IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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テスト描写はありません


買い物の予定

 あっという間にテストは終わり、千冬と箒はなんとか補習を回避して、夏休み前最後の行事である臨海学校への参加が認められた。

 

「簪のお陰だ。ありがとう」

 

「私は解き方を教えただけで、結果が出たのは二人が頑張ったからだよ」

 

「いや、簪がいなかったら私も千冬も臨海学校には参加出来なかっただろうな。一夏さんはその辺りも厳しいから、身内だからという理由で基準を甘くしてくれることも無かっただろうし」

 

「一夏兄の事だから、甘くするどころか厳しくしていたかもしれないし」

 

「織斑先生はしっかりしてるもんね。もしお姉ちゃんが私のテストを採点するとしたら、赤点の基準を下げそうだし」

 

「簪が赤点の心配をしてるようなテストじゃ、私たちは正解出来るかどうか分からないだろうな」

 

 

 事実今回の試験結果で、簪は学年上位に名を連ねている。他に知り合いといえば、セシリアとシャルロットも上位に名があったなと千冬と箒は思い返していた。

 

「ラウラも鈴も問題なくテストを終えたみたいだし、今度みんなで水着を買いに行くか」

 

「水着って、臨海学校の? 今までので良いんじゃない?」

 

「買い替えなくても問題はないが、せっかく外出許可が出やすくなってるんだから、この機会にみんなで買い物といきたいだけだ」

 

「そういう理由なら仕方ないね。本音も行くでしょ?」

 

「ほえ~……かんちゃんが行くなら私も行くよ~」

 

「本音は何で死にそうなんだ?」

 

「結果が芳しくなくて、虚さんに怒られたんだよね?」

 

「赤点じゃなかったのに、おね~ちゃんは厳しいんだよね~」

 

 

 実は千冬たちより良い点を取っている本音ではあるが、姉の虚からしてみれば簪の恥となるような点数を取った本音を叱らずにはいられなかったのだ。

 

「本音も大変だな、出来る姉を持つと」

 

「シノノンのおね~さんほどぶっ飛んでないけどね~」

 

「あの人はいろいろ駄目だからな……」

 

「天下の大天災を捕まえて『駄目だ』なんて言える人はそうそういないと思うけど」

 

「そういう簪だって、次回のモンド・グロッソ優勝候補筆頭をボロクソに言ってたじゃないか」

 

「だって事実だもん」

 

「私だって同じだ。姉さんがいろいろな面で駄目なのは事実だ」

 

 

 世間ではカリスマとか言われて尊敬されている姉の真の姿を知っている二人としてみれば、何処を尊敬すればいいのか分からないという事があるのだ。もちろん、尊敬出来る実績は残してきているのは事実なのだが、それを打ち消してあまりある駄目な部分を見てきているのだから、仕方がないのかもしれないが。

 

「一夏さんはあんまり駄目な部分が無いよな……本気で怒らすと命が危ないくらいか?」

 

「それは私たちが悪かっただけで、一夏兄の駄目な部分というわけではないだろ? 精々人嫌いが過ぎるというくらいだろ」

 

「だがそれだって、姉さんほどひどくはないだろ? あの人は他人の区別がつかないんだから」

 

「そういえば、私の事は分からないとか言ってたような……」

 

 

 実際に束と会った事がある簪は、他人を認識出来ないという束の病気の事も知っていたが、本音は驚いた表情を浮かべていた。

 

「ほえ~、篠ノ之博士って人の顔が分からないんだ~」

 

「顔が分からないというか、認識しようとしていないだけだろうな、あれは。あんな天才的頭脳を持っていて、人の顔が分からないなんてありえないだろうし」

 

「でもでも、人の顔が分からないと不便じゃないのかな~? お友達の事だって分からないんでしょ~?」

 

「姉さん、友達と呼べる相手は一夏さんだけだったからな……」

 

「あの人と友人関係を続けていける人間が、一夏兄以外に存在するとも思えないしな」

 

「そこまで酷いんだ、篠ノ之博士って」

 

「頭脳以外は尊敬できる部分など無いって、一夏さんが言い切るくらいだからな」

 

 

 その頭脳も、最近では一夏を悩ませるだけになっているのだが、千冬も箒も束の頭脳は尊敬しているのだ。

 

「あんな恰好をしているが、武術も私たちよりか遥かに強いんだけどな」

 

「だが、一夏兄にコテンパンにやられるのには変わらないだろ? 束さんが一夏兄の拳骨は岩をも砕くとか言い出したんだろ?」

 

「実際に本気の一夏さんに殴られたんじゃないのか? あの人は石頭だから、それくらいの衝撃を受けたとか」

 

「そんな堅い頭を殴って無事な織斑先生が怖い……」

 

「簪が怒られる事なんて無いと思うぞ? 怒らせると怖いのは確かだが、基本的には優しい人だから」

 

「それは知ってるよ」

 

 

 知人の妹というだけで、専用機製造に力を貸してくれたり、事故から救ってくれたりと、簪は既に一夏の優しさに触れている。

 

「簪、まさかとは思うが」

 

「な、なに?」

 

「お前、一夏兄に惚れてるのか?」

 

「そんなこと無いよ。というか、私じゃ釣り合わないって分かってるし」

 

「ならいいが……」

 

 

 一応は納得したような千冬ではあったが、簪は未だに鋭い視線を受けているのだった。




ボロクソに言いまくってたな

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