IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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甘えっぱなしだな


水着選び

 漸く水着売り場に到着した面々は、それぞれ好みの水着を探すべく別行動していた。

 

「しかし、改めて水着売り場に来たのは良いが、自分で服を選ぶなんて久しぶりだな」

 

 

 基本的に一夏が選んだ服を着ていた千冬にとって、自分で自分が着るものを選ぶというのはなかなか難しいのだ。さすがに一夏が海外で活動していた時は自分で選んでいたのだが、それだって一夏が選んでくれたものを基準にして選んだので、こういうものを選ぶときは非常に困ってしまうのだ。

 

「ばったり一夏兄に出くわせば、一夏兄に選んでもらうんだがな……」

 

 

 下着も一夏に選んでもらっていた事があるので、千冬はこういう事に無頓着であり、一夏にとって恥ずかしい事だという認識が薄い。そもそも妹の下着を選ぶくらい一夏にはどうという事はないだろうと考えている辺り、千冬も世間一般からだいぶズレているのだが。

 

「千冬、決まったか?」

 

「いや、まだだ……というか、箒はもう決まったのか?」

 

「デザインは決まったんだが、色で迷ってるんだ……白と黒と赤、どれがいいと思う?」

 

「そんなこと自分で決めたらどうだ? というか、お前に黒は大人っぽ過ぎて似合わないんじゃないか?」

 

「そんなこと無いだろ! っと、あんまり大声を出すと怒られるな」

 

「無難に赤にしておいたらどうだ? 白は膨張色だし、お前の無駄に大きい『ソレ』が余計に大きく見えてしまうだろうし」

 

「無駄にとか言うな! 自分でも気にしてるんだから」

 

 

 千冬も言う程小さくはないのだが、箒の隣に立つとやはり視線は箒の方に向けられてしまう。箒自身は大きいソレを気にしているようだが、千冬から見れば羨ましい悩みなのだ。

 

「束さんも大きいし、遺伝じゃないのか?」

 

「どうなんだろうな……」

 

「とにかく、私は自分の水着を選ぶので忙しいから、色くらい自分で決めろ」

 

「相談し甲斐の無いヤツだな」

 

 

 箒は苦笑いを浮かべながら千冬の側から離れる。箒が完全に去ったのを確認して、千冬は自分の胸に視線を落としてため息を吐いた。

 

「似たような生活をして、同じようなものを食べているというのに、どうしてあんなに成長するんだろうか……」

 

「おーい、千冬。ちょっとラウラを止めるのを手伝ってほしいんだけど」

 

「ラウラを? 何をしてるんだ?」

 

「何でも『一夏教官の好みを調べなければ』って言いだしたかと思うと、何処かに電話して店中の水着の写真を撮ろうとしてるんだ」

 

「ラウラには一般常識が欠けているからな……」

 

 

 やれやれとため息を吐きながら、千冬はシャルロットの応援要請に応えラウラを取り押さえた。

 

「何をする!」

 

「こう言うところでは写真を撮ったらいけないんだよ?」

 

「そうなのか? いけないというなら諦めるが……千冬、一夏教官の好きな色は何だ?」

 

 

 一心不乱に写真を撮っていたラウラではあったが、取り押さえられ注意されたら思いのほか素直に写真を撮るのを止めてくれた。だが代わりに千冬に一夏の好みを聞くという行動に出たのだった。

 

「一夏兄は色やデザインで評価を変えるような人じゃない。本当に似合っていれば褒めてくれるだろう」

 

「そうか! ではシャルロット、私に似合いそうな水着を選んでくれ」

 

「ボクが? 千冬に頼むんじゃなくて?」

 

「シャルロットはもう決めているんだろ? 千冬はまだのようだから、シャルロットに頼んだんだ」

 

「仕方ないな……ラウラにピッタリの水着を探してあげるよ」

 

 

 何やらスイッチが入ったと千冬は感じたが、ラウラはこれから自分が着せ替え人形にされるなど微塵も思っていないようで、シャルロットの申し出を嬉しそうに受け入れたのだった。

 

「さて、自分の水着を探すとするか……」

 

「アンタ、本当に服とか選ぶの遅いわよね」

 

「鈴……お前はいつも通りか?」

 

「まぁね。服なんて最初に気になったもので決まってるんだから、ピンと来たら即決よ」

 

「男みたいな選び方だと思うがな」

 

「あによ? 別に良いじゃない、あたしが着るんだから」

 

「誰も悪いとは言ってないだろ……というわけで、私のを選ぶのを手伝ってくれ」

 

「はいはい……まぁ、千冬は中身は兎も角見た目は大人っぽいから、こういう黒いビキニとか似合うと思うわよ」

 

「学校行事だぞ? こんなの着て良いのか?」

 

「女子校なんだから、気にする必要ないんじゃない? そもそもIS学園の関係施設なんだし、従業員も全員女性でしょうから、最悪裸でも良いんじゃない?」

 

「そんなことすれば、一夏兄に殺されるぞ」

 

「あっ……」

 

 

 一夏の事を完全に失念していた鈴は、口を押えて千冬に頭を下げた。

 

「一夏さんに見られたら恥ずかしいか」

 

「というわけで、もう少し大人しめなやつを頼む」

 

「似合うと思うんだけどな~。じゃあ、こっちの水色のヤツは?」

 

「さっきのよりかは幾分か大人しめだが、まだ派手じゃないか?」

 

「少しくらい冒険しなさいよ」

 

 

 鈴の勧めに、千冬はビキニとにらめっこを開始するのだった。




千冬のセンスはな……

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