IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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頼れるお兄ちゃんと情けない妹みたいな感じか?


真耶との関係

 目的地に到着し、バスを降りた千冬たちは、部屋割りを確認してそれぞれの部屋に移動する。と言っても、千冬と同室なのは、箒、シャルロット、ラウラといったメンバーで、セシリアだけが別室なのだ。

 

「セッシーは私たちと同じ部屋だね~」

 

「よろしくお願いいたしますわ」

 

 

 本音たちと部屋に向かったセシリアを見送り、千冬たちはもう一度部屋割りを見て、そして首を傾げた。

 

「一夏兄は何処で寝泊まりするんだ? まさか、山田先生と同室なのか?」

 

「さすがにそんな事ないと思うが……」

 

「一夏教官の部屋をここに載せると、遊びに行きたがる生徒が出てくるから載せていないだけじゃないか?」

 

「それありそうだね。とりあえず、ボクたちも部屋に荷物を置いてビーチに行こう」

 

「それもそうだな。分からない事で時間を無駄にしては、せっかくの自由時間がもったいないな」

 

「鈴も外で待ってるだろうし、私たちも急ぐとするか」

 

 

 ここは学校ではないが、廊下を走ってはいけないというルールが刷り込まれているのか、四人は走ることはせず早足で部屋に向かっていった。

 

「やれやれ、そんなに人の部屋が気になるものなのか?」

 

「普通なら気にしないでしょうけども、一夏先輩の部屋ですから。普段キリっとしている一夏さんが、部屋でどんな感じで過ごしているのかが気になるんじゃないでしょうか」

 

「どんな感じと言われても、普通としか言いようがないんだがな。それよりも、真耶はビーチではしゃぎすぎて怪我をする生徒がいないか、しっかりと目を光らせておいてくれ」

 

「それは構わないのですが、一夏さんはどうなさるんですか?」

 

「周辺の警戒をしつつ、人気のないところでゆっくりしている。さすがに俺がビーチに行ったらやかましくなりそうだしな」

 

「確かに、一夏さんの鍛え抜かれた上半身を見ただけで、生徒たちは興奮しちゃうでしょうね」

 

「は? 俺に水着を見られたくないと思って言ったんだが?」

 

「相変わらず一夏さんはズレてますね。また更識さんに言われちゃいますよ?」

 

「むぅ……」

 

 

 腕組みをしながら、一夏は自分がそんなにズレているのかと考え込み、そして考える事を止めた。

 

「考えても分からない事だし、とりあえずは真耶の言う通りなんだと納得しておく」

 

「そもそもですね、一夏さんがビーチに行けば、あっという間に黄色い歓声に包まれるに決まってるじゃないですか。それこそ、織斑さんが嫉妬して暴走するくらいに」

 

「何で千冬が嫉妬するんだ?」

 

「分からないフリは良くないですよ?」

 

「……いい加減兄離れしてもらいたいが、まだ無理なのかもしれないな」

 

「まぁ織斑さんの想いも分からないではないですけどね。こんなにカッコいいお兄さんがいたら、私も好きになっちゃうかもしれませんし。例えそれが許されない想いだったとしても」

 

「また何かに影響されてるのか? お前はすぐ影響されるからな」

 

 

 真耶の言葉に熱がこもってるのを受けて、一夏は盛大にため息を吐く。束、楯無、千冬、箒と妹、もしくは妹のように思っているのがこれだけいるのに、そこに真耶まで加わったらより疲れるだろうと常日頃から思っているので、真耶にはもう少ししっかりとしてもらいたいと願っているが、それも難しそうなのである。

 

「とにかく、俺は異性しかいないビーチに顔を出そうなど思わない。職務放棄と思うかもしれないが、周囲への警戒は抜かりなくしておくので、後は真耶に任せる」

 

「ズルいですよ! 私だけじゃ織斑さんたちが暴走したとき止められないんですから、一夏さんも一緒にビーチに来てください!」

 

「何故暴走する前提で考えているのか分からないが、たまには教師らしくビシッと言えばいいだろ」

 

「私が言っても影響力皆無ですから……」

 

「そんな泣きそうな顔で言われてもな……」

 

 

 真耶の見た目に威厳がない事は一夏も理解しているが、仮にも教師なのだから、態度で威厳を示そうとすれば良いのではないかと思っている。だがもちろん、真耶にそんな事が出来るとは一夏も信じているわけではないのだが。

 

「分かった分かった。俺も一緒に行けばいいんだろ? その代わり、何かあっても俺は知らないからな」

 

「一夏さんが見てる前で、変な事をしようなんて考える生徒がいるとは思えません」

 

「お前、俺の前では随分コロコロと表情を変えるな……それくらいの柔軟さがあれば、代表としてやっていけたんじゃないか?」

 

「一夏さんがいてくれるから安心していられるんです。世界大会なんて出たら、緊張でISを動かせなくなるくらい堅くなっちゃうんですから」

 

「それで良く候補生としてやっていけてたよな、お前……」

 

 

 真耶のあがり症が筋金入りだと知っている一夏としては、自分の前だけではこれほど表情を変える真耶を放っておけないと思ってしまうのか、結局は真耶に甘いのだった。




保護者みたいだったな……

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