IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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千冬だから仕方ない……


連携ミス

 それぞれが順当に勝ち上がっていく中、鈴と千冬は他のペアとは違い少し苦戦していた。

 

「やっぱりアンタ、遠距離攻撃にむいてないわね」

 

「それは私が一番分かっている……そもそも束さんは何故私に遠距離主体の専用機を用意したんだ……」

 

「一夏さんは遠近、どっちでも出来たらしいじゃない。アンタは何で出来ないのよ」

 

「一夏兄を基準で考えるな馬鹿者が! あの人を基準にしたら、人類皆ダメな部類になってしまうだろうが」

 

「そりゃそうね……あの人と対抗出来るのは篠ノ之博士くらいでしょ?」

 

「束さんも、一夏兄には敵わない部分があるから、本当に人類皆ダメという事になりそうだ」

 

 

 一夏のスペックの高さは千冬が一番理解していると言っても過言ではない。その千冬が断言するのだからきっとそうなるんだろうなと、鈴はとりあえず一夏と千冬を比べる事を止める事にした。

 

「まぁ一夏さん云々は置いておくとしても、普段から訓練してるのに、どうして明後日の方に弾が飛んでいくのよ」

 

「実戦を想定した訓練など、そんな回数重ねてきたわけじゃないんだ! 焦ったりもするし、周りの視線を受けて緊張だってするだろ!」

 

「あたしは別に緊張したりしないけど」

 

「代表候補生として、他人に見られることに慣れているんだろ。そもそも私は代表候補生でもなければ、不特定多数の視線を受ける事に慣れているわけではないんだ。多少手許が狂っても仕方ないだろ」

 

「狂い過ぎなのよ! 何度あたしに被弾したか分かってるの?」

 

「仕方ないだろ! 私が放った後にお前がそのコースに入ってきたんだから、半分以上はお前の自業自得だ!」

 

「こっちの動きも計算しなさいよね! あれだけ事前に動きをチェックしたんだから、少しくらい分かるでしょうが!」

 

 

 かなり大声で言い争っていたので、他のペアが何事かと二人の様子を見に来る。その中には次の対戦相手であるところの、ラウラとシャルロットも含まれている。

 

「何を叫んでいるんだ?」

 

「別に、千冬の射撃の腕がどうにかならないかって話し合ってるだけよ」

 

「それにしては随分と大きな声だったが?」

 

「FFされてるあたしの身にもなってほしいものよね」

 

「フレンドリーファイアか……あれは精神的に来るものがあるからな」

 

「ラウラ、経験あるの?」

 

「ISの訓練ではないが、実戦形式で行ったサバイバルゲームではあるな。一夏教官を目の前に緊張した仲間が、手許を狂わせて私の頭部を撃ち抜いたことがある」

 

 

 一夏の威圧感に気圧されたのかと、その威圧感を経験した事がある千冬、箒、鈴は納得した様子だったが、セシリアとシャルロット、そして簪は首を傾げた。

 

「織斑先生が現れただけで、そんなに驚くものなの?」

 

「普段の雰囲気の一夏教官なら、それほど驚くことも無いだろうし、手許が狂う事もないだろう。だが敵として現れた一夏教官を見たら、シャルロットもそんなのんきな事を言っていられなくなるぞ。あれはもう……」

 

「ラウラ!? 大丈夫!? ねぇってば!」

 

 

 何かを思い出したのか、ラウラの身体が小刻みに震え始めた。その姿を見たシャルロットが慌てふためきながらラウラの顔を覗き込み、何とか現実に復帰させる。

 

「た、助かったぞ……ついあの時の一夏教官の顔を思い出してしまった」

 

「一夏兄と敵として対峙した場合、さっさと降参するか土下座して許してもらうかのどっちかだからな」

 

「土下座など意味ない事は、千冬が一番知っているだろうが……そもそもあの時は、鈴がやろうって言ったんだからな」

 

「あたしだってあの時、頭が割れるんじゃないかってくらいの衝撃を受けたんだからね」

 

「……この人たちは何をしでかしたんですの?」

 

「私に聞かれても分からないよ……」

 

 

 昔を思い出した千冬、箒、鈴の三人が当時の事で揉めている中、蚊帳の外だったセシリアと簪はしきりに首を傾げていた。

 

「そういえば簪さん、本音さんはどちらに?」

 

「本音なら疲れたから寝るってあそこのベンチにいるよ」

 

「疲れたって、それほど動いてる様子では無かった気がするのですが」

 

「本音にしたら、あれでも動いてた方だからね」

 

「そうなんですか……それにしても、もしかしたら私も織斑先生に怒られていたのかもしれないと思うと、あの時の私は何て命知らずだったのかと思い知らされますわ」

 

「クラス代表に推薦されなかったことで千冬と箒の事をバカにしたんだっけ? 織斑先生じゃなくて篠ノ之博士になにかされそうだよね、今考えると」

 

「とにかく、あの時の事は若気の至りだったのですから、もう忘れましょう」

 

「セシリアが言い出したんでしょ?」

 

 

 そもそもまだそれほど時間が経っているわけではないのではないかと簪は思ったのだが、その事でまたセシリアを怯えさせるのも可哀想だと考えて、とりあえず何も言わなかったのだった。




こればっかりは経験しかないからな……

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