ノーゲーム・ノーライフ I am a loser   作:飯落ち剣士

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ノゲノラの2次創作が少ないなら自分で書けばいいじゃない。


プロローグ:最下位ゲーマーは最上位ゲーマーを追いかけるようです
底辺からのゲームスタート


唐突だがみなさんは、『勝利』についてどの様な感情をお持ちだろうか。

勝利したくない人はおそらくいないだろう。「別に勝たなくていいし」とか言ってる奴はただの負け惜しみである。かっこ悪い。

そう、勝利が嬉しく無い人間などいない。であるならば、勝利することの出来ない人間()は、何に嬉しさを感じるべきなのだろうか。

勝利の瞬間の妄想?他人の勝利の目撃?勝利以外に楽しさを見いだす?否、愚かな1人の人間の選んだ選択は–––。

敗北によって勝利することだった。

 

 

ディスプレイの向こう側、1人の人間が吹き飛ばされた。

 

「ふぅ……また『負け』たな」

 

暗い部屋の中、格闘ゲームに興じる男。黒髪は鳥の巣の如きボッサボサ具合、部屋の中はゴミだらけ。青い眼にはディスプレイの光が写っている。

格闘ゲーム以外にも大量のゲームが部屋には転がっている。

 

「まあ、相手の垢は凍結だろうが」

 

相手をチートの挙動になる様誘導したからと、その男は何でも無いことかの様に言う。

彼は海。ネットでのユーザーネームは『____』(アンダーバー)。ゲーマー界隈において『 』(空白)に迫る知名度を持つ、『一度も勝利したことがない』常勝無敗ならぬ常敗無勝ゲーマーである。ここまで聞けばただのゲームが下手なやつである。

にもかかわらず、彼はゲーマー会の頂点、都市伝説にもなった『 』と並ぶほどの知名度を持つ。

曰く、彼に勝つと不幸が起こる。

曰く、勝ったは勝ったが損失はこちらの方が多い。

曰く、勝利を放棄している。

戦略ストラテジーなら敵は攻め落とせたが得られた資源等が少なく、戦闘ゲームなら勝った瞬間アカウントは凍結の末路を辿り、FPSなら撃った瞬間自らも死、ボードゲームなら必ず引き分けに持ち込まれる。

彼は敗北や引き分けによって勝利する、常敗無勝のゲーマーであった。

 

「あーあっづい。北極に暮らしたい」

 

……加えて言うと、彼は究極のダメ人間である。

部屋の散らかり様からみても分かる通り、彼はこの2年間外に出ていない。必要なものは全て取り寄せである。部屋唯一の窓はカーテンを閉める閉めない以前に、ダンボールの山で見えない。

そんなダメ人間の彼が唯一認めた人物こそが、先ほど述べた常勝無敗のゲーマー、『 』なのだが、

 

「はぁ……つまんねぇな、今のゲーマー達は、もうちょい骨のある奴はいないのかね」

 

その『 』、絶賛失踪中である。およそ半日という短い時間ではあるが、空白がそこまで長い間ゲームをしなかった事はないと言っていい。

そして『 』のいない今、ゲーマー界隈は『____』が一人負け(勝ち)である。

しかし、そんな状況は、

 

『from:新着メールが届きました』

 

一件のメールにより終わりを迎えた。

 

「……メール?」

 

彼は今まさにやろうとしていたゲーム、それが入ったPCを起動するのを止め、着信音のしたパソコンに目をやる。

そのメールアドレスには新作ゲームの情報等しか入ってこないはずであった。しかし開いてみるとそれに書いてあるのは1つのURLと文章

だった。

「『 』と、もっと広い場所で戦いたく無いかい?」

クリックしようとして、彼の頭にウイルスの可能性がよぎる、が。

好奇心に負け、彼はURLをクリックした。

 

URLの先は、なんて事はないただのチェスゲームだった。なんだそれならさっさと終わらせようと思い、彼はコマを動かす。

が、

 

「何だコイツ……」

 

その対戦相手は『 』を思い出させるほどには強かった。

 

「空白……か?」

 

しかしその考えを即座に打ち消す。空白の打ち方ではなかった。おそらく空白の方が……。

 

「上手い」

 

そう呟き、彼はコマを進めていった。

何者かのコマが機敏に動く。

海の一手がコマを奪い、奪われる。

ポーン、ビショップ、クイーン、キング。駒が行き交う盤上。

そして、ついにその時は訪れた。

 

「……ふぅ」

 

海はおもむろに手元のペットボトルに手を出す。

パーペチュアル・チェック。盤面は千日手になっていた。

5時間に及んだ死闘が終わり息をついた彼に、またしてもメールが届く。

 

『なるほど、君は確かに強い。勝たないのにも関わらず、君は『勝って』いる。あの『 』さんが認めたわけだ。きっと君は思っただろう、生まれてくる世界を間違えたと。

−−–全てがゲームで決まる世界においでよ』

 

と。

彼は答える、そんな世界があるなら是非お邪魔したいと。

そしてその返答をメールで打ち、送った。

 

次の瞬間、空間は歪曲された。

 

「……は?」

 

間抜けな声を出したが、時すでに遅く。

周りの風景は見慣れた自分の部屋でなく、あたり一面の青空と、

目の前に浮かぶ少年だった。

そして少年は叫ぶ。

「ようこそ!全てがゲームで決まる世界、盤上の世界(ディスボード)へ!」

そして彼は答える。

「うるせぇここどこだよ!」

そしてその少年は答える。

「僕は、この世界の神さ」

……ともあれ、役者は出揃った。

 

さあ、ゲームを始めよう。


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