが、お前たちは専用機を持っているから、教師の誰かに申請すれば問題ない。ただし、割り込みでアリーナの使用許可がもらえるとは思わないように」

 

 

 つまり新入生でアリーナを使いたがる人間はいないが、在校生にはちらほらとそういう存在がいると言われたのだと、千冬と箒は一夏の言葉をそう解釈し、なるべく早く申請しようと心に決めたのだった。




さすがのセシリアも教師には噛み付かず……

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