ノーゲーム・ノーライフ I am a loser 作:飯落ち剣士
game start are you ready?
----雨が、降っていた。
銃声が聞こえた。『◼️◼️』が倒れた。
倒れる『◼️◼️』を、俺は見つめることしかできなかった。
震える足で、ゆっくりと、倒れた『◼️◼️』の方へ向かう。彼女の来ている上矢印のプリントされたTシャツは血に塗れている。
血に濡れたシャツを触れる、しかし俺の手に付いた血はすぐに洗い流される。
俺は、彼女に言う。
「……ごめん」
「私こそ。ミスっちゃった」
そして彼女は、ゆっくりと口を開いた。
「××××××××」
そのまま眠るように、目を閉じた。
俺は立ち尽くす。遠くサイレンの音が聞こえる。
濡れた顔を拭いて、俺は呟く。
「
異世界のベッドの上で。
*
「ファル、料理出来たのな」
「そりゃ一人暮らしでしたし。あなたができることの方が意外でしたよ」
「できるけど面倒だから今度からファルが作ってな」
「安定の理不尽」
そんなことを言いながらの朝食。炒め物とパン。合うのか不安だったが杞憂だった。
そうだ伝えとかなきゃと海、
「あ、今日俺仕事しないから」
唐突の仕事サボる宣言。
「えっ」
こんなに堂々と仕事サボると宣言するやつがいるだろうか。ファルは呆れを通り越して尊敬の念すら覚えた。
「ファル。俺らに今足りない物って何だと思う」
突然そんな問いを投げかける海。ファルは少し迷って答える。
「人手ですか?」
「いや、情報だ」
しかし海の答えは違うものだった。
「ここしばらく、この家の蔵書とか王宮の図書とか漁ったんだが」
「王宮どうやって入った」
それはサラッと流すなとファル。
「いや、経済大臣補佐の職権濫用。話を戻すとな。
----
情報は弱者である人類の唯一の武器である。それが少ないと言うことはつまり、
「他国に攻め込めない」
「攻め込むつもりだったんですか」
こちらから仕掛ける事が出来ないことを意味する。
「俺は勝てないって話はしたよな」
「ええ、勝利恐怖症でしたよね。あと異世界出身でしたね」
「そう。異世界出身なのは別にどうでもいいけど。
----で、俺は
「……なんでですか?」
その問いにパンを口に放り込んでから答える海。
「簡単な話、相手はわざと負けようとすれば良いから」
そう、そうすれば海の勝利恐怖症は発症し、ゲームどころではなくなって敗北する。
「だから俺らの作戦はこうだ。
----いろんな国に内通者を作って、『 』がそれらの国家を全て獲ったタイミングで
「たった一回でバレる事なく全て手に入ると。なるほど」
海の言わんとしていることを理解し、続きを取るファル。
「そゆこと。だから内通者を仕込むために、多種族に攻め込まなきゃいけないわけ」
そしてそれにはさっき海が言った通り、情報が足りない。
だからこそ彼は自らの足で情報収集することにしたのだ。
「そういうことならまあいいですよ、仕事は僕がしときます」
「サンキュー。とりあえず酒場とかまわっとくから。夜には帰るよ」
そう言って炒め物を平らげ、ドアから出て行った。
「……よく考えたらなんで僕あの人に協力してんだろ」
一瞬ふと疑問に思ったファルだったが、すぐにその思考を消し去り出勤準備を始める。
*
「西の森にエルフ?」
「ああ、そのせいで木こり達が木を取れねぇんだ。遭遇するとその森に近づかないことを賭けたゲームを申し込まれるからな」
酒場のマスターはそう答える。
これは当たりの店かもな、そう思い海はチップを積む。
「ふーん。他には?」
「東部連合の大使館付近でデモが起こったらしい」
「……大使館?」
「しらねぇのか?元王宮跡地にあるでっかい金属製建物だよ」
「……ああ、あれか」
そういえばそんなものあったなと、海は宿泊まりの時に見たビルを思い出す。金属製ならあれだろうと。
「そそ、理由は不明だけどな」
「りょーかい、さんきゅ」
「またどうぞー」
金貨を置いて酒場を後にする海。もう情報収集は終わったと、家に帰る。
その途中、大通りがざわついているのに気づいたが、
「……まあいいか、めんどくさい」
特に気にせず帰宅した。
*
「帰りました……」
「おかえりー。結構収穫あったぞ」
「もう帰ってたんですね」
意外そうにそう言ったファルに、海。
「3時間くらい前からいたぞ」
「じゃあ仕事くればよかったじゃないですか」
そうファルが突っ込むが、しかし忘れるな。
この男、
「で?何するんですかその情報で」
もう何かすることはお見通しだ、聞かせろと言外に告げるファル。
「ああ、俺らの今後の目標は2つ。
1、エルフを仲間にする。
2、アヴァント・ヘイムへ行く」
この2つな。と、さらっと言ってのけた海。
「正気ですか?最大国家を作り上げた種族を手に入れて、上空20,000メートルの天空都市へ向かうって……人類に出来ることですかね」
そう、いつものように反論するファルだが、彼は同時に思う。
(きっと、もう策はあるんでしょうけど)
「ま、その辺は任せろ。差し当たっては俺はエルフを仲間にする。明日、な」
「で、僕は仕事と」
「そーゆーこと。よろしく頼むぜ?」
相変わらず理解の速いファルにウインクし、海は眠りにつく。
ファルはそんな彼に溜め息をつきながらも、明日の報告を楽しみにしている。
『____』が、動く。
今後4ヶ月の間忙しいため、書き溜めていたものを予約投稿する形となります。